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F1ニュース

投稿日: 2015.05.22 00:00
更新日: 2018.02.17 08:09

ロータス小松礼雄コラム:逆転戦略オペレーション


 ロータスF1チームで昨年、ロマン・グロージャンを担当していたレースエンジニアの小松礼雄氏。今シーズンはチーフエンジニアに昇格してグロージャン、そしてパストール・マルドナドの2台のマシンでF1を戦います。

 今季の躍進著しいロータスチーム。上位3つのワークスチームに次いで、4~5番手を争うパフォーマンスを見せていますが、ここ数戦はポイントを獲得するもトラブルやアクシデントが多発してしまい……。現場でエンジニアリングをまとめる小松氏は、どのようにスペインの週末を振り返るのでしょうか。そしてモナコの展望をどう見ているのでしょうか。

 F1速報サイトでしか読めない、完全オリジナルコラム、第5回目の一部をお届けします。

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小松礼雄のアプローチ 第7回
敵と味方を見切った、逆転戦略オペレーション

 スペインGP、まずは金曜日が大変でした。FP1からパストール(マルドナド)のクルマに問題があってほとんど走れなくて、FP1とFP2の間に基本セットの部分で試したいものがあったので、プラン通りにやったのですけど、振り返ってみるとFP1は1ランしか走っていないし、路面温度もオフに比べてギャップが大きすぎるから、良い理解ができないわけです。結果としてパストールのFP2でクルマのバランスを崩してしまいました。これはレースウイークエンドを通しての反省点です。

 もう1台の方はFP1でジョリオン(パーマー)が乗りましたが、クルマは空力が安定していなくてあまり良いセッションではありませんでした。FP2では良くなりましたけどロー・フューエルでのパフォーマンスがあまりよくなかったです。バルセロナはエキストラ・ハイ・ダウンフォースサーキットですが、ウチはアップデートパーツもライバルに比べて全然入れられなかったこともあって、グリップ不足になることはわかっていました。ですので、レースに行く前からQ3には残れないだろうと予想はしていまして、FP2、FP3の結果を見て残念ながらそれが確認できたので、予選ではレースに向けてタイヤをセーブすることを決めました。そして、これが結果的にいい判断になりました。

 予選はロマン(グロージャン)がセクター3でコーナー外に膨らんでアンダーステアのように見えた場面もあったかもしれませんが、実際にはグリップ不足によるオーバーステアが根本的な問題でした。バルセロナのセクター3は低速コーナーがいくつも繋がっていて、ダウンフォースがとても重要な部分になります。低速区間でダウンフォースがかからないクルマはいいタイムは出せません。

 低速のセクター3でどうしてグリップ不足でオーバーステアになるのかと言うと、グリップ不足のクルマというのはタイヤを滑らせてしまうからです。特にリヤが滑るとタイヤの表面温度が急激に上がってしまいます。普通はストレートを走ることでタイヤの表面を冷ますことができるのですけど、低速コーナーが繋がっていると冷えるタイミングがなく、タイヤ表面の温度が上がったまま、次のコーナーのブレーキングに入らないといけなくなります。そうするとブレーキングで、どうしてもまた、リヤが滑ってしまいます。

 すると、さらにタイヤの表面温度が上がり過ぎてしまい、コーナーの出口でもトラクションがかからなくなります。要は悪循環です。よくタイヤのデグラデーション(劣化)と言いますけど、タイヤの劣化というのは、取り戻せる劣化と取り戻せない劣化があります。滑って表面がオーバーヒートしてしまう劣化は、冷やせばグリップを取り戻せます。だけど、バルセロナのセクター3は冷やす場がないから取り戻せない。それですべての低速コーナーの進入と出口でどんどんリヤが厳しくなって、ラップタイムが上がらないわけです。

続きはF1速報有料サイトでご覧ください
「飛ばされたフロントジャッキマンの経緯」
「やはり偉大なアロンソ」
「ロータスチームのモナコ展望」……etc.