更新日: 2022.06.21 16:15
D’station Racing 2022WEC世界耐久選手権第3戦ル・マン24時間 レースレポート
D’station Racing
Race Report – 2022.6.21
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2022 FIA World Endurance Championship
Round.3 90th 24 Hours of Le Mans (BEL)
JUNE. 3 – 11 Qualify :17th / Race:Retired
2年目のル・マン挑戦は手ごたえを得ながらもリタイアに
2022年のWEC世界耐久選手権は、いよいよシリーズのハイライトとも言える第3戦ル・マン24時間を迎えた。初開催から99年、今年で90回目の開催を数える、世界三大レースのひとつにして耐久レースの最高峰だ。D’station Racingは2021年の初挑戦で見事6位入賞を達成。オーナーでもある星野敏のさらなる夢とも言える、表彰台獲得を目指し2022年のレースに臨んだ。
ル・マンのレースウイークは長い。6月4日(土)からは公開車検が行われた。ほぼ毎年行われてきたイベントだが、コロナ禍で2年間開催されず、チームは初経験。ファンの前でその勇姿を披露することができた。さらに、6月5日(日)には合計8時間のテストデーに臨み、レースウイーク開始へ順調にメニューを消化した。
6月8日(水)からは、いよいよフリープラクティスがスタート。テストデーのデータをもとにしたセットアップは好感触で、2回のプラクティスをどちらも5番手で終える。今回はLM-GTE Amクラスだけでも23台が参戦するだけに、この順位は大きな手ごたえを感じるものだった。
翌日に行われる予選ハイパーポール進出に向け、チームは8日の予選で上位進出を目指した。アタッカーは藤井誠暢だ。ただ、重要な計測1周目にスローパンクチャーがデータに出たことから一度ピットにマシンを戻し、仕切り直しをかける。タイヤ交換後再びアタックに挑むものの、今度はコースアウト車両による黄旗やスローゾーン、さらにその後赤旗と、ル・マンではしばしばあるパターンで思うようにアタックできず。赤旗後も雨が降り出しタイムが伸ばせず、17番手という結果となった。とはいえ、フィーリングは良好で長い決勝で挽回のチャンスは十分にある。その後のフリープラクティス3で調整を進めた後は、メニューをこなしていたことからフリープラクティス4を走行せずに締めくくった。
6月10日(金)は走行はなかったが、星野、藤井、そしてチャーリー・ファグのドライバー3人は、市内で行われたパレードに参加した。こちらもコロナ禍で昨年は開催されなかったイベントだが、星野は一度経験があったものの、藤井、ファグにとっては初経験。ドライバーをヒーローとして讃える世界中のファンの声に、藤井もファグも大いに感動した様子で笑顔を浮かべていた。
気持ちを新たに臨んだ6月11日(土)の決勝。グランドスタンドを多くのファンが埋めるなか、いよいよ24時間のスタートが切られたが、ファーストステインとを担当した藤井は17番手からスタートすると、序盤からマシンをセーブしながらも、着実に順位を上げていく。ダブルスティントをこなした後はファグに交代。こちらもダブルスティントを走り、3時間を走った後には、入賞圏となる6番手へと順位を上げた。
ファグに代わって乗り込んだ星野も、まずはダブルスティントをきっちりと走りきる。ラップタイムも速く、トップ10圏内をしっかりと争うレースを続けていった。フリープラクティスから続く好感触から手ごたえも十分。少しずつル・マンには暗闇が近づきはじめていった。
そんななか、ナイトセッションでも藤井、ファグと順調に交代しながら走行を続けていたが、突然のトラブルが襲いかかる。7時間52分を走った時点で、ファグが無線で異常を伝えてきた。ピットイン後、チームは急ぎチェックを行ったが、原因はシャシーのメンバーのダメージというもの。車両の根幹とも言えるパーツで、チームはコース内では修復が不可能と判断を下した。
D’station Racingの2年目のル・マン挑戦は、あっけなく幕を閉じてしまった。1年目の好結果、そして2年目の躍進……というのはル・マンでは誰もが夢見るものだが、そううまくいかないのもル・マン。だからこそ世界最高峰であり、すべてのクルマ好きを惹きつけるのだ。D’station Racingは、2023年にさらに強くなってル・マンに戻るべく、気持ちを新たにした。
COMMENTS:
Driver:Satoshi HOSHINO
「自身にとって3回目、D’station Racingにとって2回目のル・マン24時間となりましたが、自分自身の走りもル・マンに向けたWECでの経験、シミュレーターでのトレーニング、昨年の6位入賞という経験も踏まえ、想像以上に良い走りができたと思っています。レース中も3分57秒台のベストタイムを出すことができました。結果的にレースは夜にトラブルが起きてしまい、朝を迎えることができませんでしたが、まだまだチームにとっても私にとっても、このル・マン24時間は大きな目標です。引き続き挑戦を続けていきたいと思っています。もちろん今シーズンの残りのWECもあるので、さらに良い結果を残せるように頑張っていきたいですね」
Driver:Tomonobu FUJII
「D’station Racingにとっても自分にとっても2回目のル・マン24時間でしたが、フリープラクティスから昨年よりもチームのポテンシャル、クルマのスピードも良い状況にありました。予選ではタイミングなどもあり満足がいくアタックができず、17番手からのスタートとなりましたが、決勝では自分の4スティント目あたりには6番手まで上がることができ、順調だったと思います。深夜にトラブルが起きリタイアとなってしまいましたが、これもル・マンの経験のひとつだったと思います。昨年以上に得られるものも多かったですし、厳しさについても多くのものを学びました。来季のル・マンは100周年ですので、良い結果が残せるよう頑張っていきたいと思います」
Driver:Charles FAGG
「僕にとって、この週末も夢が叶う瞬間となった。ル・マン24時間出場という、これほどの経験をしたことは僕の人生でなかったよ。でも、結果は僕たちが望んだものにはならなかったね。決勝レース序盤の7時間あたりまではトップ5が狙えるものだったし、非常に強力で、アストンマーティンがいつもそうであるように、非常にペースも良かったと思う。できればこの戦いを続け、チェッカーフラッグを受けたかったけどね。でも、この機会を与えてくれた星野サン、藤井サンにありがとうと伝えなければならない。こんな素晴らしい機会を作ってくれたんだからね。もちろん、僕自身ふたたびル・マン24時間には戻ってきたいと思っているよ」
Team Director:Tom FERRIER
「結果的にはリタイアとなってしまい、非常に残念に思っている。フリープラクティスから星野サン、藤井サン、チャーリーとも非常に良いペースで週末を進めていて、クルマも良い仕上がりでレースを迎えることができていた。決勝ではスタート後も順調なストラテジーで進んでいて、早い段階でトップ10まで進出するところまでは予定どおりのシナリオだった。しかし、結果的にリヤのメンバー部分のクラックでボディの一部が剥がれるような状況になってしまい、リタイアという結果になってしまったことは残念に思う。しかし今回ル・マンで得られたものは来季に繋がると思うし、昨年の6位を超えるようなレースを来季こそ目指していきたい」
Chief Engineer:Jonathan LYNN
「テストデー、フリープラクティスで作り上げていった結果、クルマは確実に良い仕上がりになっていった。レースでも17番手スタートから、予定どおり順位を上げていくことができたと思う。ドライバー3人も安定して良い走りをしてくれたと思うし、チームスタッフも良い仕事をしてくれたと思っている。レースストラテジーについても自信をもっていたし、そのとおりに順位も上がっていたんだ。そのままレースをフィニッシュすることができれば、昨年の6位を上回る結果は残せたと思っているだけに残念だね。残りのWECのレースで、表彰台を目指す戦いをしていきたいと思っているよ」