3月20日、アブダビの先端技術研究評議会（ATRC）のプログラム開発部門『ASPIRE』が、アブダビに世界的な研究開発のハブを建設するというビジョンのもと、新たな自動運転レースシリーズ『AARL（ABU DHABI AUTONOMOUS RACING LEAGUE）』の発足を発表した。車両はなんと、日本レースプロモーション（JRP）とのパートナーシップのもと、ダラーラ製のスーパーフォーミュラマシン『SF23』が使用されることが明らかにされた。
ATRCはアブダビの研究開発戦略を決定し、効率的な投資のために資金を集約し、政策・規制を推進する役割を担う組織。そのATRCのプログラム開発部門の『ASPIRE』は、セクターを超えた産業界のステークホルダー、大学、研究機関と協議をしながら、さまざまな人材、アイデア、資源、技術を結集し、複雑な課題の解決に取り組んでいる。
そんなASPIREが発表した自動運転レースシリーズ『AARL』は、2024年第2四半期にアラブ首長国連邦アブダビのヤス・マリーナ・サーキットで開催され幕を開ける予定だ。また、賞金総額は225万米ドルを上るということだが、なんといっても驚きなのは使用される車両だ。『ASPIRE』は、JRPとパートナーシップを締結し、『AARL』の車両としてダラーラ製のスーパーフォーミュラ車両『SF23』が採用されたのだ。
『AARL』では、自動運転レースと人工知能（AI）に関する研究開発を推進し、自動運転モビリティの限界を押し広げることを目指すとしている。また、リーグ発足に向けた応用研究により、モータースポーツや商業輸送の安全性と性能の基準を強化するだけでなく、効率性の向上を通じて、燃料消費と炭素排出をより大幅に削減することを目的とした、最先端で低リスクのソリューションを開発する予定だとしている。
ATRC事務局長であるファイサル・アル・バンナイ閣下は「アブダビは、科学・技術・工学・数学（STEM）分野と脱炭素経済構想における新興ハブであり、今回のAARLの発足を誇りに思っている。自動運転レースは、輸送とモビリティの未来を変革する大きな可能性を秘めており、その勢いは増すばかりだ」とコメント。
「AARLの発足により、自動運転車の新たな基準ができ、自動運転車が主流になるにつれて直面する未知の課題に対して、先取りし準備できるはずだ。本レーシングリーグは、モータースポーツファンのための新たなコミュニティを構築するだけでなく、オープンな開発モデルを取り入れ、より迅速な進歩、検証、イノベーションを支援する。機械学習と強化学習は、自動運転車に関するデータ収集と技術開発のカギとなるだろう」
また、JRPの上野禎久社長は「1973年にスタートした日本のトップフォーミュラシリーズにおいて、今回のASPIREグループとのパートナーシップは、その50年の歴史を通じ積み上げてきた技術とノウハウがグローバルに評価された証であり、大変名誉なことだと喜びを感じています」とコメント。
「今回のAARLに採用されるSF23は、モータースポーツとして魅力的なマシンであることに加え、カーボンニュートラルに向けた大きなチャレンジの象徴でもあります。そのマシンが更に自律走行車レースという次のチャレンジの機会を得ることとなり、今回のパートナーシップが、未来のモータースポーツに新たな価値を加えることを確信しています」と今後への期待を述べている。
そしてダラーラのアンドレア・ポントレモリCEOは「50年以上にわたり、ダラーラの名前はモータースポーツとともに歩んできた。当社は、モータースポーツの最も重要なレーシングカーの数々を設計・製造し、可能性の限界を常に押し広げてきた」と語った。
「この取り組みを継続するための、そして世界で最も速くて安全な車を設計・製造するという当社のビジョンに沿ったASPIREとの提携は、モビリティの未来を形作るものであり、今回の機会をとても嬉しく思う。AARLは、自動運転技術において世界をリードし、性能、安全性、効率性、そして重要な持続可能性に関する新たな基準となるだろう。ぜひ楽しみにしてほしい」
SF23車両を使用した自動運転レースは、2024年に発足するAARLにおいて、自動運転オフロード車レース、自動運転ドローンレースなどを含む一連の自動運転レースシリーズの第1戦として開催される予定だ。その模様は、拡張現実（AR）や仮想現実（VR）のインフォグラフィック、スクリーン上のリアルタイムでのライブ配信により発信されるとしている。今後の続報にも引き続き世界中から高い関心が集まるに違いない。
■AARL（ABU DHABI AUTONOMOUS RACING LEAGUE）公式サイト
URL：https://a2rl.io/
■ASPIRE公式サイト
URL：https://www.aspireuae.ae/
