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スーパーGT ニュース

投稿日: 2020.11.21 12:00
更新日: 2020.11.20 21:17

GT300マシンフォーカス:NSX GT3 EVO”マイスター”が語る『ふたつのキーポイント』

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スーパーGT | GT300マシンフォーカス:NSX GT3 EVO”マイスター”が語る『ふたつのキーポイント』

「要は、タイヤのグリップが出る場所、オイシイところが違うんです。ブリヂストンさんのときは減衰とかでよりフラットな姿勢を作っていましたが、ヨコハマさんは割と高荷重でグリップが出る感覚。実際(前後左右の)動きとしては変わらないぐらいのイメージですが、(輪荷重の)掛け方が変わるというか……」

 摩擦係数が高い路面とピークグリップに優れるタイヤ、そして空力優先の”ベタベタな車高”設定から、今季は「トレンドとして揺り戻しが起きているような気がする」とも語る一瀬氏だが、この結果、18号車は昨季までとはまったく異なるセットアップを採用するに至った。

 すると、装着するヨコハマタイヤも昨季までと「全然違うタイヤ」になり、柔らかいコンパウンドを使用しながら「予選1発のピークも改善しつつ、決勝でもそこまで大きくは変えずにレース距離もいけるよう」な方向性が見つかりつつあるという。

「構造も今はヨコハマさんに結構頑張ってもらっていて。そういったアップデートも含めて、同じコンパウンドを使っても、よりグリップが出る方向には来ている。今年最初のテストから比べてもレスポンスがいい、というか。クルマのセットはやっていくなかで見つけていった部分がありますけど、タイヤに関しては『こういうのが欲しい』というのが最初から明確にあったので、それはもうリクエストした通りのものが途中で出て来ました」と一瀬氏。

 残す課題は、こうした取り分と背反の要素。あまりロールを許容せず硬い状態のフロントに対し、3.5リッターのV型6気筒ツインターボをミッドシップに搭載するため、静的な重量配分は当然リヤ寄りに。ABS自体もEVOモデルで刷新されたBOSCH製の新バージョンを搭載するが、それも「全然うまく使えていない」状態だ。

「動かないフロントで車高も低く、静的荷重がないので、それはフルブレーキングがツラくなるのは当然ですよね。なのでそこはもう半分諦めて(笑)。諦めてでも横方向で使って、割とボトムスピードを上げるようなクルマにして。ブレーキはあんまり使わないような走らせ方をイメージしてます」

「ドライバーからも多少のコンプレインはあります。ありますが、そこはもう我慢して『それでもエアロが出るからそっちで走ってくれ』って。あまり『乗りやすい』と言われた記憶はないです(笑)」

 BoP(バランス・オブ・パフォーマンス/性能調整)の影響が支配的なエンジン性能も、このEVOモデルでは新型ターボチャージャーが導入されているものの、燃費の面で厳しい状況が続く。その対策としてセーフティカー中の燃料消費を細かくデータに取り、周回数で削れる消費量を緻密に計算し、グリッドへの試走やフォーメーションでは極力燃料をセーブし、少しでも給油時間を減らすなど細かな努力を重ねている。

 11月最終週の2020年シーズンフィナーレは、例年とは異なり富士スピードウェイでの”ノーウエイト決戦”となる。長いホームストレートの「コントロールラインから先で伸びてくる」低ドラッグな特性と、ターボカーには有利な低い気温による吸気温度低下で、NSX GT3 EVOの18号車はどんな戦いを繰り広げるか。来季に向けた試金石としても重要な1戦になりそうだ。

3.5リッターV6ツインターボは市販モデルとほぼ同等。ブロック、ヘッド、バルブトレーン、クランクシャフト、ピストン、ドライサンプの潤滑システムも生産車と同一となる

リヤサスペンションを含め、多少のロールを許容してでも”外輪側”を上手く活用するイメージへと転換。コーナーでも1輪により多くの荷重が乗る様な方向へシフトした

2019年は55号車(ARTA NSX GT3)を担当して見事チャンピオン・エンジニアに輝いた一瀬俊浩エンジニア


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