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投稿日: 2021.11.30 17:00
更新日: 2021.11.30 17:51

TGR TEAM SARD 2021スーパーGT第8戦富士 レースレポート


スーパーGT | TGR TEAM SARD 2021スーパーGT第8戦富士 レースレポート

2021 SUPER GT 第8戦(最終戦)『FUJIMAKI GROUP FUJI GT 300km RACE』(11/27~28)富士スピードウェイ(1周4.563km)

 11月28日(日)、今季最終戦となるSUPER GT第8戦『FUJIMAKI GROUP FUJI GT 300km RACE』の決勝が行われ、5番グリッドから意気軒高に今季1勝を狙っていったDENSO KOBELCO SARD GR Supraは、スタート担当のヘイキがオープニングでウォームアップの良いクルマに先を越され順位こそ落とすもののトップから8秒差のなかで隊列となって追従。1台をかわしながらチャンスを伺う走り。25周を走行してルーティンのピットイン。

 次のバトンを渡された中山も6位争いを繰り広げながらペースを堅持した。終盤からは表彰台を目指して果敢に攻めに転じるとオーバーテイクショーで順位を上げて巻き返し、最後まで諦めずにフルプッシュで4位フィニッシュをもぎ取った。

 ドライバーポイントは8点を獲得しランキング13位(計46点)、チームポイントは11点を獲得しランキング9位(計58点)となった。今季は取りこぼしや不運なレースも多かったが、着実に戦う毎に強さを表したTGR TEAM SARD。来シーズンへ向けてひとつひとつ課題を克服していければ再びチャンピオンを争えるポテンシャルを見せた最終戦となった。なお、チームに2015年から7年在籍するヘイキが、この最終戦を最後にSUPER GTから離れることを自ら表明した。

■事前情報

 前戦もてぎでは奮闘をみせていたが、この最終戦でのタイトル挑戦権を失う結果となったDENSO KOBELCO SARD GR Supra。最終決戦の舞台となるのは、今季第2戦と同じ富士スピードウェイ。当チームパートナーでもあるFUJIMAKI GROUP様が、ラウンドパートナーとなり、大会名称は『FUJIMAKI GROUP FUJI GT 300km RACE』。11月27日(土)午前に公式練習、午後にノックアウト方式(Q1、Q2)の公式予選で、28日(日)決勝は13時スタート、300km(66周:約2時間)で争われ、ドライバー交代を伴うピットストップは1回が義務付け。サクセスウエイトは、すべてリセットされ0kgとなり、各車イコールの真っ向勝負となる。

 霊峰富士が雪化粧のこの季節、寒さは厳しいが、サーキットは熱気に満たされることになる。引き続きピットパドック完全隔離など感染予防対策を講じながらの開催ではあるが、一般観客席側は人数緩和や場内イベントとして室屋義秀選手によるフライトパフォーマンス、各種オフィシャルステージが実施。また最終戦であることから昨年同様にレース後にはシリーズ表彰、グランドフィナーレが予定されている。各陣営とも公式予選でのスタートポジション争いから激しい鍔迫り合いが予想されるが、チームとして最終戦を良い形で終えてシーズンを締めくくるためにも、またトヨタ陣営のチャンピオン獲得に貢献するためにも、グリッド前方を獲得するというミッションをまずクリアし、速さに定評のあるインラップ~ピット作業~アウトラップを武器に、2016年からの連続年間1勝で有終の美を飾りたいところ。

 前回の富士ではステディな粘り強さを見せる戦い振りを見せたDENSO KOBELCO SARD GR Supra。脇阪寿一監督のもとチーム一丸となって、意気軒昂に今季1勝の最後のチャンスを狙っていった。

■公式練習走行

 27日(土)9時から開始された公式練習走行は、肌寒さはあるものの穏やかな日差しの澄み切った快晴。気温9度/路面温度13度のなか、85分間のセッションが開始された。今回はミディアム側とハード側タイヤを持ち込み、まずはヘイキが路面が安定した頃を見はからってハード側ドライタイヤを装着してコースイン。温めに周回を要したが、まずは7周目に1分26秒880とその時点で2番手と好タイムをマーク。バランスも良く微調整を行いながらFCYキャリブレーションをこなし、13周目からヘイキがミディアム側タイヤを装着。こちらのタイヤは温まりは良かったが、17周目に1分27秒130とハード側タイヤのタイム更新できず。選択は難しいところであったが、どちらかといえば現在のコンディションとセットアップではハード側の方が安定していた。

 20周目からは中山がドライブして、ヘイキが装着したミディアム側とハード側タイヤのリピート評価を行った。その後、ロングランなど順調に予定されていたプログラムをこなし、混走セッションは38周を走行して、ヘイキのマークした1分26秒880のタイムで4番手となった。

 10分間のGT500単独セッションでは、気温9度/路面温度15度と低いまま。中山がミディアム側タイヤでアタックシミュレーションを実施。6周目に1分27秒151の5番手タイムをマークした。公式練習走行ではトータル45周の走行となった。その後のFCYテスト走行ではヘイキがユーズドのミディアム側タイヤを装着して13周ほど走行。走り出しはまずまずのタイムながらトップとの差はあることから、午後の予選に向けて更なるセットの煮詰めと合わせ込みを行うため、解析を徹底的に行うこととなった。

2021スーパーGT第8戦富士 DENSO KOBELCO SARD GR Supra(ヘイキ・コバライネン/中山雄一)
2021スーパーGT第8戦富士 DENSO KOBELCO SARD GR Supra(ヘイキ・コバライネン/中山雄一)

■公式予選
■Q1:中山が最終ラップで堂々の3番手タイムをマーク

 27日(土)Q1開始時点は、気温10度/路面温度13度で日差しはあったが、低温のコンディション。全体的なパフォーマンスが高くコンディションに合っていたハード側タイヤを選択。コンディションが低温かつハード側ということで温まらないことが予想されたため、真っ先にコースインしたファーストアタッカーの中山。じっくりとタイヤをいたわりながらウォームアップを開始。6周目にグリップが出始め、まずは1分26秒326のレコードタイムとなる2番手タイムをマーク。チェッカー前にコントロールラインを通過し、引き続いて次の周もアタックを敢行。セクター1で約コンマ1秒削る自己ベスト。セクター2でコンマ2秒削ってくる速さを見せる。セクター3ではグリップのピークを過ぎてしまったか前周のタイム更新ならず。トータルで100分の4秒ほどタイムアップを果たした中山が、1分26秒289のレコードタイムで僅差のQ1を堂々の3番手タイムでQ2進出を決めた。

■Q2:ヘイキが最後の予選アタック、熾烈なQ2でコースレコードで5番グリッドを獲得

 Q2開始時点では気温10度/路面温度12度と路温から下がり始めるコンディション。タイヤの温めに時間をかけるため、先陣をきってコースインしたヘイキ。中山と同じくハード側タイヤを装着。Q1での状況を中山からアドバイスもらい、ターゲットを定めてアタックへ入った。まず5周目に中山のタイムをコンマ1秒以上削る1分26秒127の3番手タイム。続く6周目もアタックを敢行して、セクター1をコンマ2秒以上削ってくる。

 セクター2でもコンマ1秒近く削ったものの、セクター3はタイム更新ならず。この周1分26秒092とさらにトータルタイムを縮め、コースレコードをマークしてみせた。だが、GR Supraコーナー(T15)出口にて4輪ともホワイトラインからはみ出してしまいタイム抹消の判定。採択された5周目のセカンドタイムでも幸いに順位は変わらず。僅差で熾烈なアタック合戦の中で、この最終戦を最後にSUPER GTから離れることを自らチームへ表明していたヘイキは、自身最後となったSUPER GTでの公式予選アタックでコースレコードを記録しての5番グリッドを獲得した。

■決勝
■ウォームアップ走行

 28日(日)11時40分から開始されたスタート前20分間のウォームアップ走行は、気温12度/路面温度22度で雲がない快晴であったが風が冷たく、土曜日よりも寒さを感じるコンディション。スタート担当のヘイキがユーズドのハード側タイヤを装着してバランスをチェック。連続して上位タイムを刻む速さを見せた。9周目からは中山がミディアム側ユーズドタイヤを装着して同じクルマの状況を確認。ウォームアップはトータル13周を走行。11周目に中山のマークした1分28秒262で2番手タイムとなった。

■決勝レース
第1スティント:ヘイキが最後のSUPER GTレースを楽しむ

 28日(日)風が冷たくも日差しに暖かさを感じる快晴となったなか、13時決勝スタート時点は、気温13度/路面温度23度のコンディション。フォーメーションラップ2周の後、最終の熱戦の火蓋が切って落とされた。1コーナーへの激しいポジション争いのなか、5番グリッドから意気軒昂に今季1勝を狙っていったDENSO KOBELCO SARD GR Supraは、スタート担当のヘイキがオープニングでウォームアップの良いクルマに先を越され順位こそ落とすもののトップからの隊列となって追従。3周目に1台をかわしながらチャンスを伺う虎視眈々の走り。

 序盤から激しいポジション争いで、アクシデントも発生してSC導入されてしまい、またタイヤが冷えてペースが一旦鈍ったが、うまくGT300クラスをかわしながら前の集団に喰らい付いていく。スティント終盤に8位から7位にポジションアップし、22周を過ぎた頃から各車がピットインを始めたところでヘイキを25周を終了してピットへ呼び戻した。

第2スティント:中山が終盤に表彰台を諦めないプッシュでポジションアップ

 25周を走行してルーティンのピットインで若干タイヤ交換に手間取り約3秒のロス。次のバトンを渡された中山は、アウトラップからプッシュして前を追いかける。6位争いを繰り広げながらペースを堅持。41周目には3号車、終盤にFCYを挟んでからは、表彰台を目指して果敢に攻めに転じた。61周目に8号車をかわし5位に、65周目には38号車をかわして4位にポジションアップとオーバーテイクショーで順位を上げて巻き返す気合いの走り。ラストレースのヘイキに表彰台をプレゼントしたい想いもあり、最後までトップペースの諦めないプッシュを続け、最終的にGR Supraが上位を独占したレースで4位フィニッシュを果たした。

 ドライバーポイントは8点を獲得しランキング13位(計46点)、チームポイントは11点を獲得しランキング9位(計58点)となった。今季は取りこぼしや不運なレースも多かったが、着実に戦う毎に強さを表したTGR TEAM SARD。来シーズンへ向けてひとつひとつ課題を克服していければ再びチャンピオンを争えるポテンシャルを見せたシーズンとなった。なお、チームに2015年から7年在籍するヘイキが、この最終戦を最後にSUPER GTから離れることを自ら表明した。

スーパーGT第8戦富士のレース後、写真に収まるTGR TEAM SARDのメンバー
スーパーGT第8戦富士のレース後、写真に収まるTGR TEAM SARDのメンバー

■ヘイキ・コバライネン

「予選Q2では、つい勢い余ってT15で一瞬わずかにはみ出してしまった。コースレコードタイムは記録できたけど全体的にあとコンマ3秒タイムを結果的に詰められたね。今回、走り出しからクルマは良いフィーリングだった。決勝では少しウォームアップに苦しんだけど良い仕上がりで、タイヤが温まったら攻めていけたよ。1台パスしてSCになってまたタイヤが冷えると少し厳しかった。でもその後は何とか隊列に食らい付いていけた。最後のSUPER GTでのレースを楽しむことができたのはチーム全員の温かいサポートのおかげと、とても感謝している」

「自分自身、いつも通りにレースをしたかったので事前にファンにもメディアにもアナウンスはしなかった。これは自分の流儀でもあるから。この7年間は自分の人生のなかで、とても素晴らしく非常にエキサイティングで濃密なときを過ごした。初めて日本に来たときに、このサードでコウヘイサンと組んでSUPER GTの面白さ特異さを知ると同時に難しさを痛感して初年度の成績は表彰台に上がることさえできなかった。翌年、2016年シリーズチャンピオンを獲得できたのはキャリアのなかでも特筆すべき素晴らしい出来事になった。それから毎年終盤までチャンピオン争いに加われて年間1勝を続けてこれた」

「2019年の最初の2戦をコロナで渡航できず、日本に入国できたけどラリープログラムもあって今度は帰国がままならない状況が続き、SUPER GTの成績も難しい状況が続いていて、色んなことが複雑に絡んで、昨年の終わりにもSUPER GTから離れるかどうか迷った時期もあった。そして今年も周辺状況は変わらず。自分にとって今年は最後までタイトルを争えなかったし、真ん中あたりでレースをするのはタフなことだった。でも、今回離脱を決めたのは一番の理由はコロナの影響で、海外との行き来が難しく、ここ2年間は家族と離れ、ほとんど日本に1人で過ごしていたんだ。またSUPER GTをどこか100%楽しめない自分もあって夏頃に妻と相談したんだ。妻は『あなたのしたいように自分に正直に』と言ってくれた。だから自分のなかにまだSUPER GTを楽しめる気持ちが残っているうちに、SUPER GTでのステアリングを置こうと第7戦もてぎの時に決めて、チームの首脳に自分の意志を伝えたんだ。家族を置き去りにして3年目は考えられなかった」

「チームは引き留めたいことやまだこうすれば続けられるモチベーションが出るのではと言ってくれたメンバーも居てくれたけど、最終的に自分の意志を尊重して了承してくれた。自分としてはサードで始まり、サードで終わりたかった。今は、これまで自分を7年間も起用してくれたトヨタ/TCD/サードに感謝の気持ちでいっぱいだ。最終戦も自分のために勝利をと脇阪監督を始めチーム一丸となって一発奮起してくれ、3シーズン組んで一緒に2勝しているユウイチさんも素晴らしい走りでその気持ちを表してくれた。表彰台を狙っての最後の追い上げは凄かったし、気持ちが伝わってきて、あの時は特に感傷的になった。素晴らしいトヨタの中でSUPER GTの活動できたことを誇りに思っている」

「そして、豊田章男社長にも感謝しなければ。日本で多くのサポートをして頂き、クルマを愛する素晴らしいドライバーでもある。とても親切に愛情ある大きなサポートをしてくれた。今回のGRスープラのチャンピオン獲得も、とてもうれしい出来事だった。そして、これからどうするかのプランはいくつか持っているし、オープンだよ。自分はモータースポーツを心から愛しているし、その情熱自体は何ら変わっていない。ひとつは今年、全日本ラリー選手権JN2クラスチャンピオンを獲ったので、次は最高位のJN1クラスにステップアップして、もっと速いクルマでチャンピオンを獲ってみたい。実現したら、また日本でみんなと会えるだろうし、そうなることを楽しみにしている。次の活動が始まるまで、これまで2年間一緒に過ごすことが出来なかった家族と、しばらくの休みを一緒に満喫するよ。これまで応援してくれたファンを始めスポンサー、トヨタ/TCD/サード、GTAやサーキット・オフィシャルを始め関係者のすべてに感謝を伝えるとともに、またどこかで会えることを楽しみにしているよ」

ヘイキ・コバライネン略歴(1981年10月19日生)
 ルノーの育成ドライバーから2007年にF1デビュー。マクラーレンに2年在籍、ケータハム、ロータスと、2013年まで7シーズンにわたってF1(優勝1回、P.P1回)で活躍。2015年から日本のSUPER GTにサードから7シーズン60戦を戦い、通算優勝5回表彰台10回の成績を残した。来日2年目となる2016年にはサードに初のシリーズチャンピオンをもたらした。

■中山雄一

「最終戦は4位フィニッシュとなりました。さらに成長したチームで予選で速さは示せましたが決勝ではもうひとつ足りませんでした。表彰台に1度も上がれず悔しいシーズンになりましたが、チームに細かい部分までクルマをセットアップして頂き、自信を持ってアタックできたシーズンで、自分自身100%攻めることができた良いシーズンでもありました。トヨタ陣営がGRスープラでチャンピオンを獲得できたことも非常に良いシーズンになったと思います。36号車のみなさんおめでとうございます。また、今シーズン、ファンを始め、たくさんの応援を頂き、ありがとうございました。3シーズン一緒に戦ったヘイキさんに感謝申し上げるとともに長年お疲れ様でした」

■監督 脇阪寿一

「今シーズン最後のレースは4位でした。GRスープラの1位~5位独占に貢献し、しっかりと戦い抜きましたが、ミスもあり、これが今の実力と思っています。2021年シーズはサードの監督になり2年目のシーズンとなりました。戦う毎に強くはなってきましたが、あと一歩で表彰台というレースが何度もあり、成績に現れないシーズンでした。これからシーズンオフとなりますが、チームスタッフと今シーズンの戦いをしっかり分析し、2022年シーズンの飛躍に繋げます。これまで応援して頂いたファンのみなさんを始め関係者のみなさまありがとうございました。そしてヘイキも長年SUPER GTでの活動お疲れ様でした。最後に、チャンピオン獲得したトムスのみなさま、関口雄飛選手、坪井翔選手、おめでとうございました!」

スーパーGT第8戦富士のレース後、写真に収まるTGR TEAM SARDのヘイキ・コバライネンと脇阪寿一監督、中山雄一
スーパーGT第8戦富士のレース後、写真に収まるTGR TEAM SARDのヘイキ・コバライネンと脇阪寿一監督、中山雄一


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