更新日: 2023.08.10 15:29
apr GR86 GT 2023スーパーGT第4戦富士 レースレポート
2023 AUTOBACS SUPER GT ROUND 4
開催地:富士スピードウェイ(静岡県)/4.563km
8月5日(予選)
天候:晴れ コースコンディション:ドライ 観客数:2万200人
8月6日(決勝)
天候:曇り一時雨 コースコンディション:ドライ一時ウエット 観客数:3万200人
またも苦しんだ予選。それでも20番手から13位にまで上昇、見えてきた希望
全8戦で争われるスーパーGTは、富士スピードウェイでシリーズ折り返しの第4戦を迎える。国内随一の長さのストレートを備える高速コースではあるものの、セクター3と呼ばれる最終区間は、上りの峠道のようなレイアウトで、テクニカルな側面も備えている。
今年もaprは2台体制で臨み、トヨタGR86を30号車として走らせる。投入から2シーズン目となるapr GR86 GTは、ドライバーに永井宏明選手、織戸学選手、上村優太選手、小河諒選手の4名を登録。前回同様、450kmレースとあって、今回は永井選手と織戸選手、そして小河選手の3人で戦う。
前回の鈴鹿では9位でゴールして、今季初入賞。しかもピットスタートからの大追撃だった。開幕からの2戦も決勝では着実に順位を上げており、パフォーマンスの高さは実証されていたものの、どうにも予選でツキに見放され、3戦ともQ1突破を許されずにいた。そこで前回は逆手に取って猛暑になった決勝に対し、ハードタイヤに交換していたのだ。その後の展開にも恵まれ、あれよあれよという間にポジションを上げ、終盤に起きたアクシデントで赤旗終了にならなければ、さらに好成績を得られていた可能性さえあった。
ようやくサクセスウエイトを積むこととなったが、6kgであれば何の苦にもなるまい。前回が永井選手と上村選手のホームなら、今回は織戸選手と小河選手のホーム。引き続きの活躍が期待される。
公式練習8月5日(土)9:00〜10:35
第3戦から2カ月のインターバルを置いただけに、久しぶりの感も。apr GR86 GTも前回は、アクシデントに遭遇してしまった一台であり、幸い外装とステアリング周囲とエキゾーストの一部を痛めただけだったが、一歩間違えれば……という状況でもあった。もちろん、この間にしっかりリフレッシュされ、より細部が詰められた。
さて、公式練習からスケジュール開始となった金曜日だが、とにかく暑いの一言に尽きた。連日のように猛暑が続いているが、この夏いちばんではないかと思えるほどに。実際、気温は31度、路面温度は38度にまで達した状況を想定し、持ち込んだセット、そしてタイヤではあったが、走り出しの状況は芳しくはなく、まずは予選セットで織戸選手が走行するも、1分39秒347を出すに終わる。2度にわたってセット変更を行うも、1分39秒300にまで短縮を果たすに留まった。
開始から40分ほど経過したところで、永井選手がapr GR86 GTに乗り込むも、1周だけでピットに戻り、その後も長い時間ピットでの滞在が続く。大幅なセット変更を施しているからだが、ピットを出ては、すぐ戻りが繰り返されて、なかなかロングをかけることもままならず。永井選手のセッションベストは1分40秒146だった。
ようやくロングをかけられたのは、最後のGT300クラス専有走行。織戸選手が15分フルに走り続けるも、1分40秒を切るのがようやくという状況ではあった。公式練習は24番手。小河選手は、その後のFCYテストのみ走行し、最後のサーキットサファリでは永井選手、織戸選手の順で再びロングをかけることはできたが、不安要素を残していたのも事実ではあった。
公式予選Q1 8月5日(土)15:20〜15:30
今回もA組でQ1に臨むapr GR86 GTの、最初のアタッカーとして第2戦・富士に続いて小河選手が起用された。今回、apr GR86 GTでこそ多く走れていないが、サポートレースのポルシェカレラカップでは走り込んでおり、ドライバーとして肩ができているという判断でもあった。
しかし、公式練習終了後の不安は、残念ながら的中してしまう。気温こそ33度とほとんど変わらなかったものの、路面温度は48度にまで上昇。10度もの違いは、経験の少ない小河選手には少々酷だったかもしれない。アタックは計測3周目から始められ、まずは1分38秒182で4番手に。しかし、これで逃げ切らせてくれるほどライバルチームは甘くはなかった。
小河選手も次の周には1分37秒987にまで縮めるも、8番手とボーダーライン上。しかも、もう1周走行の機会を残していた。ラストアタックは1分38秒082とタイムダウン、そしてその間に上回ってきたドライバーもおり……。残念ながら10番手で、Q2を担当するはずだった永井選手に襷を渡すことはできなかった。
永井宏明選手
「持ち込んできたセットアップが、うまいこと機能しなかったですね。決勝もそう簡単にはいかないなとは思っていますけど、なんとか追い上げられるように、今から考えて。明日はもうちょっと、良い走りができるような状態にしたいと思います」
織戸学選手
「ちょっとクルマが決まっていないですね。公式練習でいろいろ調整はしていたんですが……。明日に向けては長いので、なんとかしなくてはいけないですね。予選で諒に行かせたのは、若さを買ったのと、こないだの富士はトラブルで行けなかったので、今回こそという意味で。決勝の予定は、明日の天候次第。もうちょっと決め切らないと。でも、諦めず頑張ります」
小河諒選手
「今回もaprの第3ドライバーとして呼んでいただいて、5月も走った富士でしたが、公式練習の走り出しから車のバランス、それから持ち込んだタイヤのマッチングに苦戦していて、予選に向けてはマッチしているだろうタイヤを選べましたが、練習をあまり走れなかったので、僕がそのタイヤに対する習熟度が進まぬうちに予選、挑むことになってしまって。本当にタラレバで、うまくタイヤを合わせられれば、Q1突破できる可能性があっただけに、チームには本当に申し訳ない結果を持って帰ってしまいました」
「でも、なんとか明日に向けて、さらに良いレースができるようにと、見つかったところもありますし、今回は天気が台風がらみで読めないので、どんな展開になってもドライバーが3人いる強さを活かして、レースをしっかり戦いたいと思います」
金曽裕人監督
「良かれと思ってチョイスしたタイヤが硬すぎたり、それに合わせたセットアップが追いつかなかったりと、いろいろありました。でも、決勝がピーカンでしたら、ミラクルな作戦が採れるはず。技を仕込んでおきました。予選の組がQBならば突破しているタイムでしたし、QAの組はレベルが高かった。何をどうするべきかは、エンジニアもドライバーもわかっているので、明日の決勝では前に行ける自信はあります。少なくてもポイント獲って帰るつもりです」
決勝レース(100周) 8月5日(日)13:45〜
「外れてくれと祈っていた天気予報だが、そうはならずに的中してしまう。ちょうど小河選手が勝ったポルシェカレラカップの決勝中から雨は降り出し、あっという間に路面を水浸しに。スタート進行の開始と同時に行われたウォームアップのころにはもうやんではいたが、路面は濡れたままだった。
そのウォームアップには、今回のスタート担当である永井選手から走行を開始。後半は織戸選手がドライブした。路面は徐々に乾いていき、これならば決勝はドライタイヤでのスタートも可能だと思われたが、グリッドウォークが始まった頃には再び雨が。やがて本格的に降り始めたからたまらない。結局、全車ウエットタイヤを装着することに。さらにセーフティカー(SC)スタートでのレース開始となった。
SC2周の先導の後、いよいよバトルモードに突入する。皮肉なことに雨は間もなくやんで、路面を徐々に乾かしていく。ダンプコンディションの難しい状況に、永井選手が順位を落としたのはやむを得まい。それよりウエットタイヤが早々に悲鳴を上げたことから、apr GR86 GTは予定を早めて、10周目にピットイン。他のチームが給油とタイヤ交換のみ行う中、ここで織戸選手と交代する。そのため、順位を大きく落としたものの、織戸選手のペースは悪くない。
34周目から4周にわたってSCが導入される。1コーナー先で止まった車両から火が出ていたからだ。この時点で織戸選手は20番手。折り返しが近づくと、徐々にピットに戻る車両が現れる。2回目の給油とタイヤ交換、そしてドライバー交代を済ませて、そのままゴールまで駆け抜けると言う算段なのだろう。それはapr GR86 GTにも共通。48周目にピットに戻り、小河選手にすべてを託す。
全車ピットストップを終えると、小河選手は18番手に。機の熟すのを待ちながら周回を重ねていく。そんななか、62周目からまたしてもSCが導入される。やはり火災を生じた車両があったからだが、火の勢いは強く、63周目を終えたところで赤旗が出されてしまう。
本当にこの日の天気は気まぐれ。この中断中にゲリラ豪雨に見舞われ、当初16時10分からの再開がアナウンスされていたが、これが16時20分へ、さらに16時30分へ延長され続けた。再開直前にタイヤ交換が許され、再び全車ウエットタイヤを装着。しかし、SCの3周先導の後、再開された後に雨はやんで、ウエットタイヤで最後まで走れないのは、もはや必至の状況。問題はどのタイミングで交換するかだ。
72周目には早くもドライタイヤに改める車両が現れるが、ここはしばし我慢が正解だったよう。小河選手は9番手まで浮上した84周目に、ようやくピットイン。13番手でコースに戻る。結果的にはポジションキープのまま、チェッカーを受けることとなったが、予選までセットアップに苦労したこと、そして天候に翻弄されたことを思えば、20番手からのスタートで13位フィニッシュは内容としては悪くない。引き続き決勝には強いapr GR86 GTではあることを実証した。
シリーズ第5戦は8月26〜27日に、鈴鹿サーキットで開催される。やはり450kmレースということで、第3ドライバーに上村選手を起用する戦いで、今季再びの入賞が期待される。
永井宏明選手
「スタートからレインタイヤで走っていたんですが、途中で路面が乾くにつれ完全にタイヤが壊れてしまって、それでピットインしたんです。もうちょっと良いコンディションで、良い走りをお見せしたかったのですが……。結果はもう少しで入賞でしたが、みんないい走りとマネージメントしてくれて、内容は満足しています。次は鈴鹿ホームコースなので、土曜日の予選から流れをつかみ上位を目指します」
織戸学選手
「昨日までのクルマの苦しいコンディションからは良くなって、鈴鹿に向けてまたちょっとゴーイングアップして、僕らの中では今日、いいレースができたと思います。大きなミスはまったくなかったので、ポジションはとにかく、内容的には良かったと思います。次の鈴鹿につながる、いいレースでした」
小川諒選手
「本当は永井さん〜永井さん〜織戸さんの順で回すはずでしたが、スタート前に大きく天候が変わったので、乗せてもらえることになりました。しかも、後半40周ぐらいのロングスティントを任せていただいて。正直、僕の中ではコールドタイヤからのウォームアップ、序盤のペースに少し課題があって、タイヤが温まってバランスが安定してきてからは良かったんですが、それまで速い軍団と同じペースで走れませんでした」
「悔しいところはありますが、永井さん、織戸さんからは『いいペースで、しかもタイヤを最後まで保たせて走ってくれた』というコメントをいただけたので、そこは素直に受け止めて、自分の自信につなげたいと思います。また次のチャンスを待ちたいと思います」
金曽裕人監督
「難しく厳しいスタートスティントに永井選手を行かせてしまったのは反省すべき点で、タイヤもきつく、ドライアップしていく非常に難しい路面でした。それでもきっちり走り切ってくれたことに感謝しています。その後の織戸選手、小河選手も良いパフォーマンスでした。ただ、レースウイークの流れとして、セットアップの時間が足りなく後手に回ってしまい、ドライバーに予選で気持ちよくアタックさせられていない状況が続いています」
「決勝のクルマは良かったし、展開としては悪くなかったが、時間が足りない問題は、毎回同じなので、そこは真摯に受け止め改善。次の鈴鹿はホームコースですし、間違いなく地の利も働き大応援団も来られますので、どうぞご期待ください」