FIAとF1、そして主催者からの正式なグランプリ中止決定を受けて、金曜日のパドックは別の意味で慌ただしい一日となった。
FIAが中止の発表を行なったのは、午前10時すぎだったが、主催者であるオーストラリアン・グランプリ・コーポレーション(AGPC)は、サーキットの開門前にすべてのサポートイベントの中止を決定し、さらに観戦者の入場を禁止していた。フリー走行を楽しみにしていたファンは、サーキットまで来たものの、追い返される事態となった。
チーム関係者はサーキットに入場できたが、それはフリー走行のためではない。グランプリ開催に備えてサーキットに置いてある荷物を引き揚げ、ガレージ内にある機材を片付けるためだ。
中止を受けて、会見を行なったのはレッドブルのクリスチャン・ホーナー代表とハースのギュンター・シュタイナー代表、そしてピレリのマリオ・イゾラ(ヘッド・オブ・カーレーシング)ぐらい。ただし、それは会見というよりも、テレビ局のインタビューで、メディア向けのコメントはすべてチームからのリリースで発せられた。
そのため、午前11時45分から予定されていたチェイス・キャリー(F1会長兼CEO)とAGPCの上層部が出席して行われる会見には、大勢のメディアが集まる中、行われた。その中には、すでにパドックで感染者が出たことで、マスクをつけて取材する者もいた。
シーズンの今後について質問されたキャリーは、次のように答えた。
「いまはまだオーストラリアGPのことしか決まっていない。いまわれわれがやらなければならないことは、オーストラリアGPの対応。今後については、それぞれのオーガナイザーと話し合う。もちろん、残された時間はそれほど多くないので、これから数日のうちに、今後のイベントに対応しなければならない。ただ、予測するのは非常に難しい。誰もが流動という言葉を使用し、状況は日々刻々と変化しているからだ。なぜなら、今日の状況でさえ、われわれは2日前には考えていなかった。まさに予断を許さない状況だ」
いまパドックには「次にF1が開催されるのは、6月のアゼルバイジャンGPになるのではないか」という噂が飛び交っている。
本来であれば、フリー走行でF1マシンのエキゾーストノートがこだまするホームストレート上には、いま貨物便に運び込むコンテナが並べられている。果たして、この荷物はどこへ飛ぶのだろうか。それは、F1のチーム関係者にも、いまはまだわからないことなのかもしれない。