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F1 ニュース

投稿日: 2020.05.25 16:41

【津川哲夫の幻の2020F1メカ私的解説】レッドブル・ホンダのパッケージ細部考察。フェラーリ黄金時代と重なる開発類似点

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F1 | 【津川哲夫の幻の2020F1メカ私的解説】レッドブル・ホンダのパッケージ細部考察。フェラーリ黄金時代と重なる開発類似点

 このステアリングユニットの方式は1980年代では比較的多かったが、現在は油圧のパワーステアリング・ユニットが併設されているために、コクピット内部の搭載は整備性と容積の問題で嫌われている。

 また、基本設計がこの旧方式でのステアリングユニットの搭載なので、現在のシステム以上に容積が拡大したパーツの搭載は不可能に近いはずだ・・・(極めて私見だが、レッドブルが強力にメルセデスのDASシステムへの反対しているのは、RB16には大型のDASシステムの搭載が物理的、容積的に不可能と言うのが理由のひとつかもしれない・・・?)

 この方式を採用した理由としては、今までどおりのフロントバルクヘッドへのマウントによってフロントホイールが前進し、トラックロッド(13)にも大きな前進角がついてしまうので、ステアリングユニットを後方へ置くことでトラックロッドを平行に設定することができ、ステアリングジオメトリーの単純化と剛性確保ができることが考えられる。

 もちろんすべてのアーム類の設定、ハイライズ・アッパーアームと最小ハイマウントブロック、ロワアームの近水平化設定、ステアリングユニットの後退とトラックロッドの平行化設定・・・これらにはフロントサスペンションの強度・剛性向上だけではなく、フロントエアロへの配慮が大きな率を占めていことは言うまでもない。

 フロントサスペンションの前進でホイールベースが延長し、ハードセッティングとサスペンションの強度剛性を向上させた。これらの変更は一見メカニカルな開発だが、その背景にあるのはエアロ性能への飽くなき探求だ。

 RB16は相変わらず強レーキ角のエアロコンセプトを維持しながらフロントを強化し、リヤサスペンションは上下動のトラベルを強くしなやかに可動させ、走行状況に准じたリニアなエアロバランスを狙ったマシンだと想像できる。リヤサスペンションの動きで、レーキ制御の基本への回帰を行っているのだ。

 コーナリングを重視した車体の走行性能は相変わらずレッドブルのウリだが、RB15ではホンダPUのパフォーマンスの想定がルノーと同等で、メルセデスとフェラーリには離されていると言う設定で開発されたマシンであり、車体性能を過激に求めたことでピーキー(神経質)な性格となった。

 RB15はハイレベルなコーナリングマシンながらも、高い次元で突然のアンダーや急激なブレイクオーバーを産み出し、ダウンフォースの変化も過激になっていた。昨年後半の開発でかなり快方に向かったが、この症状はRB15のもともとの素性だったようだ。

 RB16はこの難問をホイールベースの延長とオーソドックスで繊細なレーキ制御で対処し、若干レッドブルらしくなくフロントエアロには安定性を考慮したメルセデスの手法をレッドブルエアロ的に解釈した丹念な処理で取り入れている。

 歴史的な話をすればフェラーリは2002年、スーパーカーの素性を持ったF2002を開発し、翌年にはその特性がさらに過激になったF2003GAを開発した。F2003GAは速さはあるが神経質なエアロマシンとなり、当時のミハエル・シューマッハー苦しめ、そして翌2004年、それらのデメリットを克服して速さと信頼性を維持したまま完璧なスムース性を持ったスーパーマシン、F2004が誕生した。このかつてのフェラーリ黄金時代の経緯に、今のレッドブルの開発が重なっていると思えるのだ。

 ルノー搭載時のRB14という高性能マシンから過激で神経質な進歩を果たしたRB15ホンダへ、そしてスピードを加えながらも超ハイレベルな安定性とスムース性が施されたRB16へと、その進化の工程がフェラーリF2004の開発経緯と重なる。

 もちろん、新型マシンは実戦で走って見なければ答えは見えないが、開幕前テストで垣間見たRB16にはレッドブルとホンダの並々ならぬ意欲がにじみ出ているように思えた。


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