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投稿日: 2022.02.14 10:34
更新日: 2022.03.01 18:12

【津川哲夫F1新車私的解説】レッドブルとは異なるプルロッド式を採用したマクラーレン。独自路線の堅実な開発


F1 | 【津川哲夫F1新車私的解説】レッドブルとは異なるプルロッド式を採用したマクラーレン。独自路線の堅実な開発

 レッドブル、アストンマーティンに続いて、2月11日(日本時間12日)にマクラーレンF1の新車『MCL36』が発表された。

 新車『MCL36』は、2021年までのトレンドを継承したようなボディワークながら、フロントサスペンションには噂どおりプルロッド式が採用された。レッドブル、アストンマーティンはプッシュロッド式を維持していたが、これでマクラーレン『MCL36』が前出の2チームの新車とは思想が異なることがわかる。

 プルロッド式自体は決して新しい考えではなく、事実マクラーレンも数年前に一度採用している。18インチホイールの採用からアップライトのアッパーアームピボットをホイール径内部でも高く維持でき、アクスルセンター位置のロワアームピボットとの距離を維持でき、規則で禁止されたエクステンションマウントを使わなくても充分に正常なジオメトリーと、良好な空気流を得ることができる。

マクラーレンF1チームの2022年型マシン『MCL36』/フロントウイング
マクラーレンF1チームの2022年型マシン『MCL36』
マクラーレンF1チームの2022年型マシン『MCL36』/フロント
マクラーレンF1チームの2022年型マシン『MCL36』/フロント

 このプルロッド式のサスペンション構成だとモノコック内部のサスペンションシステムはモノコックの下側。したがって、モノコック上部に構成部品は無いので、細く仕上げることができる。また、プルロッドは引張応力に絶えることができれば良いので、ロッドそのものを細く設定することが可能だ。つまり、空気流への干渉率を下げることができ、モノコックのフロント部を持ち上げハイライズモノコックにできあがっている。

 さらに、サイドポッドはレッドブル、アストンマーティンとは異なり、アンダーカットは見当たらず、2021年までのレッドブル型に似たサイドポッド上面の平らな部分はエントリー部だけで、後方はすぐにフロアへと向かうタイトなエンジンカバーを採用している。

マクラーレンF1チームの2022年型マシン『MCL36』/リヤ
マクラーレンF1チームの2022年型マシン『MCL36』/リヤ

 また、リヤウイングマウントはDRSラインを内包したセンターピラーとエンドプレートを強化し、大きめビームウイングがダウンフォースからの荷重を受け持っている。フロントウイングはセカンドエレメントをメインに、ファーストエレメントを前方に吊り下げるアストンマーティンと同じ手法を取っている。

 予想されていたサイドポッド上の排熱スリットは発表車には搭載されておらず、インダクションボックスは後方一杯まで後退していて、センタークーリングの容積が増えたことを示唆している。これはサイドポッドの後方絞り込みを見れば、小容量の熱交換機器のエンジン上面への移動は充分に考えられることだ。

 もちろん『MCL36』も他チーム同様、開幕戦へ向けた最終仕様ではないだろうが、フォース・インディアやトロロッソなどで低予算チームながらパフォーマンスの高いマシンを作ってきたテクニカルディレクターのジェームス・キーらしく、過去を継承したオーソドックスな進歩に革新を入れ込んだ、堅実な開発が伺え『MCL36』には期待と言うよりも信頼感が感じられる。

《プロフィール》
津川哲夫(つがわてつお)

1949年生まれ。F1メカニックを志して1977年に単身渡英。トールマン、ハース、ベネトンなどのチームでメカニックを勤め、1990年シーズンでメカニックを引退。その後、F1中継でピットレポートやセッション解説、そして雑誌やwebメディアでメカニック経験を活かしたメカニカルな視点でF1の魅力を伝え続けている。

マクラーレンF1チームの2022年型マシン『MCL36』
マクラーレンF1チームの2022年型マシン『MCL36』
マクラーレンF1チームの2022年型マシン『MCL36』
マクラーレンF1の2022年型マシン『MCL36』
マクラーレンF1チームの2022年型マシン『MCL36』
マクラーレンF1チームの2022年型マシン『MCL36』
ダニエル・リカルド&ランド・ノリス(マクラーレン)
ダニエル・リカルド&ランド・ノリス(マクラーレン)


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