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海外レース他 ニュース

投稿日: 2023.06.22 12:46
更新日: 2023.06.22 12:48

「契約がいたるまでには想像以上に時間がかかった」マネージャーが明かす佐藤琢磨 チップ・ガナッシ・レーシング加入までの舞台裏/中編

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海外レース他 | 「契約がいたるまでには想像以上に時間がかかった」マネージャーが明かす佐藤琢磨 チップ・ガナッシ・レーシング加入までの舞台裏/中編

 日本では例年以上に注目を集めた今年のインディ500。その理由は、ずばり佐藤琢磨が、チップ・ガナッシ・レーシング(CGR)から参戦したためだろう。残念ながら琢磨は7位に終わったが、それでもプラクティスからトップタイムを連発するなど、“3度目のインディ500制覇”に向けた夢は見させてもらった。

 そのインディ500が終わって時が経ち、あらためて思うのは「そもそも、琢磨はどのような経緯でCGRのシートを射止められたのか?」ということ。その経緯を、10年以上にわたって琢磨のマネージャーを務めているスティーブ・フューセック氏に聞いた。
 

チップ・ガナッシの11号車でインディアナポリス・モータースピードウェイを駆る佐藤琢磨
チップ・ガナッシの11号車でインディアナポリス・モータースピードウェイを駆る佐藤琢磨

 
     ※     ※     ※     ※

■前編はこちら
 

──チップ・ガナッシ・レーシング(CGR)との交渉は、最初から琢磨選手に伝えていたのでしょうか?

「交渉開始から2週間ぐらい経過してから、“CGRで走れる可能性がある”と伝えました」

──なぜ、すぐに話さなかったのですか?

「話をまとめることができなかったら、興奮させるだけで、ガッカリさせたら悪いと思ったので」

──CGR以外のチームからのオファーはなかった?

「シーズン終盤のポートランドで、マイケル・アンドレッティと話しました。彼は“琢磨をインディ500で走らせたい”と言ってきました。けれども琢磨は、もっと多くのレースに出場したがっていたので、マイケルのオファーは断りました」

──アンドレッティ・オートスポートからのオファーはインディ500のみ、だったと。

「彼らにはそれが精一杯でしょう。インディ・ライツのクルーたちも起用するプロジェクトになります。インディ500は大丈夫でも、他のオーバルで琢磨を走らせることはできない」

──彼らはマルコ・アンドレッティをスポット参戦させるのにプラスして、琢磨も走らせるつもりだった?

「そうです。彼らは今年のインディに6台をエントリーさせようと考えていた。マイケルは“インディで琢磨を我々に預けてほしい。ウチのマシンで走れば500で勝つことができる”と言った。彼は琢磨をそれほどのドライバーだと評価していました」

──他にもオファーはありましたか?

「ボビー・レイホールからも電話をもらいました。(キャサリン・レッグの)44号車に琢磨を乗せたいとね」

──インディ500のみという条件ですね。

「だから断りました。私たちはインディ500だけでなく、その他のオーバルレースにも出場したかったので」

──CGRのマイク・ハル氏(マネージング・ディレクター)との交渉の続きを教えてください。

「ランチ交渉から2週間ほどして、徐々に話がまとまってきたタイミングで、琢磨に伝えてどんな交渉をしてほしいか尋ねました」

──琢磨選手の答えは?

「最初にCGRとの交渉を告げたとき、彼は『えぇっ、何だって!?』という様子でした。私はマイクとやりとりした経緯を話し、もう少し資金を集める必要があることを伝えました。CGRで走るのであれば、新たなスポンサーを獲得できる可能性もあるし、既存スポンサーに増額をお願いすることもできると私は考えていました。ただ私と琢磨の間でさえ共有すべき項目が多く、そこに至るだけで2週間もの時間が必要でした」

──金額以外でも合意すべきことは多いのですね。

「契約にいたるまでには、想像以上に時間がかかりました。私は12月の初めごろ“話をまとめるのは不可能かも”と感じていました。その後“もう絶対にこれはムリだ”と結論を出しかけていました」

──要求された金額が高過ぎた?

「活動資金も課題でしたが、それ以外の部分での交渉がとても難しく、お互いの考えが噛み合わなかったんです。でも琢磨は“ノー・アタック、ノー・チャンス”の男ですから、“戦わなければ得られるものはない”という姿勢を私にも求めてきました。それで私のモチベーションは100%に回復しました」

(後編に続く)

 スティーブ・フューセック氏へのインタビューは、現在発売中の『オートスポーツ特別編集 佐藤琢磨2023インディ500』より抜粋したもの。

 この本には、これ以外にもインディ500が終わった直後の[佐藤琢磨 独占インタビュー]や日本一インディカーを知る男・天野雅彦氏によるレース分析、ほかにもCGRのマネージング・ディレクター、マイク・ハル氏のインタビューやインディ500トリビア企画など、アメリカン・モータースポーツの魅力が詰まっている。

     ※     ※     ※     ※

[オートスポーツ特別編集 佐藤琢磨2023インディ500]

発行:株式会社三栄 定価:1,300円(本体価格:1,182円)

商品情報URL
https://shop.san-ei-corp.co.jp/magazine/detail.php?pid=12811
 

オートスポーツ特別編集 佐藤琢磨2023インディ500
オートスポーツ特別編集 佐藤琢磨2023インディ500


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