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投稿日: 2022.11.08 07:08
更新日: 2022.11.08 07:09

SF次世代車両開発への道程。衝撃だった若手ドライバーの「乗りたくない」発言【永井洋治アドバイザーに聞く】

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スーパーフォーミュラ | SF次世代車両開発への道程。衝撃だった若手ドライバーの「乗りたくない」発言【永井洋治アドバイザーに聞く】

 10月26〜27日、三重県の鈴鹿サーキットで行われたスーパーフォーミュラの次世代車両(CN)開発テストで、新たな空力パッケージをまとった2台の開発車両が初の本格走行を迎えた。

 この新たな空力パッケージにおいては、車両の後方乱気流の低減が開発目標とされてきた。走行中にマシンが生み出す後方乱気流が減少すれば、接近した状態での争いが可能になる。そうすれば『速い者が抜ける』レースの実現に近づき、JRP(日本レースプロモーション)が掲げる『エンターテインメント性の向上』に繋がる、という青写真だ。

 鈴鹿でのテストを終えた後、テクニカルアドバイザーを務める永井洋治氏に話を聞いた。永井氏は長年トヨタ/TRDのエンジニアとしてマシン開発を携わった後、JRPへと籍を移してこの次世代車両の開発を統括している。いわば新空力パッケージの“生みの親”である永井氏は、今回の初走行をどんな心境で迎え、どう評価しているのだろうか。

「今回のテストに関しては、興奮しています(笑)。開発テストの一番の目的だったのが追い越しのできるクルマなんですが、ドライバーさん(石浦宏明・塚越広大)たちの言葉を借りると、想像以上の効果が出ているということだったので。シミュレーション通りではあるんですけど、それがやっとできたというか。フォーミュラでそんなクルマというのは、夢だったじゃないですか。無理だ、無理だと言われていたのが、できたというのはもう凄いことだと思います。一番目の目標が達成できました」

 2022年の開発テストを通して、SF19を用いて前後ウイングを寝かせた状態での実走テストを重ね、データを蓄積してきた。それらを踏まえて新たな空力パッケージのシミュレーションも行ってきたが、そのとおりの効果が出るかは永井氏も心配していたようだ。

「最初はすごく不安だったんですね。ちょっとエアロマップも新しくなったので、違う部分でも心配事がありました。もう一つの狙いとして、絶対ダウンフォースというのがありましたよね。ある程度のダウンフォースでタイヤのタレを誘発したり、ドライバーの腕をより引き出すという。そこのバランスがうまく取れるかな、これで本当にうまく行くのかなという感じでした」

「データで見て、難しい状況に来ているなっていうのが分かったので、走る前は不安でした。そこから実際に単独で走らせて、何とかいいところに落とし込みができそうな感じがしてきましたね」

「また、追走に関しては、結果的にはパッケージングがシミュレーションどおりで、後ろの乱気流の少なさが実証されました。だから、興奮もありましたし、みんながやって来たことが無駄にならなかったという安心もありました。まだ2名のドライバーしか体感していませんけど、いろいろなドライバーが体感した時に、どう言うのか。きっと驚きがあると思います」

「この技術がもしかしたら、今後のフォーミュラのスタンダードになって行くかもしれない。『歴史が動いた』瞬間に、自分たちはこのテストで立ち会ったのかもしれないというような興奮がありました」

 ホンダエンジン搭載車両の通称“白寅”は、イタリア・バラーノでのシェイクダウンを行ったが、永井氏が実物の車両を目にしたのは、今回の鈴鹿テストが初めてだったという。

「デザインは見ただけで、超カッコいいじゃないですか。ビジュアル的にはまったく文句なしです。実物を見たのは今回が初めてでしたが、動的というか有機的な線に見えて、”走る”って感じでした。躍動感が形に現れているというか、“バトルするぞ”みたいな。それが伝わってくる。そして、実際にバトルできる。だから、見た目、エンターテインメント性は100点じゃないでしょうか」

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