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スーパーGT ニュース

投稿日: 2020.08.01 15:09
更新日: 2020.08.01 15:13

HOPPY team TSUCHIYA 2020スーパーGT第1戦富士 レースレポート

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スーパーGT | HOPPY team TSUCHIYA 2020スーパーGT第1戦富士 レースレポート

HOPPY team TSUCHIYA

レース結果報告書
2020 SUPER GT Rd.1
富士スピードウェイ

■日時 2020年7月19日
■車両名 HOPPY Porsche
■場所 富士スピードウェイ
■ゼッケン 25
■監督 土屋武士
■ドライバー 松井孝允/佐藤公哉
■チーム HOPPY team TSUCHIYA
■リザルト 予選16位/決勝19位

ポルシェがしゃべる?! クルマ目線のチームレポート

 はじめまして、ボクの名前は HOPPYポルシェです。正式名はPORSCHE 911 GT3 R。ドイツからやってきました。今年はつちやエンジニアリングといっしょにSUPER GT GT300クラスを戦います。応援よろしくお願いします。え!? なんでクルマがしゃべれるのかって? それもドイツ語じゃなくて日本語を。……細かいことは気にしないでください。ボクとつちやエンジニアリングの濃い面々の戦いぶりを1シーズン語っていきますから、ぜひお読みください。

 ボクは今年の2月1日に飛行機でドイツから日本にやってきました。チーム共同オーナー兼、監督兼、エンジニア兼、テストドライバー(兼任が多すぎだね)の土屋武士さんが、早く走らせたくて、船じゃなくて、飛行機に乗ってやってくることになったんだ。

 初走行はまだ真冬の2月。富士スピードウェイでした。今後のセッティングやタイヤ開発の方向性を決めるためにレギュラードライバーの松井孝允くんや、佐藤公哉くんじゃなく、まず武士さんが乗ります。SUPER GTだとタイヤが選べるからタイヤ開発が大事らしいね。ボクのことはほめてくれたけど、初めて履いたタイヤに武士さんは不満があったみたい。

「乗って最初に感じたのはポルシェの完成度の高さ。一言にするとレーシングカーじゃないみたい。乗用車のような感覚で走らせることができる。それにセットアップをいじっていくと反応が明確で、これをやって、こういう反応をするなら次は『こっち?』と投げかけると『そうだよ』と返ってくる。すごく素直。スポーツカーメーカーとして歴史のあるポルシェがつくったレーシングカーだから学ぶべき点がたくさんあると感じた。でも、タイヤは方向性がすごくズレていたんだ」(武士)

 でも、そのタイヤを履いてシーズンを戦うんだよね? 少し心配になってしまったけど、そのタイヤ開発が今年の大きなテーマらしいんだ。「今年はヨコハマさんがウチに若いエンジニアを預けてくれたんで、そのエンジニアの成長に期待しながら、イチからタイヤを作っていく。それはポルシェ用のタイヤというよりはレーシングタイヤ作りそのものの考え方をヨコハマさんといっしょに進化させていくっていう意味合いなんだ。ウチを担当してくれるのは、これまでレーシングタイヤ開発担当をしたことがない若い子だから、既成概念がないので、あれをしよう、これをしようと前向きに取り組んでくれる。2回しかない公式テストでも、ものすごい量のトライをしてくれて前進している。横浜ゴムと25号車の強固な関係を活かして、開発を正しい方向にもっていくという使命を帯びて戦うのが今シーズン」(武士)

 それなら、ボクは今年チャンピオンを狙えるの?

「それは無理だよ。チャンピオンになるためにはライバルメーカーのタイヤをあらゆる性能で上回る必要がある。そこまでもっていくためには3年はかかる。でもそれを何とか2年でやり遂げたいなって思ってるんだ」(武士)

 なんだか壮大な話になってきた。武士さんはクルマづくりが好きと聞いていたから、GT3カテゴリーのボクに、アルミ板のカナードとか付けられたらイヤだなと、不安だったけど、タイヤ作りと若いエンジニアとの共同作業に燃えているから、大丈夫そうだね。

 話は飛んで、7月17〜18日富士スピードウェイで行なわれたSUPER GT第1戦。結論から言うと、決勝の前半、32周目にタイヤのスローパンクチャーが起きて緊急ピットイン。その時点でドライバーの義務最低周回をクリアしていたから、孝允くんにドライバー交代できてピット回数が増えなかったのはよかったんだけど、トラブルが発生したのはコカ・コーラコーナーの手前だったから、1周近くゆっくり走らなければいけなくて、タイムロス。決勝は19位に終わったんだ。

 公式練習のあった土曜日は霧が出たりすごく涼しかったのに、予選と決勝があった日曜日は急に晴れて、どんどん気温も上がった。決勝スタートの時には気温が26度、路面温度が39度だったから、これが要因となってトラブルが出たのだと思います。ボクにとって日本での初レースだし、期待していたから残念な結果だった。でも武士さんはすごく収穫のあるレースだったと言うんだ。なんで?

「テストを経てタイヤはどんどんよくなってきていたけど、苦戦はやる前からわかっていた。気温が上がれば上がるほどリスクは高まるしね。ポルシェのリヤというのは非常に負荷が大きいから」 (武士)

 ボクはエンジンを後ろに積んでいるから、安定してトラクションがいいというメリットもあるけど前後重量配分としては、どうしても後ろ寄り。高速で長い100Rみたいなコーナーだとアウト側リヤタイヤに荷重が集まってしまうんだ。「タイヤが壊れて帰ってきて、また違うタイヤをつけて走ってチェッカーまで走ることができた。これによってデータ取りができたことが収穫。タイヤがもたいない可能性があるのは事前に折り込み済みで、現実をタイヤ開発担当エンジニアと共有できたのもよかった。もしこれが涼しいコンディションで、決勝がなんとなくうまくいっていたら、問題点を認識できなかったかもしれないしね」

 でももしバーストしたらすごく危ない。ボクだけじゃなくて、ドライバーだって怪我するかもしれないし。「そういうリスクを背負って走るのがプロ。それに、お互い信頼し合っているからこそ、リスクを承知で仕事に取り組める。そのあたり、メカニックもドライバーもみんなしっかり認識を共有してレース臨んだんだ。今回のレースの殊勲賞は公哉。スローパンクチャーをすぐに察知してクルマに何もダメージを与えないで帰ってきた。本当にいい仕事をしてくれた」(武士)

 その点ではボクのこともほめて欲しいな。内圧低下をすぐに公哉くんに警告したから、減速できたんだよ。公哉くんはそのことをほめてくれた。あとタイヤトラブルまでは燃料が軽くなるに従って、すごく乗りやすくなっていったこともほめてくれた。これは武士さんやデータエンジニアの木野さんのおかげもあるけどね。

 そういえば、つちやエンジニアリングって、感覚を大事にするアナログ主義のチームで、今や常識のデータロガーを使わないと聞いたけど、今年はデータロガーもしっかり使って、感覚を数字で裏付けていくことにトライしていくらしいよ。そのために木野さんがチームに加わったんだって。

 ボクとして開幕戦で面白かったのは、公哉くんと孝允くんの乗り方の違いかな。Q1は公哉くんが乗ってQ2進出できたけど、Q2で孝允くんは最下位だった。孝允くんはマザーシャシーに乗っていた去年までだと、武士さんが全然その世界が見えないと驚くぐらいのスーパーアタックを決めてポールポジションを何度も獲っていたのに、今回Q2でのアタックについて「ボトムを落とさなければいけないのに、落とし切れなかった」とレース後、反省しきりだった。

「それはちょっと違うな。ポルシェの乗り方がまだピンときていない。公哉はナチュラルに何でも乗れるし、Q1担当も無難に公哉だと思っていた。もちろん決勝は孝允も普通に速く走れるけど、一発いくってなったときの孝允の走り方は、タイヤの性能を100%引き出してすごいタイムを出してくるんだけど、実は孝允のそれはポルシェに合わない。ポルシェが速く走らせることができればドライバーとしてのキャリアを確実に伸ばすことができる。織戸学選手や谷口信輝選手が年齢を重ねても速さを維持しているのは、ドリフト出身でヨーを感じながら走っているから。慣性で曲げている。ポルシェにはこの走り方が合うんだ」(武士)

「慣性で曲げる」ってどういうことかな? 興味はあるけど、この話は長くなりそうだから、またの機会に改めて説明してもらいましょう。ボクの仲間(ポルシェ)がニュルブルクリンク24時間レースで強いのもそのあたりと関係しているのかも……。当分は公哉くん頼みと武士さんは言っていたけど、孝允くんがどんな風にボクのことを理解してくるのかも今シーズンの楽しみのひとつだね。

 SUPER GTだと、GT3だけじゃなくて、エコカーなのにやたらと速いプリウスとか、音が個性的なBRZとかいろんなクルマがライバルだけど、同じGT3のなかで違うタイヤを履いているクルマを追い抜くのが武士さんにとって当面の目標。ボクもそれをクリアしてチャンピオンを目指す戦いを早くしたいと思っています。次戦は8月8〜9日。また富士スピードウェイでの開催です。繰り返しになってしまいますけど、応援よろしくお願いします!

HOPPY Porsche
HOPPY Porsche

◇松井孝允コメント
順位はともかく、ちゃんと完走ができて、このクルマとこのタイヤのデータがしっかり取れたので、このデータが今後にどう活きてくるのかボク自身楽しみです。
ボクのスティントでも、クルマのバランスはよかったです。佐藤選手の時にタイヤが壊れているということがあったので、序盤のタイヤ内圧が低い時は慎重にいって、内圧が上がってから普通にプッシュしました。その時によかったところ、悪かったところがタイヤに対してあったので、そこを今後改善していきたいです。次戦まではインターバルがないので、難しいと思いますが、ボクらが狙っているもてぎまでにものにできれば、いい戦いができると思います。
予選Q2最下位は非常によくないですね。ボクがボトムを落とさなければいけないところを落とせなかっただけ。いけるかなと思ったらいけなかった。そんな感じです。葛藤があります。
ポルシェの乗り方については、正直に言ってボクのほうが苦労しています。佐藤選手はGT3のランボルギーニなどこういうリヤにエンジンがあるクルマも乗った経験があって、ボクのほうが出遅れているので、ドライバーとして学ばなければいけないところもあります。しっかりとボクはボクで成長しつつ、タイヤとクルマをよくしていかなければ、チャンピオンに向けて厳しいと思うので、その3つにしっかりと取り組んでいきます。

◇佐藤公哉コメント
序盤はタイヤ内圧セットの関係と、長いスティントを走ることも見込んでペースを抑えていたので抜かれてしまったんですけど、ガスが軽くなってきた中盤以降はバランスがよくなって、1分39秒台でコンスタントにラップすることができました。さらにペースアップできそうな雰囲気があって、規定周回ぎりぎりくらいまで引っ張ってもいいんじゃないかという感覚がありました。ところがなんの前触れもなく左リヤタイヤがパンクしてしまったので、すごく残念でした。原因が何なのかしっかり話し合って、次の富士に向けて備えていきたいです。
マザーシャシーからポルシェにクルマが代わり、エンジンが載っている位置も一番前から一番後ろになりました。でも以前にランボルギーニに乗っていて、それに近いものがあるので、そんなに違和感はないです。ポルシェの特性を活かしたドライビングはもうちょっと煮詰めていけると思います。

◇土屋武士監督コメント
まずはこの大変な状況の中、開幕戦を迎えられたことに喜びと感謝の気持ちでいっぱいです。無観客での開催はファンの皆さんにとって非常に辛い状況ですが、その想いを乗せて走ろうという意味を込めて、ノーズ部分に「Racing together with you!」のメッセージを掲げさせて頂きました。これからもファンの皆さんと共に走っていきたいと思います。
レースの方はたくさんの収獲があったと思います。理想的な開幕戦になりました。ここから一つずつ課題をクリアしていきたいと思いますので、我々の戦いを見ていてください!

◇石渡美奈オーナーコメント
待ちに待った開幕戦が終わりました。本年1月の体制発表会では声帯を痛めて声を失った私が、待ちに待った開幕戦2日前に夏風邪に倒れるという連続事件。まるで楽しみにしすぎて遠足当日に熱を出す小学生さながらで、土屋監督をはじめ、松井ドライバー、佐藤ドライバー、チームの皆様、そして応援団の皆様には、情けない新米オーナーで申し訳ない限りです。
でも、土屋監督のお計らいで開幕戦前夜に壮行会と称して、オンラインにてチームの皆様、応援団の皆様とお目にかかれたことがとても嬉しくて、そうしたらやはり、現場からレポートをさせていただけなかった不甲斐ない自分が情けなくて、悔しくてたまらなかったのでした。
土屋武士さんとご縁をいただいて早、18年目の今シーズンは、まさかの土屋監督からWオーナーのお話を賜ってのスタートとなりました。オーナーとしてどうあれば良いのか、どう振る舞ったら、チームの皆様、応援団の皆様のお心にお応えできるのかまだまだわからないことだらけです。ただ、土屋監督率いるチームと、そこに集う沢山の素敵な応援団の皆様のお仲間に入れていただき、これからのレースも含めた人生を共に歩ませていただけることが嬉しくて幸せでたまりません。どうも有り難うございます。そして厚かましくも、皆様へお願い申し上げたいことは、皆様の手でどうか私を一人前のオーナーにしていただくべく、色々と教えてください、導いてくださいと言うことでございます。
どうか末永く、HOPPY team TSUCHIYAへご愛顧賜りますよう、忠心よりお願い申し上げます。

HOPPY team TSUCHIYA
HOPPY team TSUCHIYA


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