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スーパーGT ニュース

投稿日: 2020.08.07 19:45
更新日: 2020.08.07 21:38

GRスープラ陣営デビューウインの裏話。開発率いるTRD湯浅氏が話す以心伝心の団結力【スーパーGT第2戦富士プレビュー】

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スーパーGT | GRスープラ陣営デビューウインの裏話。開発率いるTRD湯浅氏が話す以心伝心の団結力【スーパーGT第2戦富士プレビュー】

 スーパーGT第1戦でトップ5を独占して圧倒的な速さと強さを見せしめたトヨタGRスープラ陣営。第2戦の富士でもウエイトハンデが搭載されるとは言え、まだまだGRスープラ同士での優勝争いが予想される。そのGT500のGRスープラのマシンの強さの背景に『陣営としての一体感』という言葉が挙げることができる。トヨタGRスープラの開発を率いるTRDの湯浅和基氏に開幕戦の勝利後、聞いた。

「ホンダさんはどうしてロングランをしていなかったのか、読めない状況でした。こちらはロングランで評価しているのに、ロングランをしている感じがなかった。相手の出方が読めなくて心配をしていました」

 開幕戦の優勝後、今季最初のレースの土曜の走行を見て、TRD湯浅氏はホンダ陣営の出方に戸惑っていた。実際には、ホンダ陣営としてはロングランで評価するまでの余裕がまだなかったというのが実情だった。

 HSV-010の時とは事情の異なる共通モノコック、共通サスペンションなどを使用したクラス1規定でのFR車両NSXの開発と熟成にはまだまだ実走の時間が足りていなかった状況で、「どうしてもこれまで評価していたショートランでの周回になってしまった」とホンダGTプロジェクトリーダーの佐伯昌浩氏が第1戦後に振り返っている。

 その点、トヨタ陣営としては実績のあるFR車両開発と、昨年チャンピオを獲得したLC500の特性をしっかりと引き継ぎ、新型車両のGRスープラでもそのDNAとパフォーマンスをしっかりと備えていた。何より、信頼性の高さが少ないオフの実走時間が大きなアドバンテージになったようだ。TRD湯浅氏が振り返る。

「レース序盤は37号車(KeePer TOM’S GRスープラ)が8号車(ARTA NSX-GT)にせっつかれましたので、焦りました。けれど、ロングランにはある程度、自信がありました。信頼性の面はLC500から引き継げていたので、オフシーズンはトラブルが少なく、かなりの走り込みができていました。開幕戦もほぼノートラブルで行くことができました。それが第1戦のレースでのロングランのよさにつながったのかなと理解しています」
 
 GRスープラの開発はLC500とほぼ同じで、各チームのエンジニアがTRD開発陣とともに開発車両のセットアップを担当し、文字どおり一致団結で作り上げている。

 ロングランに自信があった湯浅氏だったが、優勝したときは喜びよりも安堵の方が大きかった。「もちろん、ホッとしましたよ。GRスープラという新しいクルマを出すから、勝たなきゃというプレッシャーがありましたから」という湯浅氏の言葉から、TRDはじめ開発陣営にはよほどのプレッシャーがかかっていたことが察せられる。

 その湯浅氏に、開幕戦の勝利後、サプライズな出来事があった。

 新型コロナの感染防止策として、今季は各メーカー、チームともさまざまな予防徹底、拡大防止が徹底されているなか、トヨタ陣営は特にその徹底ぶりが強い。GT500クラスに参戦する6台を統括する立場の湯浅氏も感染防止のため、実は各チームとほとんど実際には顔を合わせることなく、開幕戦を終えている。各チームにはTRDのチーム担当がそれぞれ伝達役になり、チーム担当しかチームと顔を合わせていない状況だった。

 同じように、湯浅氏は開幕戦でもドライバーとほとんと顔を合わすことなく、用件があれば同じサーキットにいながら、ケーマックス7(GRスープラ陣営のトランポ)内から、オンラインでコミュニケーションを取っている。

 これまでレース前などにはドライバーやエンジニアがケーマックス7に集まってミーティングやレース直前の伝達などを直接言葉で伝えていたが、今季からはそういった一堂に会してのミーティングができずに、開幕戦のレースを迎えることになってしまったのだ。

 そしてレースが終わり、GRスープラが見事、デビューウインを飾ったわけだが、レース後の湯浅氏のもとには、各チーム、そして各ドライバーから「スープラのデビュー戦で勝ててよかったですね」という声が相次いだ。湯浅氏が振り返る。

「このような状況なので、チームのみなさんにもドライバーのみなさんにもきちんと伝える機会がなかったのですが、スープラでデビューウインを果たしたいというこちらの意思がしっかりと伝わっていたことに驚きました。これは開幕戦での一番の予想外でした」

 まさに以心伝心。GRスープラ陣営の強さと団結力を感じさせるエピソードだが、逆に言えば、開幕戦の勝利でGRスープラ陣営の最低限のノルマは達成された。続いての第2戦富士、開幕戦以上にGRスープラ陣営内でのバトルが激しくなったとき、果たして、その団結力はどのような形になるのか──。

2020年スーパーGT TRD湯浅和基エンジニア
2020年スーパーGT トヨタGRスープラの開発を率いるTRD湯浅和基氏


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