スーパーGT・GT500クラスにおいて、新規定『Class1+α』導入初年度だった2020年の富士スピードウェイ戦では、GR Supra勢の直線スピードの高さが際立っていた。
NSX-GTとGT-Rはストレートで何度もGR Supraの後塵を拝し、その速度差は見た目にも明らかだった。
では、2021年の第2戦富士はどうだったか。ライバル2車とのギャップは、昨年の5km/h程度から3㎞/h少々へと少し縮まったが、「レース全体をとおして見ると5㎞/h程度の速度差が常にあったと思われる」と、ライバル陣営のエンジニアは冷静に分析する。
最高速に大きな影響をおよぼすのは、エンジンのパフォーマンスと、エアロダイナミクスのドラッグレベルである。
このうち、エアロダイナミクスに関しては開発凍結により形状変更は不可能。レーキ角等、車高の前後バランスによってもドラッグは変化するため一概には言えないが、開発可能範囲が比較的広いエンジンの性能差が、富士においては最高速を左右する大きなファクターであることは間違いない。
■ニッサン/名称変更するほどの大幅改良
2020シーズン前半、GT-R勢のパワー不足は明らかであり、信頼性についても充分に確保されていなかったが、バージョンアップを果たした2基目の改良型でその両方が向上した。
そして、今季を迎えるにあたっては新たにエンジンの名称を従来の『NR20B』から『NR4S21』に変更。ネーミング手法が変わったことからも、ニッサン/ニスモが21年型エンジンをどのように位置づけているのか、ある程度想像がつく。
ニッサン系チーム総監督の松村基宏氏は「20年は制御系が大きく変わり、それを使いこなすのに少し時間がかかってしまいましたが、適合が進むにつれてドライバーからも運転しやすくなってきたと言ってもらえるようになりました。とはいえ、20年の課題をすべて克服できたわけではありません」という。
具体的な変更点の回答は得られなかったが、絶対的なパフォーマンスが向上し、それが最高速アップにつながったのは間違いない。また、ドライバビリティと燃費についても確実な進化を果たしたようだ。ドラビリと燃費の向上は、アンチラグシステムを効率的に使うことで両立できるが、アンチラグの制御以外の部分による燃費向上施策もなされているようだ。
パフォーマンスに関しては混合、圧縮、点火といった燃焼に関わり、開発凍結規定に抵触しないパーツについては当然改良されているだろう。そのなかでとくに気になるのは、燃焼室の外部点火、いわゆるプレチャンバーが導入されているかどうかだ。
トヨタとホンダがすでにプレチャンバーを採用しているのは明らかだが、ニッサンはどうか。それについて松村氏は「研究は昔からやっていますが、レースで使っているかどうかは言えません」と、否定も肯定もしない。しかし、パフォーマンスが大きく向上していることを考えれば、投入されている可能性は充分あるはずだ。