レースを愛してやまないファンの方々へ
autosport web Premiumが登場。

詳細を見る

スーパーGT ニュース

投稿日: 2021.09.14 17:15
更新日: 2021.09.14 17:21

3基目を投入したMOTUL GT-Rの背景と、明暗分かれた3メーカーのスペック2ニューエンジン【第5戦GT500決勝】

レースを愛してやまないファンの方々へ
autosport web Premiumが登場。

詳細を見る


スーパーGT | 3基目を投入したMOTUL GT-Rの背景と、明暗分かれた3メーカーのスペック2ニューエンジン【第5戦GT500決勝】

 そんな大小の懸念を抱えた2社に対し、後半戦に向け成功を収めたのがホンダ陣営。車体領域ではミッドシップ時代からここSUGOとの相性が良く、フロントエンジン化して初めて戦う1戦に向けても、事前のタイヤメーカーテストで走行したダンロップ装着車のデータを有効活用して臨んだ。

「実際に今のスーパーGTでのレース前準備って言うと、テストで走行する場合がほとんどではあるものの、予測シミュレーションだとかソフトウェアを駆使しての準備もします。その予測に使っているさまざまなデータが、このSUGOで精度良く扱えるレベルにちゃんと達してる、入ってる、収まってるか、というのは確認したいところではありました。1台だけでも実際に走るテストがあったことで、そこの精度の確認はできた。ほかの4台……BSを履くチームも含めて、事前準備の底上げができた効果はあったかな、と思います」と、NSX-GTの車体開発を率いる徃西友宏氏。

 一方、エンジンの運用に関しても、前戦でクラッシュし被害の出た64号車に加え、ポイントランキング上位の2台に先行搭載する戦略を採用した。

「ホンダ全体で見たときに、新しいエンジンも正常進化はしているのでパワーも上がってます。年間を通して考えたときに残り4戦しかないなかで、1号車、17号車のポイントランキング上位2台が1点でも2点でも良いから獲れるレースをしていかないとダメ。ということで、まずランキング上位の2台に入れました。17号車はしっかりQ2でも上位の方に入ることができたので、エンジンの効果も多少なりにはあったのかな」と、予選終了後に明かしてくれた佐伯LPL。

 その土曜公式練習では17号車が接触され、1号車は大掛かりなセット変更と確認で貴重な走行時間を失っていたにも関わらず、決勝では2台ともに表彰台まで駆け上がる力強さを披露。とくに1号車は「レースを通じて燃費の良い走りができて」いてラップペースも良好。ミニマムとしたピット戦略で一気にアンダーカットを成功させ、コース上では37号車とのバトルも制して表彰台圏内まで順位を上げてきた。

「今年、車両メーカー、タイヤメーカーとも非常に拮抗している年なんですが、1号車がここまでポイントを伸ばせたということは、後半残り3戦に向けて充分優位な位置に立っていると思います。概ねドライバーのコメントも良い方向で、まあなかなかドライバーから『このエンジン良いね』って言われることないんで(笑)。体感できる性能向上が、ある程度あったんだろうな……というふうに捉えてます」と決勝後に語る佐伯LPLに対し、車体担当の徃西氏も「勝てる状態だったクルマ(8号車)で勝ちたかったな、というのが正直なところ。反面、一番ウエイトの重いクルマが2位まで上がれたっていうのは、クルマを準備してくる過程で狙った性能というのをうまく引き出して、コース上で力強く走ってくれたおかげということで、そこはうれしい結果でした」と、NSXの5台全車が完走してポイント獲得を果たしたレースを振り返る。

2021スーパーGT第5戦SUGO ARTA NSX-GT(野尻智紀/福住仁嶺)
2021スーパーGT第5戦SUGO ARTA NSX-GT(野尻智紀/福住仁嶺)

 この2位表彰台15点を加算し、計55点とした1号車は、次戦APで燃料流量リストリクター『3ランクダウン(88.0kg/h)』の領域に入る。もちろん勝負どころの出力面では大きな足枷ではあるものの「燃料流量が下がれば下がるほど、エンジン負荷にとっては非常に楽な状態になってしまいます」(佐伯LPL)と、運用面ではメリットも生じる。その後にはウエイト搭載量“半減”の第7戦もてぎと、恒例“ノーウエイト”勝負の最終戦富士が控えている。

 もちろん、FRのNSX-GTにとってもてぎは優勝実績があり、富士も“験がいい”コース。ここでエンジンの持てる性能をすべて解放する運用を考えるのが当然で、それは本来ならトヨタが一番採用したかった戦略のはずだ。

 また今回勝利を飾り、鈴鹿から連勝を果たしたニッサンにとっては、2020年投入の新規定車両でここSUGOのテストを一切経験しておらず、松村総監督も「過去のデータとシミュレーションを繰り返すことによって、どういうセッティングで持ち込むか。全車が全部1発で決められたわけじゃないんですけど、予選上位に行ったクルマはあまり弄らないで持ち込んだとおりで走れていた。その意味で、計画は当たったんじゃないかな」と、相対的ハイダウンフォース型の現行GT-R復調と底上げを感じ取っている。「次のAPも“僕は”期待してますけど、それはやってみないとわからないですし、だから一所懸命やりますよ。今年を諦めてるわけでもなんでもないんで」

 今季開幕時点で「開発競争は揺るぎなく健在」と記したが、そのシビアさと過酷さはさらに加速度を増し、規定条文のすみずみまで目を凝らした極限の領域を進み続けている。

2021スーパーGT第5戦SUGO STANLEY NSX-GT(山本尚貴/牧野任祐)
2021スーパーGT第5戦SUGO STANLEY NSX-GT(山本尚貴/牧野任祐)


関連のニュース