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スーパーGT ニュース

投稿日: 2022.08.25 17:00
更新日: 2022.08.25 17:04

【GT300マシンフォーカス】大型ディフューザーの認可が下りず苦戦も。アウディR8 LMSの進化を振り返る/前編

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スーパーGT | 【GT300マシンフォーカス】大型ディフューザーの認可が下りず苦戦も。アウディR8 LMSの進化を振り返る/前編

 スーパーGT GT300クラスに参戦する注目車種をピックアップし、そのキャラクターと魅力をエンジニアや関係者に聞くGT300マシンフォーカス。2022年シーズンの第5回はTeam LeMansの『Team LeMans Audi R8 LMS』が登場。この2022年シーズンにはエボリューションモデル“Evo2”に進化したアウディR8 LMSだが、登場から現在までベースモデルにアウディR8を使用し続けるマシンとあり、まずは前編として2012年のスーパーGT登場から、その進化の変遷を振り返る。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 アウディR8 LMSの誕生は2011年。ライバルメーカーのFIA-GT3がベース車両を変更してモデルチェンジするなかで、11年間一貫してアウディR8を使い続けている希有な存在だ。

 とはいえ、当初は今で言うEvo(エボリューション)モデルばりに大幅なアップデートを繰り返していた。2012年モデルではフロントタイヤをワイド化。アウディR8 LMSのリヤタイヤは330/710R18なのに対し、2011年モデルではフロントが270/650R18。前後異サイズは珍しいことではないが、さすがに2.5インチ近い差は前後のバランスを考えてもよろしくなかったのだろう。2012年モデルではフロントの全幅を約50mmほど拡張し、300/650R18に改められた。これによりフロントのグリップ力が高まり、コーナリング性能が向上している。

 2012年モデルでは、ほかにもリヤウイングの取り付け位置を後方に移設してリヤのダウンフォースを高め、フロントのダンパーはタイヤサイズの変更に伴い新設計。エンジン型式は変わらないが、ECU(コンピューター)も含めてファインチューニングされた。戦闘力が上がったこと、ちょうどスーパーGTでもFIA-GT3が台頭するタイミングに重なり、2012年シーズンのGT300クラスに4台のアウディR8 LMSがデビューした。

2012年のGT300クラスに参戦したGAINER DIXCEL R8 LMS
2012年のGT300クラスに参戦したGAINER DIXCEL R8 LMS
2012年のGAINER DIXCEL R8 LMSの左フロント
2012年のGAINER DIXCEL R8 LMSの左フロント
2012年モデルではリヤウイングの取り付け位置も後方にされた
2012年モデルではリヤウイングの取り付け位置も後方にされた

 さらに、2013年にも見直しが入る。2012年モデルがフロントまわりを中心としたアップデートだったことから、2013年モデルではリヤセクションを中心に進化させてきた。リヤディフューザーを大型化し、スワンネック式のリヤウイングを投入したのだ。大きく張り出したリヤディフューザーは、迫力ある見た目からも効果は大きそうだった。

 ところが、開幕直前になってリヤディフューザーはFIAの認可が下りないと判明。開幕前のテストでアウディR8 LMSは好調なタイムを刻んでいたが、2012年仕様のディフューザーに戻すと、一転して不振に陥った。ダウンフォースの前後バランスを整えられず、リヤがピーキーなクルマとなってしまったのだ。

 ちなみに、その後はコストダウンなどを理由に、FIA-GT3はモデルチェンジが5年以上、Evoモデルは2年以上の間隔を空けて行われるようになった。アウディR8 LMSも2014年と2015年は2013年モデルを継続している。誕生から2年連続で進化することができたのは、この協定前であったから可能だったわけだ。

2013年のGT300クラスに参戦したZENT Audi R8 LMS
2013年のGT300クラスに参戦したZENT Audi R8 LMS
スワンネック式のリヤウイングが投入された2013年モデル
スワンネック式のリヤウイングが投入された2013年モデル
2013年のアウディR8 LMSのリヤディフューザー
2013年のアウディR8 LMSのリヤディフューザー

 そしてアウディR8 LMSは、2016年モデルで大きな変貌を遂げる。この年は多くのメーカーが新型車両に入れ替えるタイミングでもあった。同じフォルクスワーゲングループの兄弟車であるランボルギーニは、ガヤルドからウラカンにベース車両を変更。ウラカンGT3はイタリアのレーシングコンストラクターであるダラーラ社の協力を得て、ランボルギーニが自社で製作(ガヤルドGT3はドイツのチューナー、ライター・エンジニアリングが製作)。ダラーラがフォーミュラで長年培ってきた高い技術が存分に投入されている。

 そんな2016年モデルのアウディR8 LMSは、そのウラカンGT3と「ボディ以外、ほぼ一緒」と言われていた。エンジンもランボルギーニとアウディというメーカーの違いにより、型式こそ異なるものの同仕様。念願だったリヤディフューザーの大型化も果たされた。

2016年のGT300に参戦したHitotsuyama Audi R8 LMS
2016年のGT300に参戦したHitotsuyama Audi R8 LMS
リヤディフューザーの大型化が施された2016年モデル
リヤディフューザーの大型化が施された2016年モデル

 2019年には、アウディR8 LMSとウラカンGT3の両車でアップデートしたEvoモデルが登場している。だが、その内容は大きく異なっていた。ウラカンGT3 Evoの改良点は、サスペンションのアーム類やアップライト、取り付けブラケットまで変更し、ジオメトリーも変えるなど多岐に渡っていたが、アウディR8 LMS Evoの主なアップデートメニューはフロントバンパーのデザイン変更だ。

 特にカナード付近が複雑な形状となり、フロントのダウンフォースを上げることで、ややピーキーだった空力特性がマイルドになった。しかし、ほかにギヤ類の耐久性アップ、ECUや電子制御の精度向上などもあるが、速さにつながるアップデートはフロントバンパーのみだった。

 そのためもあるのだろう。2022年、ウラカンGT3に先んじてアウディR8 LMS“Evo2”が投入された。その進化は後編で解説する。

2019年のGT300クラスに参戦したHitotsuyama Audi R8 LMS
2019年のGT300クラスに参戦したHitotsuyama Audi R8 LMS
2019年のEvoからフロントにカナードが追加された
2019年のEvoからフロントにカナードが追加された


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