更新日: 2023.09.06 16:41
GOODSMILE RACING & Team UKYO 2023スーパーGT第5戦鈴鹿 レースレポート
■2023 AUTOBACS SUPER GT Round5 SUZUKA GT 450km RACE
■DATA
会期:2023年08月26~27日
場所:鈴鹿サーキット(三重県)
観客:予選1万2500人/決勝2万500人
予選:3位
決勝:5位
獲得ポイント:6ポイント
シリーズ順位:17位(9ポイント)
思い出されるのは前年度、2022年8月の鈴鹿ラウンド。その直前に行われた富士スピードウェイで首位を快走し、誰もが優勝を確信した終盤に無念のパンク。そんな『地獄』を味わった直後の鈴鹿戦で、厳しいレースになるという大方の予想をいい意味で裏切るで快走を見せ、5年ぶり、そしてチームとしては鈴鹿で初となる勝利を飾り、チームにとって『地獄』から『天国』を味わった夏になった。
そして今年の前戦富士。予選でポールポジションを獲得、決勝でもほぼ全般に渡ってトップを走行しポール・トゥ・ウインの目前まで迫った終盤、レインタイヤからスリックタイヤに履き替えた直後にスピン。まさかの大失態で優勝を逃してしまったチームは、この鈴鹿で昨年のような再度の『天国』を期待していた。
さまざまな車種がエントリーするスーパーGTでは性能を拮抗させる為に性能調整(BoP、バランス・オブ・パフォーマンス)が行われる。今回のメルセデスAMG GT3のBoP重量は35kgで、車両総重量は1320kg、そこに今シーズン獲得しているドライバーポイントに応じて課されるサクセスウエイトは9kg追加される。また、エンジンパワーを制限する吸気リストリクターは34.5mm×2を付ける。
今大会も6月にここ鈴鹿サーキットで行われた第3戦と同じ450kmで争われる。第3ドライバーを登録するチームも増えたが、4号車は引き続き谷口選手、片岡選手の2名で戦う。450kmレースでは2回の給油を伴うピット作業が義務付けられ、各チーム2回の義務をどのタイミングで消化し、それぞれのピット作業の内容をどう組み立てるか、ピット戦略がレースの行方を大きく左右する。
8月26日(土)【公式練習、公式予選】
・天候:晴れ
・コース:ドライ
・気温/路面温度:
Q1開始時33度/52度
Q2開始時32度/48度
公式練習は、朝一番に行われたFIA-F4の予選進行が遅れた影響で、5分遅れの午前9時20分開始に変更された。コンディションは気温33度、路面温度39度のドライ路面。片岡選手がステアリングを握り走行を開始した。
セッション開始とともにコースに向かい、持込のセットを確認する。まずは3周目に2分01秒078とその時点の2番手タイムをマークする。そこからはセッティングの調整とタイヤの確認の為、5周目、9周目と続けてピットへ向かい、ショートランを繰り返す。片岡選手は11周目に2分00秒763の自己ベストを記録したところでシートを降り、谷口選手へ交代した。
谷口選手は、本来ならまとまった周回数を重ねてレースペースを確認したいところだったが「周囲のライバルも同じ状況だとは思うけれど、我々も全然グダグダで。ロングでももうタイヤが全然で、『ダメだこりゃ』と」。なかなかセッティングが決まらないままアウトインを繰り返し、10時45分からのクラス専有走行枠では2分00秒724、同00秒567と連続で自己ベストを刻み、12番手でセッションを終えた。その後、片岡選手がドライブしたサーキットサファリ/FCYテストの枠でも、確認作業を続けたが、状況が改善する雰囲気や感触はなく公式予選を迎えた。
当初、午後3時10分から予定されていた公式予選は、午前中のFIA-F4予選の影響で5分押し、さらにFIA-F4決勝のレース進行でもさらに5分押しとなり、合計10分遅れの午後3時20分に開始となった。今回もGT300の予選Q1ではエントリーする25台がランキング順に2組に振り分けられ、GOODSMILE RACING & TeamUKYOはB組に出走となった。Q1は午前の専有走行枠で予選シミュレーションをこなした谷口選手が担当した。
気温は午前とほぼ同じながら、路面温度が52度まで上昇していた。するとこのコンディションの変化が4号車に味方したか「予選のときから急に雰囲気が変わって、良い感じ」(谷口選手)になる。谷口選手はウォームアップを早々に終えるとアタックに入った。計測2周目、セクター2、3、4で全体ベストを記録し、ラップタイムは1分59秒313を叩き出してグループ首位に立つ。直後に6号車がわずかに上回り2番手に後退するが、谷口選手は続くラップでもアタックを続けると、セクター2と4でふたたびベストを記録し、トータルを1分59秒029まで縮めてチェッカーを受けた。それでも6号車のタイムには0.05秒ほど足りず、2番手でのQ2進出となった。
Q2を担当した片岡選手も午前の懸念をよそに快走を見せた。午後4時13分、Q2開始時の路面温度は48度、片岡選手は少しでもラバーの載った状態でアタックするために1分30秒間ピットで待機してライバル達を先に行かせると、全16台中10番目にアタックラップへ入った。
谷口選手のQ1から、今日のピークグリップがかなり早いタイミングで来ることをフィードバックされていた片岡選手は、コースインすると一気にタイヤのウォームアップを終え、計測2周目にアタックを行った。最終セクターで全体最速タイムを出しながら1分58秒652を記録、コントロールライン通過時点で2番手に着ける。しかし背後からアタックに入っていた96号車(K-tunes RC F GT3)がわずかに先行し、4号車グッドスマイル初音ミクAMGは1ポジションダウンしてセッションを終えた。翌日の決勝スタートポジションは2列目3番手と、十分に優勝を期待できる位置から『天国』を目指すことになった。
8月27日(日)【決勝】
・天候:晴れ
・コース:ドライ
・気温/路面温度
スタート前(14:45)32度/50度
序盤(15:15)32度/50度
中盤(16:15)31度/47度
終盤(17:15)31度/43度
ゴール(17:28)30度/39度
土曜の深夜に鈴鹿サーキット一帯に激しい雨が降ったため、路面に載っていたタイヤラバーが洗い流され、日曜朝の路面コンディションやグリップ状況は、イチからの白紙状態となってしまった。決勝レースは第2戦、第3戦、第4戦に引き続き今回も450kmの長距離戦で、2回の給油義務に対して、スタート担当の片岡選手がダブルスティント、最後のスティントを谷口選手が担当するいつもの戦略で臨んだ。
気温33度、路面温度50度という真夏のコンディションの下、定刻の午後2時45分に三重県警の白バイ隊とパトカーに先導されパレードラップが始まる。さらにフォーメーションラップ1周を経てレースがスタート。序盤からポールシッターの61号車(SUBARU BRZ R&D SPORT)がハイペースで逃げると、片岡選手も想定どおり2分02~03秒台でラップを重ね、前方の96号車を秒差圏内で追走した。
10周目、8番手にいた6号車(DOBOT Audi R8 LMS)が、逆バンクに続くNIPPOコーナーでリヤタイヤ脱落のトラブルを起こし、このレース最初のFCY(フルコースイエロー)が発動する。全車カウントダウンからトラック上を80km/h上限で走行。車両回収が済んだ翌周に解除されると、このタイミングを狙い澄ました片岡選手は抜群のタイミングで加速を開始し96号車をオーバーテイク。早くも2番手に浮上した。
ここから片岡選手は約8秒のギャップがあった首位61号車との差を詰め始め、15周目から7.8秒、7.4秒とラップごとにそのマージンを削っていく。すると16周を終えたところで61号車が先にピットへ向かい、片岡選手が暫定首位に。チームは18周目に片岡選手を呼び戻し、タイヤ4輪交換と1回目の給油義務を終え、作業静止時間35.9秒でコースへと戻した。
片岡選手は19番手でコースへ復帰すると、引き続き安定したラップペースで周回を重ね、周囲のライバルがルーティン作業に向かうなかでジリジリと順位を回復していく。28周目にはNIPPOコーナーで52号車(埼玉トヨペットGB GR Supra GT)をパスし、その後も30周目のヘアピンコーナーで20号車(シェイドレーシング GR86 GT)、31周目の1コーナーで60号車(Syntium LMcorsa GR Supra GT)とGT300規定車両を立て続けに抜き去り、32周目のNIPPOコーナーでは5号車(マッハ車検 エアバスター MC86 マッハ号)も仕留めて8番手までカムバックを果たす。
さらに片岡選手は34周目のNIPPOコーナーで7号車(Studie BMW M4)もオーバーテイクして7番手とすると、ここから上位勢も2回目のルーティンへ。37周目には27号車(Yogibo NSX GT3)をオーバーテイク。セカンドスティント終盤でも上位勢最速の変わらぬペースを刻み続けた。
42周目突入でふたたび首位の61号車がピットへ向かうと、片岡選手は2番手まで浮上。88号車(JLOC ランボルギーニ GT3)が8.8秒前方に残るのみに。ここからも片岡選手は2分02秒台連発で迫った。運命の45周目、背後の3番手にいた56号車(リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R)が高速130R手前で右リヤタイヤ脱落によりコースオフし、バリアにクラッシュ。ここで2回目のFCY発動となった。
この瞬間、片岡選手はすでにシケインから最終コーナーへ進もうかというタイミングだったのだが、咄嗟のことにチームはピットレーンクローズ目前でのピットインを実現できず、このFCYを味方につけ損なう。一方、4号車の後方を走っていた18号車(UPGARAGE NSX GT3)と87号車(Bamboo Airways ランボルギーニ GT3)は、その56号車より背後にいたことでFCYの好機を捉え、2回目のピット作業を行って先行してしまった。
FCYが解除され、首位88号車と合わせ47周を終えたところでピットへ向いタイヤ4輪交換、2度目の給油義務を済ませ、谷口選手に交代する。谷口選手は復帰後8番手から「片岡がもう3分の2を走ってくれているので、僕はあと3分の1走るだけ」とフルプッシュ。「とにかく前を追おう」という走りで、交代直後から52周目には2分02秒146の自己ベストを更新するが、続くラップであわやの場面に遭遇する。GT500クラスで表彰台争いを繰り広げていた1台がデグナー進入でインをこじ開け、弾き出された4号車はアウト側のグラベルを滑走しながらブリッジ手前へ。難しい状況でなんとかコントロールを維持した谷口選手は「大丈夫だった。ダメージはなかった」と、うまく衝撃を逃す対応で窮地を切り抜け、続く54周目には2分01秒726までタイムを上げていった。
57周目にはGT500クラスのアクシデントで3度目のFCYが出され、それまでピット作業をせずステイアウトしていた9号車(PACIFIC ぶいすぽっ NAC AMG)がピットへ向かったことで7番手に。谷口選手はレース終盤でも2分02秒台を連発し、60周目の1コーナーで2号車(muta Racing GR86 GT)を仕留め6番手、66周目にはスプーン進入でワイドになった31号車(apr LC500h GT)もパスして5番手と、さらに前を目指す。 しかし、ファイナルラップまで2分02秒台を続けてクラス最速を誇示しつつも、ここでレースが終了となる。4号車は71周を走破して最終的に5位でチェッカーを受けた。今回『天国』を目指していたGOODSMILE RACING & TeamUKYOにとっては、なんとも“くやしい”今季最上位となった。
■チーム関係者コメント
安藝貴範代表
「おおむね予定どおりと申しますか、レース前に予定したかたちのレースはできた、と思っています。ただ持ち込みセットに不安が残ったと言いますか……。不安を“感じてしまった”こともあり、誰も(タイヤ)2本交換などは考えもしなかった(笑)。走り出しにもうちょっと手応えがあれば、違う作戦を考えられたかもしれないですね。決勝に関しても、タイミングの判断等々はあると思いますが、あの2回目のFCYのときに(ピットへ)入れた可能性はありました。その思いは残りますが、でも間違えてはいない。実際ペースも良かったですしね。この勢いと手応えは、従来の鈴鹿ではなかなか無かったですが、今回は底力というか。実際に持っているモノで勝てそうだった。その意味では今は良い状態に来ていると思いますし、本当に惜しかったなぁと思っています」
片山右京監督
「モニターを見ていてひとつだけ思うのは、やはり2回目のFCYのときに早めに飛び込ませていたら、勝てていたなって。でも本当にそのぐらい。土曜の午前はタイヤだけなんだかグデグデでしたが(笑)、路面にラバーが乗ってからは普通になって問題はなく。あらゆるところでほぼ狙ったとおりにちゃんと進められていた。ルールのなかで(FCYを活かして)入った人たちが得したところだとか、自分たちの条件ではあまりにもタイミングが短い中での判断にはなっただろうけれど、できた『かもしれない』可能性を考えると、あとは河野さんの反射神経を鍛えるだけ(笑)。前半もドライバーが完璧な温度管理をしてマネジメントをしたら、ああやって良いペースで戦える。そこもちゃんと丁寧にやれましたし、この鈴鹿で手応えがあった。また良いレースはできると思います」
谷口信輝選手
「初日の走り出しはペースも上がらず。どんどん(2分0)3秒、4秒、5秒となりそうで『マズいね』という状態だったんですが、予選から急に雰囲気が良くなり3番手に。そこからアジャストを入れて日曜のウォームアップ走行を見たら「悪くない……けれど、周りも速いね(笑)」という感じでした。決勝は最初にタイヤ交換をした組がわずかに得をしているところもあって、片岡がスタートから良い位置を走ってくれていたんですが、やはりFCYも絡んだり。我々の作戦どおりでやっていくと意外と順位が落ちていて、気がつけば『アララ』と。自分のパートもまたFCYが出たり、500とちょっと接触があったりして前には届きませんでしたが、ペース自体は良くて最後は1番速かったみたいだから。そういう意味ではちょっと歯車が噛めば(優勝が)あったんだろうなと」
片岡龍也選手
「決勝はスタートした最初のタイヤが路温的に少し『守らなきゃいけない』ということで。今回も(HWA AGのパフォーマンス・サポート)エンジニアが入ったりして、チームとして『守る』と言っても抽象的ではなく『どのコーナーで、どのタイヤを、どの温度で守るか』まで決まっていた。そのルールに従って走りながらコントロールできたし、指示がないとやはりどうしても少し無理をしなくちゃならない場面も出る。セカンドスティントはハード目を履いて、それも狙いどおりに機能して自分のペースとしては良いペースで走れました。FCYのタイミングがうまく使えたかはちょっと紙一重でしたが、使えていればラッキー。今日に関しては自分たちのレースはキチッと全部やれたので。その結果、自分たちより速いクルマが2台、+FCYで得をした2台がいた、ということだけです」