さて、(3)と(7)のどちらを採択するかで、暫定優勝はYAMAHA FACTORY RACING TEAMか、Kawasaki Racing Team Suzuka 8Hかに分かれた。
最初、レースディレクションは(3)にあるEWC規則書 1.22.5(レース終了時の規則)を根拠として、YAMAHA FACTORY RACING TEAMが暫定優勝と判断。その結果に対するKawasaki Racing Team Suzuka 8Hの抗議を受けると、今度は(7)にあるEWC規則書1.23.1(赤旗中断時の規則)に則り、Kawasaki Racing Team Suzuka 8Hを暫定優勝とした(後に車検を経て正式結果に)。これは、「レースがどのように終了したと判断するか」という解釈の問題だ。
EWC規則書 1.22は、レース終了とリザルトについて規定する項目だが、1.22.2には「指定された周回数またはレース時間が終了すると、先頭車両はチェッカーフラッグを掲出される。チェッカーフラッグはその後のライダーにも掲示され続ける」とある。
また、別項1.19.1には「チェッカーフラッグはレースまたはプラクティスの終了を示すために振られる」と記載されている。つまり、1.22.2と1.19.1のふたつを組み合わせて理解すると、「指定された周回数またはレース時間が終了した先頭車両がチェッカーフラッグを掲出された時点で、レース終了」ということになる。回りくどい言い回しではあるが、レースではごく当然のことだ。
(3)で挙げられている1.22.5は、レース終了後に完走扱いになるための条件で、「a)優勝者がこなした周回数の75%を周回していること。b)優勝者に続き5分以内にコース上のフィニッシュラインを通過していること」とあるのだが、今回の争点になったのは b)の箇所だ。
最初、レースディレクションは1.22.5に基づきKawasaki Racing Team Suzuka 8Hを完走扱いにしなかった。だがこの項は、チェッカーフラッグが提示されてレースが終了した場合に即して記載されている。
今回は赤旗中断の状態でレースが終了し、チェッカーフラッグは提示されなかった。つまり(ルール上の定義としては)優勝者なしでレース終了となったため、「優勝者に続き5分以内に……」の適用は矛盾が生じる。Kawasaki Racing Team Suzuka 8Hの異議申し立ては極めて的確だったと言える。
一方の、赤旗について。モータースポーツにおける赤旗は、原則としてレース中断を意味し、レース終了を意味しない。赤旗の提示によってレースは中断され、その後、次の段階として再開するか、終了するかが判断される。
EWC規則書1.23は、レース中断について記載されている。少し長くなるが、1.23.1には「レースディレクションが気候条件またはその他の何らかの理由でレース中断を決定した場合、フィニッシュラインとすべてのマーシャルのポストに赤旗が提示され、コースに設けられた赤いライトが点灯される。ライダーはただちに減速して、車両保管のためにピットレーンに戻らなければならない」とある。
続けて、「リザルトは、赤旗が表示される直前に先頭ライダーならびに先頭ライダーと同一周回のすべてのライダーがフル周回を終えた時点のものが適用される」と記されている。
赤旗で中断されたレースの再開または中断の判断基準は記されていない。ケース・バイ・ケースでレースディレクションが決めるようだ。ただし、リザルトとはレース終了時点で確定するものだから、赤旗の規定直後にリザルトについて記してあるということは、赤旗中断後のレースが再開できないと判断され、レース終了となるケースも少なくない、という理解だろう。
7月28日(土)に行われた鈴鹿4時間耐久ロードレースは、残り1時間20分ほどで赤旗中断され、その後、おそらくは天候の回復が見込めないという理由により、終了となったのだろう。「赤旗終了」ではなく、「赤旗中断、その後、終了」という手順である。
鈴鹿8耐も、このパターンに類似している。再開せず終了となった理由は、8時間というレース規定時間に達したからだと思われる。であれば、(7)にある「1.23.1に定められた赤旗中断時の規則を適用」が妥当だ。Kawasaki Racing Team Suzuka 8Hの抗議により、非常にクリアなリザルトとなった。