なお、今回のケースでは“5分ルール”が取り沙汰された。

 赤旗に関し、MotoGP規則書(1.25.1)には「赤旗掲示から5分以内にマシンに乗ってピットレーンに入らず、指定された計測ポイントを通過しなかったライダーは、非完走扱いとなる」とある。

 また、スーパーバイク世界選手権(SBK)の規則書1.27.4には「赤旗掲示後に再スタートの資格を得るには、掲示から5分以内にライダーはバイクに乗るか押すかしてピットレーンに戻らなければならない」と明記されている。

 だが、EWC規則書にはこういった内容の事項は掲載されていない。EWCレギュレーションのもとで行われる鈴鹿8耐では、赤旗に関する“5分ルール”は無関係だ。

赤旗終了後、パルクフェルメに並べられたマシン
赤旗終了後、パルクフェルメに並べられたマシン

 実際、(3)において、最初の暫定結果は赤旗に関する“5分ルール”ではなく、1.22.5に示される完走に関する“5分ルール”が根拠だ、とされている。

 だが一方で、(7)の暫定結果変更発表の際、レースディレクションは冒頭で「レースディレクションは、赤旗から5分以内に全ライダーがピットレーンに入ってきた段階のリザルトをもってレース終了、と考えた。これはFIMのすべての世界選手権の見解だ」と説明しているのだ。

優勝会見に行われたレースディレクションによる説明
優勝会見に行われたレースディレクションによる説明

 もしこの説明が正確だとすれば、MotoGPやSBKの規則書に記載されており、EWC規則書には記載されていない、赤旗に関する“5分ルール”が誤運用された可能性も否めない。

 また繰り返しになるが、赤旗に関する“5分ルール”はEWC規則書には記載されていないので、「FIMのすべての世界選手権の見解です」が、何を指しているのか不明確である。

「何をもってレース終了とするか」は、当然のことながらリザルトを決定するうえで極めて重要な事柄だ。赤旗中断を経てレースが終了する場合も多々あるのだから、レースディレクションの言葉通り、FIMはすべての世界選手権に共通するルールを策定するべきだろう。

 例えば今回、S.E.R.T.が白煙を上げた時点で赤旗中断となり、その後レース終了となった場合、EWC規則に則れば、赤旗1周前の順位をリザルトとするため、S.E.R.T.は完走扱いとなり、EWCチャンピオンになっただろう。

 こういった事態を不公平と見て、MotoGPとSBKには赤旗に関する“5分ルール”が定められたのだ。EWCにおいても同様に適用されて然るべきだ。

 近年の鈴鹿8耐は“スプリント耐久”とも称される。耐久レースとは思えないほどのハイペースで、ごくわずかなタイム差を最後の最後まで競い続け、最終ラップまで緊迫したレースが展開する。だからこそレースディレクションには、明確な根拠に基づいた、より迅速かつ精密な判断に期待したい。

鈴鹿8耐の風物詩である花火
鈴鹿8耐の風物詩である花火

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