全8クラスが競うピレリスーパー耐久シリーズのなか、GT4マシンによって競われるST-Zクラスは、2018年のクラス創設以来、年々車種バラエティが増え、2020年シーズンの全5戦では8車種、10台がエントリーした。
不定期にお送りしている“スーパー耐久マシンフォーカス”。第5回目となる今回は2019年、2020年と2度のST-Zクラスタイトルを獲得した『メルセデスAMG GT4』の特徴、特性をご紹介しよう。
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2017年7月の第69回トタル・スパ24時間でお披露目され、2018年シーズンからデリバリーが開始された『メルセデスAMG GT4』はロードカーである『メルセデスAMG GT R』をベースに開発された。
先行開発されたFIA-GT3マシン『メルセデスAMG GT3』の開発で得たノウハウを豊富に取り入れており、2020年シーズンのスーパー耐久シリーズでは3台がエントリーし、最も多くのシェアを集めた。
2019年から参戦し、2年連続でST-Zクラスのシリーズタイトルを獲得したENDLESS AMG GT4の中村稔弘エンジニアは「どのサーキットにもそこそこ合っているところが特徴ですね。車重は1,390キロと重たいクルマですが、よく考えられて作られたクルマだと感じます」とAMG GT4の印象を語った。
FIA-GT4はジェントルマンドライバーに向けたカテゴリーであるため、各メーカーはドライビングアシスト機能の充実を図っている。なかでもAMG GT4の特徴は、ABSとトラクションコントロールをスイッチオフを含めた12段階で細かく設定可能だということだ。
選択肢の幅が広いことから、毎回違うコースの特性やコンディションに対する合わせ込みがしやすいという。これがAMG GT4というクルマがどのサーキットでも強いという理由の一つとなっているのだ。
「ドライバーが感じないくらいの変化もありますが、走りながらどんどん、路面状況やタイヤの状況に細かく合わせていけます。そこがジェントルマン向けの車両が速く走るためのキーポイントですね」と中村エンジニアは語った。
最大出力510馬力を誇る4リッターのV8直噴ツインターボエンジンはロードカーから大きな変更はなく、レースユースに応じて冷却が強化されているに過ぎない。しかし、ミッションは『メルセデスAMG GT3』譲りのヒューランド製6速シーケンシャルギヤボックスを搭載している。
「エンジンのマイレージは4万キロになります。2018年シーズンを終えて約1万キロちょっとでした。現時点(2020年第3戦岡山にて取材)では1万6000キロ近くですね。距離の長い富士24時間レースを2回走ってもまだまだで、ほぼ4年使えるということです。なので、まだチェックもないですね。1万キロでスパークプラグを交換することになっているので、1シーズン走り終わったらプラグを換えるくらいです」
「ミッションのマイレージは1万2000キロでチェック、2万キロでサービスとなります。1万2000キロで一回開けて、チェックして何も問題がなければそのまま組んで、2万キロでフルオーバーホールになります」
ロードカーのミッションをそのまま搭載するGT4マシンが多数を占めるなか、AMG GT4のようなレーシングミッションを搭載する車両は少数派だ。しかし、本格的なレーシングミッションといえど、サービスまで2万キロとマイレージは長く、メンテナンス面でも決して不利とはなっていないのだ。