F1iのテクニカルエキスパート、ニコラ・カルパンチエが各チームの2018年F1ニューマシンを分析。前年型の発展型となるフェラーリSF71Hのポイントをチェック。
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(1)さらにアグレッシブな改良
メルセデスのW09同様、フェラーリSF71Hも前年型の正当な発展モデルといえる。中でも最大の特徴といえる大きなレーキ角は、しっかり存在を主張している。一方でホイールベースは、「やや長くした」と、テクニカル・ディレクターのマッティア・ビノットは言明する。
「もともと低速区間では群を抜く速さを見せていたが、高速セクションがやや苦手だった。ホイールベース延長は、そこでのパフォーマンス向上が主な目的だ」
今季のレッドブルやウイリアムズなどがこぞって模倣したサイドポッドも、昨年型をさらに洗練させた。開口部を極限まで狭くしたことで、その下のアンダーカットと呼ばれる部分が果たす空力的役割は、これまで以上に大きくなっている。
それにしても開口部の面積の減少ぶりには、驚く他ない。黄色の矢印や点線で示すように、横幅はほとんど半分になっているのだ。そのおかげで車体両脇からリヤへと流れる気流はいっそう密度を増し、気流の剥がれも少ない。その結果、空気抵抗は昨年型以上に減り、逆にダウンフォースは増加しているはずである。
(2)気流の迂回
走行中のF1マシンの気流は、フロンウイングによって高く跳ね上げられる(白矢印)。それに逆らうかのように空力エンジニアは、サイドポッド下部からマシンリヤへの十分な気流確保に腐心する。その際に重要な役割を果たすのが、フロントサスペンションの形状と取り付け位置である。21世紀のF1マシンにおいてサスペンションは、空気をきれいに流すのに欠かせない空力パーツでもあるのだ(黄色矢印)。そしてもうひとつ、車体両脇に付けられたターニングベインやバージボードも、大きな役割を果たしている(青矢印)。
(3)ミラーにも穴が!
ユニークなのは、バックミラーにも穴が開いていることだ。内部にはミニウイングが装着され、気流は上下に分割されて後方へ。サイドポッド上部に開いた開口部へ導かれていく(青矢印)。ということはこの気流は主に、冷却用ということだ。ここまで複雑な構造にこだわったのは、サイドポッドのメイン開口部の面積をできるだけ小さくしたかったからだろう。