1周目の混乱を上手く縫って11番手に浮上したガスリーだったが、混雑の中で軽い接触もありパンクの不安もあった。しかし幸いにして事なきを得た。
GAS「タイヤをチェックしてくれ、タイヤだ!」
セーフティカーを挟んでレースが再開されると、一時はルノーの1台をかわして7番手にまで浮上してみせた。本来のパフォーマンスさえ発揮できていれば、前に追い付くことは難しくとも抑え切ることはできそうだった。
しかしストレートでスピードが伸びずあっという間に次々に交わされて12番手まで後退。14番手にいたハートレーも、セルジオ・ペレス、フェルナンド・アロンソ、マーカス・エリクソンと次々と抜かれていった。
HAR「GPSにトラブルを抱えていると思う。DRSとエネルギーマネジメントの関係が完全にムチャクチャだ!」
ハートレーはGPSデータの誤作動によってマシンがどこを走っているか判別できなくなり、ERSをどこで充電しどこでデプロイメントを効かせるかというエネルギーマネジメントがおかしくなったと感じていた。しかしそれはGPSデータの問題ではなく、エネルギーマネジメントの配分セッティングそのものが間違っていたのだ。
DRSゾーンで常にDRSが使える予選とは異なり、決勝では前走車の1秒以内にいなければ使うことができない。そしてドライバーはバトルの中でデプロイを切らしたくない場面ではオーバーテイクボタンを押してエネルギーを使う。
しかし予選とは違い決勝では1周あたり2MJしかバッテリーからの放出はできない。こうした様々なシチュエーションの想定が不充分で、充電と放出のバランスが狂ってしまったのだ。
予選で1周あたり4MJの放出とDRSを使えばフェラーリやウイリアムズと同等のスピードが出せる力があったトロロッソだが、決勝ではこうした理由からドライバーがGPSのトラブルを疑うほどストレートで苦戦を強いられ続けた。
最後はガスリーが再びマグヌッセンと交錯してポイント獲得のチャンスを失い、ハートレーは僅か0.482秒差でエリクソンを抑え切って辛くも10位で初入賞を果たしたが、2人に笑顔はなかった。その事実がバクーの決勝レースでの厳しさを物語っていた。