2021年F1第5戦モナコGPで各チームが走らせたマシンを、F1i.comの技術分野を担当するニコラス・カルペンティエルが観察、印象に残った変更等について解説する。第1回では、レッドブルがテストしたフロントウイングを取り上げる。
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超低速コースのモナコでは、ドラッグが大きいことはほとんどハンデキャップにはならない。なのですべてのチームが、ウイングを目一杯立てた仕様でレースに臨んだ。今回速さを発揮したレッドブル、フェラーリも、もちろん例外ではなかった。ダウンフォースが増大することでタイヤに熱が入りやすくなり、市街地舗装の滑りやすい路面でもグリップが確保できるメリットもある。しかしメルセデスは予選でもレースでも、タイヤの熱入れに手こずり続けた。前戦スペインGPと逆の現象が起きたわけである。
モナコ開催前から、レッドブル・ホンダは優勝候補の大本命と目されていた。とはいえメルセデスの底力が侮れないことも、彼らは十分承知していた。そこで初日木曜日には、新たな仕様のフロントウイングをテストした。緑色の縁取り部分を注意深く見てもらえば、メインプレートの跳ね上げが強くなっていることがわかると思う。その結果、翼端板への取り付け位置も、より高くなった(青色矢印参照)。
それに伴って2本の支柱が、上部プレートに加えられた(黄色矢印参照)。さらに一番上のプレートの跳ね上げも、強くなっている(白色矢印参照)。
2019年に新たな空力レギュレーションが導入されて以降、各チームのフロントウイングは、フェラーリに代表されるアウトウォッシュ型とレッドブルの従来型に近いコンセプト、およびその中間型に分かれてきた。ウイングの両端が下がり気味の前者は、フロントタイヤの起こす乱流を外側に跳ね飛ばすことを意図し、逆に跳ね上がっている後者は、タイヤの上方に乱流を流すようになっている。
メルセデスも当初は従来型を採用していたが、少しずつアウトウォッシュ型の方へと考え方を変えていった。フラップの端が高い位置を維持するコンセプトを持つマシンは、今や、ハイレーキで強大なダウンフォースを発生するレッドブルのみとなった。
(その2に続く)