2021年F1第15戦ロシアGPで各チームが走らせたマシンを、F1i.comの技術分野を担当するニコラス・カルペンティエルが観察、印象に残った点について解説する。今回は、ロシアGP直前にホンダが改良について明らかにしたパワーユニット(PU)のエナジーストアを取り上げる。
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ロシアGPを前に、ホンダは、ベルギーGPでのマックス・フェルスタッペンを皮切りに、新たなエナジーストアシステムを順次投入していることを明らかにした。より軽量で、高効率化に成功した新エナジーストアの開発、実用化に、ホンダは数年を要したという。
「今までもアップデートはしていましたが、コア技術は2015年から同じでした」と、田辺豊治テクニカルディレクターは語る。
「この分野の知見がパワーユニット開発部門には十分になく、かなり手こずりました。そのため市販車のバッテリー開発部門の協力も得て、今回投入に漕ぎ着けました」
当初、2022年投入を目指して開発を続けてきたホンダ技術陣だったが、今季いっぱいでF1活動を終了することもあって、1年前倒しするべくさらなる努力を重ねてきた。高効率化によって、ライバルとの差をさらに詰め、軽量化は車体側のパフォーマンス向上にも貢献しているとのことだ。
エナジーストアの基本的な役割は、MGU-K(運動エネルギー回生システム)とMGU-H(熱エネルギー回生システム)が生み出した電気エネルギーを蓄えることだ。ここで改めてバッテリーとエネルギー回生システムの役割について、簡単におさらいしてみよう。
技術規約附則3のパワーユニットエネルギーフロー図にあるように、バッテリーからMGU-Kには1周あたり最大4MJの電気エネルギーを送ることができる(120kWの最大出力の場合、約33秒間持続する電気エネルギーとなる)。ただしバッテリーがMGU-Kから受け取れる回生エネルギーは、1周あたり最大2MJとなっている。
一方、MGU-Hは回生、出力の双方向で無制限、かつバッテリーを介さずにMGU-Kに回生エネルギーを送ることができる。このふたつの回生システムを巧みに組み合わせて、サーキット特性に最も合った電気エネルギーを使うのが、いわゆるエネルギーマネージメントというわけだ。