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F1 ニュース

投稿日: 2022.03.09 14:57
更新日: 2022.03.16 16:22

F1技術エキスパートによる新車評価(2)規定を味方に中団以下が開発で先行。レッドブルも注目するアルファタウリ

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F1 | F1技術エキスパートによる新車評価(2)規定を味方に中団以下が開発で先行。レッドブルも注目するアルファタウリ

 スペイン・バルセロナにおいて2022年初のF1テストが行われ、全10チームが新世代マシンを走らせた。まだまだ実際のパフォーマンスは見えてこないが、formula1.comでの解説でもお馴染みのF1ジャーナリスト、サム・コリンズ氏に各マシンの第一印象、また2022年F1マシン自体の評価を語ってもらった(全3回)。

 第1回はトップチームのフェラーリ、メルセデス、レッドブルのマシンについての分析、今回の第2回ではそれ以外の7チームのマシンを見ていく。

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 2022年は、ルールブックが抜本的に変更されると同時に、風洞テストの制限やコストキャップの影響がダイレクトに表れ、昨年とは全く違うシーズンになりそうだ。現在の規則では、前年のコンストラクターズ選手権で下位に終わったチームは、より多くの空力テストを行うことが許され、上位チームはテストの機会を大幅に減らされる。その影響が、バルセロナF1テストに登場した各チームのニューマシンに表れているようだ。

■アルファタウリAT03:レッドブルに追従せず独自の方向性を選ぶ

2022年F1バルセロナテスト1日目 角田裕毅(アルファタウリ)
2022年F1バルセロナテスト1日目 角田裕毅(アルファタウリ)

 トップ3以外の7チームのなかで特に目立つのは、“ホンダ製”パワーユニット(PU)を搭載するアルファタウリAT03だ。ノーズのデザインから1990年型ティレル019を想起するという人もいる。当時ティレルは初めてハイノーズを採用、偶然にもアルファタウリと似たネイビーとホワイトのカラーリングを使用していた。

 AT03は、フロントウイングのメインエレメントがフロントインパクトストラクチャーの高めの位置にあるため、フロントインパクトストラクチャーの高さは他のマシンと同じであるにもかかわらず、ノーズが上がっているように見えるという、ユニークなデザインとなっている。アルファタウリは、このコンセプトは最終的なものではなく、最初の数レースで競争力が見られなければ、別のデザインを採用する可能性があると言っている。

2022年F1バルセロナテスト ピエール・ガスリー(アルファタウリAT03)
2022年F1バルセロナテスト ピエール・ガスリー(アルファタウリAT03)
2022年F1バルセロナテスト アルファタウリAT03
2022年F1バルセロナテスト アルファタウリAT03

 2022年型マシンのデザインにおいては、チームによってさまざまな技術的方向性が見られる。そのため、そういった大幅な変更はあり得るし、逆に他のチームがアルファタウリのコンセプトに移行する可能性もあるだろう。

 アルファタウリが、兄弟チームであるレッドブルが採用したプルロッド式フロントサスペンションをあえて選ばなかったのも興味深い。アルファタウリがプッシュロッド式フロントサスペンションレイアウトを維持したのは、明らかに空力的な理由での選択である。ちなみにアルファタウリには、レッドブルよりもはるかに多くの空力開発時間を割り当てられていた。彼らのアプローチは、レッドブル・レーシングにとっても気になるところかもしれない。

 レッドブル・パワートレインズが引き継いだホンダのパワーユニットも興味深い。RA621Hにどのような改良が加えられたのか、詳細はまだ明らかになっていない。“RA622H”と呼ばれるはずだったこのパワーユニットは、実際にはホンダが設計し、製造し、運用を行うが、レッドブル・パワートレインズを示すイニシャルで始まるRBPTH001と名付けられた。しかしパドックのうわさでは、部品番号はレッドブルでなくホンダを示すイニシャルで始まっているといわれている。

■マクラーレンMCL36:唯一ポーパシングに悩まされなかった謎の存在

2022年F1バルセロナテスト1日目 ランド・ノリス(マクラーレン)
2022年F1バルセロナテスト1日目 ランド・ノリス(マクラーレン)

 レッドブル以外でプルロッド式フロントサスペンションを採用したのはマクラーレンだけだ。彼らのマシンはライバルチームたちにとって、謎の存在となっている。マクラーレンは唯一、ポーパシング現象に悩まされず、その上、非常に速そうだ。高速になるとたわむと言われるフロアエッジのソリューションがカギだと言われ、注目が集まっているが、実際そうだという証拠はほとんどない。

2022年F1バルセロナテスト ダニエル・リカルド(マクラーレンMCL36)
2022年F1バルセロナテスト ダニエル・リカルド(マクラーレンMCL36)
2022年F1バルセロナテスト ランド・ノリス(マクラーレン)
2022年F1バルセロナテスト ランド・ノリス(マクラーレン)

 マクラーレンは、ミッドフロア・エレメントを極めて効果的に利用し、アンダーボディの端を、渦を使ってまるで見えないスカートを装着しているようにして塞ぐという手法を取っている。これが大きな効果を発揮するのであれば、極めて強力なデザインといっていいだろう。

■アストンマーティンAMR22:独特な“ツインフロア”コンセプトを採用

2022年F1バルセロナテスト2日目 セバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)
2022年F1バルセロナテスト2日目 セバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)

 マクラーレンと同じメルセデス製パワーユニットを搭載するアストンマーティンだが、マシンの違いは顕著で、2台は完全に異なるコンセプトのもとで作られた。アストンマーティンは、サイドポッドを非常に高い位置に置き、その下に大きなアンダーカットが施されている、ほぼ“ツインフロア”のレイアウトを採用した。

2022年F1バルセロナテスト セバスチャン・ベッテル(アストンマーティンAMR22)
2022年F1バルセロナテスト セバスチャン・ベッテル(アストンマーティンAMR22)

 バルセロナでのアストンマーティンは、ポーパシングにひどく悩まされ、セットアップでも苦労したことが妨げになっていた。そのため、AMR22の真のパフォーマンスを判断するのは、現時点では難しい。

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