しかし、琢磨は高い戦闘力を発揮、最初のフリープラクティスで4番手となる。続く2回目のセッションでは14番手になったものの、まったく心配はしていなかった。「セッション開始直後はトップ3に入っていて、マシーンも好調。4番手という結果にも勇気づけられました。2回目のセッションでもセッティングを煮詰めていきましたが、途中で赤旗が提示されます。当初はセッションの最後にニュータイアを装着する予定でしたが、複数の赤旗の影響でテストメニューの一部を割愛し、比較テストを行うために使い古した1セットのタイアを履き続けました。僕たちにスピードがあることは、このときすでにわかっていました」

 ところが、土曜日のプラクティスを迎えると状況は悪化し始めてしまう。琢磨は当初トップ5に食い込んでいたが、「やがてマシーンのバランスに問題が生じ始め、十分なグリップが得られなくなりました。ラップタイムは一向に速くならず、タイアのドロップオフが限界ではないかと僕たちは疑いました。そこでニュータイアを装着してベースラインを取り直そうとしましたが、驚いたことに古いタイアと大して変わらないタイムしかマークできません。何が原因か、まるでわかりませんでした。しかも、このコースの路面は場所によって様々なため、攻めすぎるとタイムが伸び悩み、それ以上、速く走れなくなってしまうのです」

「僕たちは手持ちのリソースを使い果たしてしまったので、予選にはおそらくこれがいいだろうと思われるセッティングで臨みました。けれども、これでもうまくいきません。アンダーステアがひどいうえに、スナップ・オーバーも頻繁に顔を出します。まったく出口が見えない状態で、あれほど好調だったデイ1の次にこんな日がやってきたことが信じられないほどでした」

 予選を20位で終えた琢磨のマシーンには、なんらかの作業を行う必要があった。チームはフロントウィングがストールして十分なダウンフォースを発生していない可能性を見いだす。つまり、メカニカルなセッティングとエアロのセッティングがマッチしていなかったのだ。さらに、ダンパーのひとつにもトラブルがあったことが判明。そして直観に頼ることなく、最初のセッティングに戻すことを決断する。通常、アンダーステアを解消するには、フロントのスプリングを軟らかくしてバランスをリア寄りにするものだが、今回実施されたのは、フロントを固めてより大きなエネルギーを生み出すというもの。バンプが多いトロントでは、このセットアップが効果的なのだ。

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