レース界屈指のゆる~いお笑いブログを提供してくれる谷口信輝。彼のブログに度々出てくる便器ネタが高じて、小学生に「う●こ集めてんの?」といわれてしまう。そんな彼は以前は和式派だったが、現在はすっかり洋式派に変貌している。
あ、これトイレの話ではありません。ドラテクの話です。実はオートスポーツの次号(2月1日発売号)でドラテク特集を予定しております。特集の中で、谷口ドラテクもしっかり取材させていただきました。まあ、その「番宣」です、はい。
で、その発売前に以前オートスポーツで掲載したネタを改めてここに公開いたします。和式と洋式の違いの話です。もう一度いいますが、トイレの話ではありません。
ではどうぞ。
>>次ページ 先輩・和田と後輩・洋平の会話がスタート!
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洋平:あれ、先輩、何考えこんでるんスか? まさか緊張してるとか?
和田:ばーか。オレはもうサーキット10回以上走ってんだよ。なわけねーだろ。お前こそさっきからトイレ何回行ってんだよ。
洋平:あ、ばれました? やっぱ初めてのサーキットって緊張しますね。
和田:朝から何回行った?
洋平:4回!(笑)
和田:すり切れそうだな。
洋平:先輩は何考えてるんスか?
和田:ん、いや(コーナリング方法の)欧米式と日本式でちょっとな。
洋平:ずいぶんしゃれた言い方しますね。普通に和式洋式でいいじゃないですか(便器は)。
和田:知ってんの?
洋平:そりゃ知ってますよ。和式は最近だいぶ少なくなってきましたよね。
和田:えらそうに。
洋平:へ?
和田:初心者のお前のレベルじゃ白煙すら上がらないだろ。
洋平:ハクエン? 煙が出るんですか?
和田:そうよ。もっと上達すると出なくなる。
洋平:マジッすか? すげー!
和田:最初の頃はロックすらできないことが多いんだ。
洋平:急いでいる時はありますね。
和田:そのうち考えることはどこまでがまんできるかってこと。
洋平:がまんする必要あるんですか?
和田:ぎりぎりまでがまんしてがまんして「もう無理」って思った瞬間にバンッ!
洋平:勢いで体が浮きそうですね。
和田:浮くことはないけど、スリル満点。
洋平:満点だわ、たしかに。
和田:前に誰かいるとなおさら。
洋平:分かる分かる!
和田:パニックになる時もある。
洋平:あるある!
和田:手遅れで出ちゃったり。
洋平:あるあるある!!
和田:昔は足の力もなくてな。
洋平:まあ、踏ん張りますもんね。
和田:「女の子並み」なんて言われたもんよ。
洋平:え、見られたんスか?
和田:当たり前じゃん。うまい人に見てもらうんだよ。
洋平:それはちょっと恥ずかしいかも……。
和田:あとビデオで撮ったり。
洋平:ビデオ! そんな趣味ないわー!
和田:今は常識。
洋平:いや~、ないわー! 絶対ないわー! オレ、ノーマルだしー。
和田:昔は和式が主流でな。
洋平:そりゃそうでしょうね。それしかなかったんだから。
和田:必ず残してた。
洋平:は?
和田:たっぷり残してた。
洋平:マジッすか? 流せ~!
和田:もちろん流す。でも流しすぎないのがポイントだ。
洋平:普通、全部流すでしょ~!
和田:流しすぎると速くない。
洋平:そこまでして早く出ることないでしょ。
和田:和式はお尻が浮いてる感じで不安定だろ? それを利用して流すんだ。
洋平:は?
和田:洋式はお尻が着いているから、比較的安定してる。
洋平:まあ、どっしりした感じっスね。
和田:だから流す量もちょっとずつって感じ。
洋平:は? 和式も洋式も同じように全部流しますって。
和田:ウソつけ。テクのないお前が流せるわけないだろ。
洋平:レバーを引けば一気に流れますって!
和田:サイドを使うな。
>>次ページ 和式、洋式の違いって?
和田:お前の勘違いで丸々1ページも無駄話をしてしまった。
洋平:オレのせいっスか?
和田:そうだ。ということで「和式洋式=便器」しかないお前の脳みそに、もうひとつ別の和式洋式を教えてやろう。
洋平:ありがとうございます。コーナリングの種類なんですよね?
和田:そうだ。とりあえず四つん這いになってみ? ひざは着かなくていい。足の裏と手のひらで地面に立つんだ。
洋平:はい?
和田:なに恥ずかしがってんだよ。早く!
洋平:こ、こうですか?
和田:そう。そのまま重心を前にかけてみ。
洋平:げ……。アスファルトの小石が手に食い込んで痛い。
和田:そうだ。これがブレーキング、それも全制動の姿勢だ。手がフロントタイヤ、足がリヤタイヤのイメージな。
洋平:はい。
和田:今フロントタイヤに荷重がかかっている。逆にリヤ荷重は抜け気味だ。その状態から今度はターンイン開始。右コーナーに入っていく場合は、遠心力がかかって左手に一番重心がかかる。
洋平:そりゃ無理っス。すでに両手が限界なんですから、その状態でさらに左手に重心を移すなんて絶対無理!
和田:だよな。だから少し重心を後ろに戻そう。これはつまりブレーキ踏力をほんの少し弱めた状態だ。
洋平:ちょっと楽になりました。
和田:うむ。で、左手に重心を移す。
洋平:左手がピクピクしてます!
和田:だな。その時って、足は横にずらしやすいか?
洋平:ま、まあ、そうっスね。かなり前のめりですから。
和田:そう、これが和式だ。極端な表現でいえばフロントを支点にしてリヤ、つまり足を左側にずらして体の向きを変えるって感じだ。ストレートエンドの全制動からクリップまでの姿勢変化はこんな感じになるのが和式。
洋平:わ、分かりました。もういいですか?
和田:よしいいだろう。どうだった?
洋平:左手がハンパねっス。プルプルしてます。
和田:だろ? つまりフロントアウト側のタイヤがぎゅーっと路面に押しつけられて酷使する走り方なんだ。これ何回もやるとなったら大変だろ?
洋平:いやですね。手のひらがズルむけになりそうです。
和田:そこで洋式。はいもう一回四つん這い。
洋平:またですか……。
和田:まずフルブレーキングの格好。さっきと同じように両手に重心がかかる。
洋平:は、い。つらいっス。
和田:洋式が和式と違うポイントは次のターンインから。和式はここでブレーキを残したまま入って行くが、洋式はアクセルペダルに足を移してハンドルを切る。つまり重心が真ん中に戻った状態でアウト側に荷重がかかる。
洋平:ああ、楽ですね。
和田:だろ? タイヤはフロントもリヤも同じように仕事させるって感じかな。
洋平:なるほど~。
和田:洋式はもともとクルマを曲がりやすいセットにしておき、ステア操作やアクセルワークで向きを変えていくんだ。前荷重にしすぎるとオーバーになるから荷重配分は気をつける。和式はその逆で、ブレーキングで前荷重にしてリヤが浮き気味の不安定な状況を利用して曲げていく感じ。分かった?
洋平:分かりました! 和式がブレーキで洋式がアクセルなんスよね!
和田:ま、まあ乱暴にいえばそんな感じだが。
洋平:なんかオレ、行けそうな気がしまっす! がまんしてがまんしてバーン! スリル満点のバーンいきますよー!
和田:なんか危険なテンションだな。
洋平:その前にUK行って来ます!
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洋式と和式、その違いは分かりましたか? 実は、このスタイルの違いが、昨今のモータースポーツ界で大きな明暗となっている(かもしれない)、というのがauto sport編集部の仮説です。2月1日発売号の特集「スポーツドライビング」では、ジェンソン・バトンやキミ・ライコネンといったF1ドライバーたちが受けているという“市販車でサーキットを走るレッスン”から、あなたも気軽に自家用車で実践できるドライビング術まで、イギリス現地取材を交えてお伝えしますので、お楽しみに。