2015年10月24日に北京で開幕した、フォーミュラEの第2シーズン。ここまでに既に3レースが行われ、ルノー・e.ダムスのセバスチャン・ブエミと、アプト・シェフラー・アウディ・スポートのルーカス・ディ・グラッシが、勝利を分け合う展開となっている。

 開幕戦を制したのは、ブエミだった。ブエミはフリー走行~予選で速さを見せ、決勝レースも完勝。1レースで獲ることができる最大の30ポイント(優勝25P+ポールポジション3P+ファステストラップ2P)を獲得した。続く第2戦プトラジャヤePrixも、フリー走行からブエミが速さを見せる。予選でも当然のようにポールポジションを獲得すると、レースでも後続を引き離す展開……しかし、折からの高い気温によりバッテリーがオーバーヒートを起こしてスローダウン。2番手を走っていたディ・グラッシが勝利をモノにした。第3戦は南米ウルグアイのプンタ・デル・エステ。ここでもやはり速さを見せたのはブエミで、ポールポジションこそ逃したものの、優勝とファステストラップを獲得している。3戦2勝、2ポールポジションと3ファステストラップ……第2戦こそトラブルによって取りこぼしたが、ブエミはそれ以外はまさに非の打ち所の無い速さを発揮し、62ポイント獲得でランキングトップに立っている。

 そのブエミに唯一対抗しうるのは、ディ・グラッシである。フォーミュラEの初代ウイナー(第1シーズンの開幕戦で優勝)であるディ・グラッシは、開幕戦2位、第2戦は前述の通りブエミの脱落により優勝、第3戦も2位と、常に2位以内をキープ。3レースを終えた時点で、ランキングトップのブエミに1ポイント差と迫る61ポイントを獲得する活躍を見せている。ランキング3位のジェローム・ダンブロジオ(ドラゴン・レーシング)の獲得ポイント数は28点であり、3戦目にして早くもタイトル争いはブエミとディ・グラッシに絞られたと言っても過言ではないだろう。

 ブエミとディ・グラッシは、第1シーズンでもトップグループを争っていたふたり。しかし今季は、その速さと安定性に、さらに磨きがかかったように感じられる。事実、ブエミのチームメイトであるニコラス・プロストはランキング10位(獲得ポイント11)、ディ・グラッシのチームメイトであるダニエル・アプトはランキング12位(獲得ポイント10)に沈んでおり、その適応力の差をまざまざと見せつけている。

 ふたりのドライバーの能力もさることながら、彼らの活躍にはそれぞれのチームの力も大きく寄与しているのは間違いない。ルノー、アウディという一流自動車メーカーのバックアップを受けているこれら2チームは、エネルギーのマネジメントにおけるシミュレーション技術に、第1シーズンから定評があった。そして、今季からパワートレイン(モーター・ジェネレータ・ユニット/MGU+インバータ+バッテリー)の開発が自由化されたことにより、さらに一歩抜け出した感がある。ここにも、それぞれのメーカーのリソースが、多分に活かされているはずだ。

 第1シーズンのマシンはワンメイクだったが、徐々に開発が自由化されることで、多くの自動車メーカーが、フォーミュラEへの関心と関与を強めている。前述のルノーとアウディはもちろん、プジョー/シトロエングループも、DSのブランド名を使い、ヴァージン・レーシングとの提携をスタート。マヒンドラもインドの自動車メーカーであるし、ベンチュリも近年は電気自動車の市販スポーツモデルを手がけている。さらにはネクストEV TCRも中国の新興電気自動車メーカーを母体とする。

 今後のフォーミュラEはメーカーのワークス待遇を受けることが、勝利への近道となっていくはずだ。しかも、メーカーの持つリソースが、非常に重要な役割を果たすことになる。その成功例が、今季のルノーとアウディであるわけだが、DSヴァージンはまだ良いとして、ベンチュリやマヒンドラ、そしてネクストEVは、パワートレインが自由化されたことによって逆に苦戦を強いられている。

 特にネクストEV TCRは、第1シーズンではネルソン・ピケJr.をチャンピオンに輝かせたが、今季は大苦戦。ピケJr.は3戦を終了しても、まだ4ポイントしか獲得できていない(チームメイトのオリバー・ターベイも、開幕戦で入賞ししたのみ)。さらに厳しい境遇に置かれてしまったのが、トゥルーリである。同チームはモトマチカ製のパワートレインを採用して第2シーズンに臨んだが、オフシーズンテストでほとんど走ることができず、シーズンが開幕しても2戦連続で欠場……第3戦を前にシリーズからの撤退を余儀なくされている。

 それ以外の生きる道を選んだチームもある。アンドレッティとチーム・アグリは、新開発のパワートレインを採用せず、昨年仕様のパワートレインを継続使用。第1シーズンを戦い切った信頼性を武器に、今季初参戦のロビン・フラインス(アンドレッティ)が第2戦で3位、開幕戦こそリタイアに終わったが続く2戦でアントニオ・フェリックス・ダ・コスタ(チーム・アグリ)が6位に入るなど、着実にポイントを加算している。一方、ドラゴン・レーシングは、ベンチュリ製のパワートレインを採用。こちらは、大元であるベンチュリを差し置いて、第3戦でフロントロウを独占するなど競争力を発揮し、チームランキングでも3位につけている。

 今季のフォーミュラEは、F1やWEC(世界耐久選手権)同様、いやそれ以上に、チーム間の格差が生じ始めていると言うことができそうだ。そんなシリーズに、来季からはジャガーがウイリアムズ・アドバンスト・エンジニアリングと組んで参戦することを発表している。同社はジャガー・ランドローバーとしてすでに市販電気自動車の開発に着手。このリソースが、フォーミュラEに存分に活かされることになるはずだ。それ以外にも、チームとしての参戦はまだだが、BMWはセーフティカーとマーシャルカーを拠出してフォーミュラEに関与し続けているし、その他にも複数のメーカーがフォーミュラEに興味を示していると言われている。フォーミュラEは近い将来、最も激しいワークス争いがシリーズに発展するかもしれない。

 将来的にも広がりを感じさせるフォーミュラE。しかし、まずは目の前の今シーズン、ブエミvsディ・グラッシ、そしてルノー・e.ダムスvsアプト・シェフラー・アウディ・スポートのチャンピオン争いが気になるところだ。速さの面ではブエミ+ルノー・e.ダムスが一歩先を行くが、信頼性や安定性といった面では、ディ・グラッシ+アプト・シェフラー・アウディ・スポートに分がありそう。このふたり/2チームの頂上決戦という形になることが濃厚だが、そこに割って入る他のドライバーやチームは無いのだろうか……。残りは8戦。第4戦アルゼンチン・ブエノスアイレスePrixは2月6日に行われる。

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