「なんで後ろに1号車(MOTUL AUTECH GT-R)が?」と38号車、ZENT CERUMO RC Fの石浦宏明が驚けば、MOTULのロニー・クインタレッリも「ピットアウトしたら36号車(PETRONAS TOM'S RC F)がいて、ストレートではその先に38号車が見えて驚いた」と話すように、今回のGT500ではピットストップが大きなターニングポイントとなった。
26周目に8番手だったMOTULは、10周後の36周目には3番手に順位を上げたわけだが、そのピット時間の比較を計測タイムを元に計算してみた。
#38 ZENT CERUMO RC F
L30 1分43秒161
L31 2分52秒841(ピットイン)
#8 ARTA NSX CONCEPT-GT
L31 1分42秒190
L32 3分01秒860(ピットイン)
#1 MOTUL AUTECH GT-R
L31 1分39秒846
L32 2分46秒956(ピットイン)
ピットタイミングで時間を稼ぐには、ピット作業自体のスピードだけでなくインラップ、アウトラップでのドライバーの頑張りも必要だ。今回の上位3チームのインラップ、そしてピットインを含めたアウトラップのタイムをトータルしてみたところ、MOTULに対してZENTが約9秒、ARTAは約17秒、時間が掛かっていることが分かった。
もちろん、これはピットストップの純粋なタイム差ではない。たとえばZENTの立川は30周目にピットに入る予定だったところ、ピットロードに入るストレート上でGT300マシンに引っかかる形になり、立川はピットインを急きょ1周延長。そこで「数秒、ロスしてしまった」と振り返っているように、インラップでMOTULより約3秒時間が掛かっている。
それに、ドライバーやメカニックだけではどうしようもないのが給油時間だ。ピット停止時間には燃費の影響も大きく、それによって給油時間が大きく左右される。その燃費の面でもGT-Rが優れているという声も聞く。
いずれにしても、そのすべてを含めてトータルで競うのがピット勝負。ニッサン陣営はクルマのパフォーマンスだけでなく、チームを含めての総合力でレースでの強さを印象付けたが、次の鈴鹿1000kmは4回、または5回のピット作業が予想されている。ピットでのこのタイムをコース上で稼ぐのは至難の業だけに、なんとかライバル陣営には奮闘してもらいたいが……。