スーパーGT第2戦富士で、2010年以来トップカテゴリーへの復帰を果たしたOGT Bonds Racing GT-Rの井出有治。急遽第2戦から参戦が決まり、ひさびさのレースだったが、戸惑うことなく戦い快走。チームの上位進出に大きく貢献することになった。
2010年にARTA HSV-010でGT500クラスを戦って以来、スーパーGTの世界からは遠ざかっていた井出。かつてはフォーミュラ・ニッポンやGTで大活躍をみせ、F1にも参戦した井出は、2011年からさまざまな活動を模索していたものの、その後レーシングカーのシートにはなかなか戻ることはなかった。
そんな中、今季GT300クラスに活動の場を移したBonds Racingが、急遽第2戦から井出の起用を決定。イゴール・スシュコと組みニッサンGT-RニスモGT3をドライブすることになった。迎えた土曜の予選では、Q1でスシュコが力を出し切れない状況になってしまい、井出の出番はなし。25番手からスタートを切ることになった。
しかし、その状況下でも、井出のもとには多くのファンや関係者が訪れた。「予選日からたくさんの方に『おかえり』と言ってもらえました。3年間まったくレースをしていなかったので、デビューレースみたいな気持ちでしたね(笑)」と井出。
Bonds Racingでは、3スティントの決勝レースを井出〜スシュコ〜井出と繋ぐことを決め、スタートは井出が担当。「クルマはセッションを追うごとに、チームがどんどん良くしてくれた」という井出は、「自分がどんなレースができるんだろう」と思っていたんですが、昔とまったく変わってませんでしたね(笑)」とリラックス。好調なマシンを駆り1周目に一気に4台をかわすと、着実にポジションを上げていく。
しかし11周目、10番手までポジションを上げた井出の前方に現れたのは、赤いZENT Audi R8 LMS ultraだった。井出は無線で「前に乗っているの誰?」とチームに聞く。井出の予想どおり、アウディをドライブしていたのは、2004年〜05年とフォーミュラ・ニッポンで、井出と激しいタイトル争いを展開したリチャード・ライアンだ。
「キツいな……。簡単には抜かせてもらえないんだろうな」と考えた井出だったが、5周のバトルの末、ライアンをかわすことに成功する。「リチャードはかなり“オトナ”になってましたね。昔、GTやFニッポンでやっていた時よりもかなり紳士的な感じで(笑)、バトルを楽しめました」とレース後井出は述懐する。
最終的に25番手スタートから5番手までポジションを上げた井出は、34周までステアリングを握りスシュコに交代。好調なマシンを譲り受けたスシュコも素晴らしいペースで走行を続け、再び井出に交代。GT300クラスにスイッチしてから2戦目となるBonds Racingに、5位という素晴らしい結果をもたらした。
「とりあえず皆が喜んでくれるレースができたみたいなので、それが良かったですね」とレース後語った井出。
「Bonds Racing代表の橋本(祥之)さんも、僕が初めてGT500デビューをしたレースでマネージャーをやっていた人ですし、スタッフもみんな知っているメンバーなんです。経験があるメンバーと普通に始めることができたから、なんの心配もなかったです」
レース後、井出はピットが近かったライアンと、トイレで遭遇。「お前のGT-RはGT500みたいな速さだったな」とライアンに声をかけられた井出は、こう言葉を返したという。
「またリチャードとバトルができて、幸せだったよ」