6日、2014年の開幕戦が行われたスーパーGT。心配された新規定GT500車両のトラブルも決勝ではかなり少なくなり、これまでよりも高いスピードでのレースを楽しんだファンも多かったはず。そんな今季のスーパーGTだが、ピットやパドックでも、これまでとは異なる変化が生まれている。

■新GT500車両導入のもうひとつの狙い
 スーパーGTは今季、GT500クラスはDTMドイツツーリングカー選手権と車両規定を統一。レクサス、ホンダ、ニッサンの3メーカーが新たな車両を導入した。この新規定車両は、モノコックをはじめ多くのパーツを共通化することによりコストダウンを実現し、ワールドワイドに車両を使用できるようにしようというものだが、この規定を導入した際に、GTアソシエイションの坂東正明代表が語ったのが以下のコメントだった。

「モータースポーツ発祥の地であるヨーロッパでは、そこに参画する自動車メーカーがレースを自社製品のマーケティング、プロモーションのツールとして活用している。(DTMの運営団体)ITRとのコラボレーションによって、日本のメーカー各社がこのヨーロッパ方式を一層強く意識し、それを実行できる体制を作られることをGTAは期待している」

 今回、GT500クラスが車両規定を統一したDTMでは、毎戦スーパーGTを大きく上回る数のファンがサーキットを訪れる。そのファンがパドック等サーキットを歩けば、参戦する3メーカーのブランドイメージを強く出したホスピタリティや、ピタリと並べられたトランスポーターを見ることができるほか、ピットのパーティションや周辺の装備、メカニックのウェアに至るまで、すべてが自動車メーカーのブランドイメージを反映したものになっている。

 アウディ、BMW、メルセデスベンツの3メーカーの参戦車両もさまざまなスポンサーカラーに彩られてはいるが、基本のカラーリングパターンはメーカー内で同一のパターンを採用。訪れたファンはサーキットで巧みに演出されたブランドイメージと、サーキット内に展示してあるメーカーの市販車をリンクさせ、レースを楽しみ帰っていく。

■スーパーGTとDTMの違い
 GTアソシエイションが狙うサーキットの理想の雰囲気は、まさにDTMが実現していると言っていい。常々坂東代表は「サーキットを自動車メーカーのプロモーションの場に」と訴えてきており、今回の新GT500車両の導入も、コストダウンで浮いたメーカーの開発費を、プロモーションに充てて欲しいという願いがあったからだった。

 もちろん、スーパーGTが築いてきた歴史はDTMとは大きく異なることも勘案しなければならない。1994年にスタートしたスーパーGTの前身JGTC全日本GT選手権は、メーカーワークス戦争による費用高騰でシリーズが消滅したグループCやJTCCの教訓を踏まえたシリーズであり、あくまでメーカーは参戦チームの後方支援に徹し、レースを戦うための設備はチームが用意してきた。近年ではメーカーがスーパーGTの参戦車両作りに強く関与するようになっていたが、このシステム自体は大きく変わってはいなかった。

 そして迎えた2014年スーパーGT第1戦岡山。DTMとの共通規定による初のレースとなったが、そのレースではGT500クラスの参戦メーカーが、統一したブランドイメージを出すべくさまざまな試みを実施していた。これは今までのスーパーGTではあまりなかったことで、ある意味GT500クラスは参戦車両とともに、新時代を迎えたと言っていいだろう。決してレース中継や新聞、雑誌で大きく取り上げられる部分ではないが、各メーカーの試みをご紹介したい。

■ブランドイメージ競争はレクサスが一歩リード!?
 まず、最も大きくブランドイメージを打ち出してきたのが、開幕戦勝者KeePer TOM'S RC Fを含むレクサス勢だ。今季、参戦車両は2014年後半に市販車がリリースされるRC Fとなったが、昨年のお披露目時は車名も定まってもいなかった。しかし、年明けの東京オートサロン以降ホワイトとブラックのブランドカラーを打ち出し、『LEXUS Racing』の名の下、スポーツブランドである『F』とともに、そのロゴ、ブランドカラーを強く打ち出してきた。

 そのブランドイメージが反映されたのは多岐に渡る。チームをバックアップするTRDのトランスポーターのカラーリングが変更され、TRDのスタッフが着る耐火スーツもブラックに。驚いたのが、チームのサインガードを6チームすべて統一。マシンカラーに合わせた色が塗られているが、形状はすべて統一された。さらにピット入口のボード、給油タワーに取り付けられたブーム先のプレートに至るまで、『LEXUS Racing F』のロゴが同じ位置につく。もちろん、車両のルーフなど、同位置にステッカーを施してきた。

 レクサスに関して言えば、グランドスタンド裏に巨大なステージが登場した。昨年までもファン向けのステージはあったが、今年は戦術の『LEXUS Racing F』のイメージカラーとなり、早朝からさまざまなイベントを開催。ステージ前を通りかかった人には、レクサスのフラッグが配られた。脇にはLFAをはじめ、レクサスのスポーティカーが並べられ、ある意味この開幕で最も良い意味で“DTM化”してきたのはレクサスだろう。

■ホンダ、ニッサンのブランドイメージ演出
 一方、ホンダはGT300クラスを含めて、「お客様の目につく部分」でホンダ車で統一したアイテムを導入した。それは、ピット入口に設けられる給油タワーと、それにつくブームだ。給油タワー自体はそれまでのものを流用しているのかもしれないが、タワーの周囲に美しいカバーを装着してきた。また、ブームもカーボン製の幾何学的な形状となり、こちらも“DTM的”。5台のNSXコンセプト-GTと2台のCR-Z GTがこの下に並ぶ様は、ピットレーンでも非常に目立っていた。残念ながら岡山ではMUGEN CR-Z GTの分だけが間に合わなかったそうだが、第2戦富士からはMUGEN CR-Z GTの給油タワーにもこのカバーが装着されるという。ホンダは、トランスポーターのカラーリング等も変更されている。

 ピット周辺は昨年までと変わらなかったものの、車両面で統一イメージを演出してきたのはニッサンだ。市販車では昨年、ニッサン自身が徹底的なチューンを施したスーパースポーツ『ニッサンGT-Rニスモ』を投入したが、この市販車にはグリルやサイドに、レッドのラインが施される。今季からGT500クラスに登場したニッサンGT-RニスモGT500は、そんな市販のGT-Rニスモの雰囲気を色濃く反映。グリルとサイドミラーに、市販車同様のレッドのラインが描かれた。

 レース同様、日本の3メーカーの間には「他所には負けたくない」というライバル意識があるはずだ。第1戦岡山で変化が見られた各メーカーのプロモーション作戦は、今後エスカレートしていくはず。もちろん、これはサーキットを訪れるファンとスーパーGTにとってはウエルカムな話。良い意味での“もうひとつの戦い”を期待したい。

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