今季のスーパーGT300クラスに、BMW Sports Trophy Team Studieから参戦することになった荒聖治。2004年にル・マン24時間を制し、長年GT500クラスで戦ってきた荒がこのチームに加わるきっかけとはなんだったのだろうか。
荒は1994年にフォルクスワーゲン・ゴルフ・ポカールレースで四輪デビュー。さまざまなカテゴリーを戦い、海外でも多くの勝利を獲得。2004年には、日本人ドライバーでふたりめとなるル・マン24時間総合優勝を飾った。
スーパーGTでもトヨタ/レクサス、ニッサンで戦い、すでに昨年の第7戦で参戦100戦を超えている。そんな荒にとって、BMW Sports Trophy Team Studieから参戦するGT300クラスでの戦いというのはまったく新たな挑戦となるはずだ。
「このBMWのチームで戦えるようになり、正直驚いています。感謝していますし、すごく嬉しいです。この素晴らしい体制の中で、BMWを知り尽くしている最高のチームメイト、ヨルグ・ミューラー選手と走れるということで、いろんなことを盗みたいと思いますね」と荒は発表会で語った。
「ドライビングだけでなく、クルマをどういうコンセプトで仕上げてくるのか、どういう考え方でクルマを作っていくのかを教えてもらおうと思います。ドライビングだけでなく、BMWももっと理解して、"BMWな男"になってみたいと思っています(笑)」
とは言え、100戦をGT500で戦ってきた荒にとって、GT300に戦いの場を移すことに迷いはなかったのだろうか。「もちろん今まで500にこだわってきた部分はある」と発表会後、荒は語ってくれた。
「いろんな選択肢がある中ですごく悩んだのは正直なところでしたけど、決めた理由としてはやはりこういう環境とチーム体制で、ワークスドライバーと一緒に走ることができるのが、僕として『挑戦してみたい』と思える部分でした」
冒頭にも述べたが、荒は他のドライバーと異なり、四輪デビューはハコ車のレースだ。このレースを運営していたのが、フォルクスワーゲンやアウディのチューニングを手がけるコックスであり、当時そのコックスに在籍していたのが、Team Studieの鈴木康昭代表。ふたりの出会いはその時代にさかのぼる。
「ホント、原点な感じなんですよね」と荒。
「見渡してみると、僕が四輪を始めた頃からの原点に戻るような人たちが支えてくれるんです。そういうチームなんです。スタッフもそうだし、鈴木代表もそうだし、すごく信頼しています」
「例えば、高根裕一郎チーフエンジニアは、僕がフォルクスワーゲンのワンメイクレースで四輪デビューした時に、担当メカだったんです。ふたりでチャンピオンを獲ったんですよ」
ちなみに、鈴木代表にとって今回の新チーム立ち上げの際の"ドライバー第一候補"が荒だったという。鈴木代表、荒、そして高根エンジニア。荒の四輪デビューは1994年だが、20年の時を経ての原点回帰であると同時に、まったく新しい挑戦が、BMW Sports Trophy Team StudieからのGT300挑戦というわけだ。
「10年前はトム・クリステンセンと組んでル・マン24時間を戦いましたが、10年後にまさかヨルグ・ミューラー選手と組んで、こういう素晴らしい環境で戦えるとは想像もしていなかったです。血が沸き上がるような感覚ですね」と荒は笑顔で語ってくれた。