レーシングドライバーの土屋武士が率いるレーシングガレージ、team SAMURAI。過去にJGTC/スーパーGTで多くの栄冠を獲得してきたつちやエンジニアリングを引き継ぐチームだが、代表を務める土屋は23日、サポーターたちが集まる『第1回サムライサポーターズ・ミーティング』を開催し、この場で2015年にスーパーGT300クラスに参戦する意志があると明らかにした。

 team SAMURAIは、『SAMURAI Team TSUCHIYA』として2010年〜11年にスーパーGT300クラスにポルシェ911 GT3 RSRで参戦。都筑晶裕と土屋のコンビで活躍していたが、12年以降、スーパーGTでは土屋のドライバーとしての活動に。チームはポルシェカレラカップやスーパー耐久等での活動を行っていた。

 昨今のスーパーGTは、つちやエンジニアリングが活躍していた頃と異なり、GT500クラスでは自動車メーカーのサポートがなければ参戦は厳しく、またGT300クラスでもFIA-GT3車両の増加でマシンバラエティやエントラントの増加にも繋がったものの、車両の性格から、いわゆるレーシングガレージがその技術力を活かして戦うという世界ではなくなってきている。しかし、そんなスーパーGTにteam SAMURAIは2015年に復帰すると土屋は宣言した。

「自分のドライバー人生の集大成として、3カ年計画を考えています。今年の活動の軸のひとつは、松井孝允を起用してのF4での活動。それと、まだ正式には決まっていないですけど、アジアン・ル・マンとマカオGTカップに昨年同様台湾のシリーズに出る計画を進めています」と土屋は"3カ年計画"の"1年目"を説明してくれた。

「そして、来年のスーパーGTに自チームで出る準備を昨年から進めています。今年はスーパーGTでの仕事は今のところないので、きちんとイメージをもって、来年、再来年とスーパーGTに出られるように準備をしていこうと思っています」

「もちろん、ゼッケンは25。理想を言えば、ブラックとレッドのアドバンカラーですけど(笑)」

●目指すは"最強プライベーター"の復活
 当然、今のスーパーGT300クラスで最も戦闘力をもって参戦する方法は、資金を調達してFIA-GT3車両を購入することだ。また、自動車メーカー等のサポートを受けながらJAF-GT車両を製作する手段もあるが、これはかなりコストがかかる。では、土屋が作りたいチームはどんなチームなのだろうか。

「僕がやりたいことは、"最強プライベーター"として"打倒ワークス"を掲げて、最初から最後までまっとうした親父のあの姿。それを継承したいし、多少なりともそのDNAをどこかに残したいんです」と土屋は父であり、つちやエンジニアリングを率いた土屋春雄代表の姿勢を継ぐつもりだと語った。

「プライベーターっていろいろあるとは思うんですけど、親父がやっていたのは、職人ありきなんです。職人がいる、職人を応援する企業がいるという姿。企業ありきではないのが、最強プライベーターだと思うんです」

「今となってはそういうレーシングチームが絶滅危惧種みたいになりつつありますからね。"最強プライベーター"って、日本を象徴しているような町工場の技術だと思うんです。日本がここまで成長してきた舞台には町工場の技術があったのは誰でも知っている歴史だと思うんですが、その歴史がなくなってしまう」

●若いドライバーやメカニックを育てるチームを
 つちやエンジニアリングのJGTCでのマシンと言えば、真っ先に思い出されるのが1996年〜1999年にGT300クラスで活躍したトヨタMR2だ。つちやエンジニアリングで独自に組んだフレームはシンプルながら極めて高い性能を発揮し、98年には6戦5勝。王座を獲得したほか、土屋を含む多くのドライバーを育て上げた名車だ。今回のGT復帰に向け、土屋が目指す車両もこのMR2のようなものなのか。

「そのものです。理想を言えばクルマを作って、若いドライバーや若いメカニックを育てたりしたい。そうでなければいけないと思っています」

「今の時点では、結局はスポンサー=応援されなければできあがらないし、到着地点にたどり着けない計画なんですけど、3年後、自分は44歳になりますが、自分ががんばってできるリミットに全力で向かって行ければいいなと」

 もちろん、今年も含めてプロドライバーとしての活動はしっかりと行っていきたいと土屋は言う。「他チームからもオファーがあれば当然乗りたいし、自分の力を必要とする部分があれば力になりたい。それがプロだと思う」と土屋。しかし、今回の3カ年計画にはある"使命"を帯びていると言う。

「ただ、『土屋春雄の息子』としての使命があるというのも、常々思っていることなんです。残りのドライバー人生の集大成として、そういうものを作ってもいいかなと。それが3年になるか、4年になるかは分かりませんけど、いったん3年計画で作って、なるべくたくさんの人に応援してもらって。単純にレース界だけでなく、日本の職人の技術を応援してくれる人にも、応援して欲しい」

「日本のモノづくり」という単語は、スーパーGTをプロモートするGTアソシエイションの坂東正明代表も常々口にする言葉だ。もちろん、美しいGT3車両と日本の最先端技術が注がれた現在のJAF-GT車両が争う姿もGT300の魅力。しかし、今回土屋が目指すチームは、今のGT300が失いつつある「モノづくり」を武器にするチームとなりそうだ。

 スーパーGT復活を目指す土屋とteam SAMURAIを支援する『サムライサポーターズ』は今後、一般からも広く募集する可能性もあるという。

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