投稿日: 2023.11.22 19:23

【動画】ロペスの周囲に漂う“卒業感”。ビーチパーティでは悪ノリも。最終戦バーレーンの舞台裏に潜入

Kazushi Nakano / autosport web

　11月4日にバーレーンで開催されたWEC世界耐久選手権の最終第7戦。その舞台裏を追った見どころ満載のドキュメンタリー映像が、シリーズの公式YouTubeチャンネルで公開されている。

　この『WEC Full Access』シリーズは、TVの中継映像やハイライトでは放映しきれない舞台裏を、ガレージ裏の様子や車載映像・無線などをふんだんに交えながら振り返るもの。撮影クルーの“密着ぶり”はかなりのもので、感情をむき出しにするドライバーの様子や、“素”のやりとりなど、レースの裏側のリアルを伝えてくれるシリーズだ。

　最終戦バーレーン8時間レースの裏側は、約41分の動画にまとめられている。ここではその見どころをいくつか紹介したい（動画は記事末尾）。

■それぞれの“最終レース”を垣間見る

　まずは予選。“LMGTEアマクラス最後のポールポジション”をかけ、アタックを前に緊張の面持ちで準備を進めるアイアン・デイムスのサラ・ボビーにカメラが近づく。するとプロトン・コンペティションのオーナードライバー、クリスチャン・リードが彼女のもとにやってきて「ほら、カメラがあるぞ」とちょっかいを出す。

「いま、ふざけないでよね！」と笑顔でリードを軽く引っぱたくボビー。最後は互いの予選での健闘を誓って握手をする。何気ないシーンではあるが、今季限りでWECから離れることが濃厚なリードということもあり、「ライバルとの、最後のレースを味わっている」ということだろう。

　予選後、マシンの挙動について話し込んでいるのはポルシェ・ペンスキー・モータースポーツのケビン・エストーレとフレデリック・マコウィッキだ。会話が終わると、カメラに向かってくるエストーレ。「スパイなの？」と笑顔で聞くエストーレに、「いつもそうだよ」と返す映像クルーとの関係性は、この映像シリーズが1年かけて積み上げてきたものを代弁しているかのよう。

　ル・マン24時間の回と同様、予選日夜のスタートドライバー・ブリーフィングにもカメラは潜入。レースディレクターのエドアルド・フレイタスからはまたしても、スタートに関して「富士のときよりもいいものになることを望んでいる」と1コーナーでの接触を避けるよう、念押しが。翌日のレース展開を考えれば、もはやこのシーンは完全に“フリ”である……。

　続いてフレイタスは、次のようにドライバーたちに呼びかけた。

「これはチャンピオンシップが決定するレースだ。すべては、（コースの左右の境界を示す）ふたつの白線の間で決着するのが好ましい。私の部屋や、スチュワードの部屋で、ではなくね」

　そしてレースのスタートを迎えるのだが、1コーナーでキャデラックのアール・バンバーがトヨタのマイク・コンウェイへと追突するシーンは、ありとあらゆる車載カメラの映像で確認することができる。

　その後、後方から追い上げを見せたコンウェイの怒涛のオーバーテイクシーンの数々もふんだんに見ることができるが、追いついた前方のマシンに乗っているドライバーの名前を無線で確認する様は、いかにも『戦い慣れたベテラン』という風情だ。

　一方、接触を引き起こしたことによるペナルティを受け、スティントを終えマシンから降りたバンバーを当然カメラは追うが、彼は無言で控室へと消えていった。

　その後、ワークスのペンスキーと“プライベーター”ハーツ・チーム・JOTAとの間で勃発したポルシェ同士のバトルも、オンボード映像を交えしっかりと堪能できる。コメンテーターを務めるアンソニー・デイビッドソンも、このレースで印象的だったチームとしてJOTAの戦いぶりを挙げた。

　トヨタ7号車のホセ・マリア・ロペスが自身のスティントを終えた後、チームクルーがそれを労う様子からは、チーム全体がロペスとの“最後のレース”になることを感じていた様も伝わる。この動画公開時点で来季体制はアナウンスされていなかったため、WECも「これはロペスのトヨタでのラストレースということなのだろうか？」と字幕を入れている。レース後、表彰台へと向かうロペスにもカメラは近づき、感極まった表情を捉えている。

　なお、今回の映像では決勝翌朝から行われた『ルーキーテスト』の様子も収められており、2輪世界王者のバレンティーノ・ロッシ、女性ドライバーのリル・ワドゥらのテストでの裏舞台も堪能できる。

　さらにドレスコードが『オール・ホワイト』に指定された日曜夜のアワードセレモニー、通称“ビッグ・ビーチパーティ”の様子も収録。ラストシーンでは、コルベット・レーシングでおなじみのエアホーンを夜のビーチで鳴らすという“悪ノリ”も見ることができる。一体、これを鳴らしているのは誰なのだろうか……。