3月2日(土)に最長10時間の決勝レースが行われるWEC世界耐久選手権の開幕戦に向け、FIA国際自動車連盟とシリーズは2月16日付で、2024年シーズン最初のハイパーカーBoPを公開した。
このBoP(バランス・オブ・パフォーマンス/性能調整)では、チャンピオンチームであるTOYOTA GAZOO Racingが走らせるトヨタGR010ハイブリッドが、車両重量の増加と出力減の両方を受け取っている。
世界中で行われているGT3レースと同様にBoPの採用を前提に立ち上げられ、2021年のスタート以来、順調に成長を続けるWEC最高峰のハイパーカークラス。今季はトヨタ、フェラーリ、プジョー、ポルシェ、キャデラックという5つの既存ハイパーカーメーカーに加え、BMW、アルピーヌ、ランボルギーニ、イソッタ・フラスキーニという4つのブランドが新たにコミットし計9社、都合17台のプロトタイプカーがトップカテゴリーで覇を競うことになる。
そんな2024年シーズンの開幕に先立ち、2月24~25日にロサイル・インターナショナル・サーキットで行われるWEC公式テスト“プロローグ”を前にして、同カテゴリーで適用される今季最初のBoPテーブルが発表された。
この文書では、発行されたBoPが「追って通知があるまで」適用されるとされており今後の改訂がいつ、いかなる方法で行われるのか、その詳細は明かされていない。
■ポルシェとキャデラックのLMDhカーも重量増とパワーダウン
昨シーズン7戦6勝をマークしたトヨタGR010ハイブリッドは、2023年最終戦バーレーンから9kgの重量増加を受け取り、同時に従来の514kWから4kW(約5.4ps)分のパワー削減を受けた。ポルシェ963はさらに多くのパワーを失い、514kWから505kWへと9kW(約12ps)のダウンに。車両最低重量も2kgのプラスとなっている。
キャデラックVシリーズ.Rも同様に2kgの追加ウエイトを受け取り、最高出力も504kWから499kWへと引き下げられた。9社のうち500kW(約680ps)を下回るのはこのマシンのみだ。
開幕戦では従来の“リヤウイングレス”のマシンが登場するとことが予想されるプジョー9X8は、パワーはそのままに11kgの減量が認められた。その一方でこれまで135km/h(ウエット路面では150km/h)だったハイブリッドシステム(フロントMGU)の展開速度が、ドライとウエットともに150km/hとなった。
デビューイヤーのル・マン24時間レースで優勝し、王者トヨタにシーズン中唯一の土をつけたフェラーリ499Pは、1075kgの最低重量を維持しつつ最高出力は2kW(約2.7ps)減の503kWとされている。
新たに発行されたBoPテーブルでは、アルピーヌ、BMW、イソッタ・フラスキーニ、ランボルギーニ、これらの新参ブランドのパラメーターも設定され、ティーポ6 LMHコンペティツィオーネはクラス最重量級の1台となった。
デュケーヌが運営するイタリアブランドのLMH(ル・マン・ハイパーカー)規定マシンの最低重量は1085kgで、これはトヨタに次ぐ重さのマシンであることを意味する。対して最高出力の面では520kWのプジョー9X8に続き、全体で2番目にパワフルな514kWが認められている。ハイブリッド展開速度はフェラーリとトヨタと同じくドライ、ウエットともに190km/hだ。
WECにデビューする3台のLMDh規定車のうち、ランボルギーニSC63は1041kgともっとも軽く、1060kgのBMW MハイブリッドV8、1070kgのアルピーヌA424がこれに続く。3ブランドのパワー配分はこれと逆になり、アルピーヌが510kW、BMWは506kW、ランボルギーニが502kWとなっている。
■2024年WECハイパーカーBoP(2月16日付)
マシン | プラットフォーム | 最低重量 | 最高出力 | 最大エネルギー量 | 前輪MGU作動速度 (ドライ/ウエット) |
---|---|---|---|---|---|
アルピーヌA424 | LMDh | 1070kg | 510kW | 909MJ | ― |
BMW MハイブリッドV8 | LMDh | 1060kg | 506kW | 904MJ | ― |
キャデラックVシリーズ.R | LMDh | 1032kg(+2) | 499kW(-5) | 890MJ(-4) | ― |
フェラーリ499P | LMH | 1075kg(±0) | 503kW(-2) | 902MJ(+1) | 190kph/190kph |
イソッタ・フラスキーニ ティーポ6-C |
LMH | 1085kg | 514kW | 917MJ | 190kph/190kph |
ランボルギーニSC63 | LMDh | 1041kg | 502kW | 895MJ | ― |
プジョー9X8 | LMH | 1030kg(-11) | 520kW(±0) | 904MJ(-4) | 150kph/150kph |
ポルシェ963 | LMDh | 1048kg(+2) | 505kW(-9) | 900MJ(-8) | ― |
トヨタGR010ハイブリッド | LMH | 1089kg(+9) | 510kW(-4) | 914MJ(+2) | 190kph/190kph |
※比較数値は2023年WEC最終戦バーレーンとの差