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ル・マン/WEC ニュース

投稿日: 2023.05.17 11:07

スパで大クラッシュしたキャデラック、“IMSA用シャシー”でル・マン出場へ。事故原因も明らかに

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ル・マン/WEC | スパで大クラッシュしたキャデラック、“IMSA用シャシー”でル・マン出場へ。事故原因も明らかに

 WEC世界耐久選手権第3戦スパ・フランコルシャン6時間レースで大クラッシュに見舞われたチップ・ガナッシ・レーシング(キャデラック・レーシング)の3号車キャデラックVシリーズ.R。チームはこの重大事故を受け、6月の第4戦ル・マン24時間レースでは、IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権用のシャシーを使用することに決めた。

 彼らは当初、IMSAのGTPクラスにフル参戦する車両は国内に残す予定としていたが、CGRのグローバル・オペレーション・ディレクターを務めるマイク・オガラによれば、スパでデビューした新型シャシーに代わって、IMSAの車両をル・マンで使用することになったのだという。

 オガラはまた、スパのオー・ルージュで起きたレンガー・バン・デル・ザンデの大クラッシュについては、ドライバーのミスではなく電気系統の故障が原因だったことを明らかにしている。

「発見されたのは、電気的な接続に関する問題で、それがステアリングが一瞬固まるという現象を引き起こしたのだ」とオガラは説明した。

「我々は問題を発見し、対策を講じたので二度と起こらない。これは良いニュースだ。もちろん、それが起こった場所やタイミングなどについては残念ではあった」

「明るい兆しは、レンガーが無事だったということと、かなり大規模なクラッシュにも関わらず、タブ(モノコック)が生き残ったということだ。ダラーラは素晴らしい仕事をした」

「だからタブに構造的なダメージはない。その外側だけだ」

「あそこで走ったことで問題が浮き彫りになったが、今は修正した。このクルマは、走行距離を重ねれば重ねるほど、学びが深まり、修正し、より信頼性の高いものになる」

「このようなことが起こったのは恐ろしいことだが、もし何も見つからなかったら、もっと悪いことになった。問題は見つかり、解決した。(先日テストを行った)ポルティマオで走った車両についても、IMSAのマシンも、問題解決のためアップデートされている」

WEC第3戦スパ、オー・ルージュで高速クラッシュを喫して大破した3号車キャデラックVシリーズ.R
WEC第3戦スパ、オー・ルージュで高速クラッシュを喫して大破した3号車キャデラックVシリーズ.R

 クラッシュしたスパのマシンは、計画変更の一環として、チームのバックアップシャシーになるとオガラは述べている。

「(IMSAの車両は)ラグナセカ戦の後、ル・マンに向けて準備し、空輸する。そして(6月下旬のIMSA)ワトキンス・グレン戦のためにアメリカに戻ってくる」と彼は言った。

「(大西洋横断は)我々にとって不慣れな領域ではない。ただ、航空会社に頼るのは嫌だし、飛行機が遅れるかもしれない。1便でも欠航すれば、大混乱に陥る可能性がある」

「だが、我々はきちんとした計画を手にしていると思う。まだ1週間ほど時間があるので、ファクトリーで準備を整える」

 ル・マンでバン・デル・ザンデ、セバスチャン・ブルデー、スコット・ディクソンがドライブする新しい3号車は、5月24日にシカゴ・オヘア国際空港からフランスへと空輸される予定だ。

 一方、ル・マンの10日後に開催されるワトキンス・グレン6時間レースに間に合わせるたのアメリカへの帰路については、まだ複数の選択肢があるとオガラは言う。

「我々はいくつかの異なる方法でそれをオペレーションしてきた」と、オガラはCGRが以前に取り組んでいたフォードGTのプログラムに言及した。

「通常、我々は車をインディのファクトリーに送り返し、素早くメンテナンスし、そしてグレンへと送る」

「もし、ル・マンでの手続きに遅れが出た場合は、(ワトキンス・グレン・インターナショナルのある)ニューヨークへ直接車を送り、そこでピックアップして、サーキットでIMSAに向けた整備をを行う可能性もある」

 オガラは、ポルティマオで行われたル・マン前の耐久テストでは、そもそも2台を走らせる予定はなかったと述べている。ポルティマオテストではバン・デル・ザンデとディクソンが、アール・バンバー、アレックス・リン、リチャード・ウェストブルックのWEC2号車クルーに加わった。

トップチェッカーを受ける01号車キャデラックVシリーズ.R(キャデラック・レーシング) 2023年IMSA第4戦ラグナ・セカ
トップチェッカーを受ける01号車キャデラックVシリーズ.R(キャデラック・レーシング) 2023年IMSA第4戦ラグナ・セカ

■プラットフォームBoPの変更があれば「すぐにでも優勝争いできる」

 キャデラックは、同じLMDhマニュファクチャラーのポルシェとともに、ル・マンの前にハイパーカー・クラスの“プラットフォームBoP(性能調整)”を変更するよう、FIA国際自動車連盟とACOフランス西部自動車クラブに働きかけている。今季からのWECにおける新しいBoP(性能調整)のアプローチでは、ハイパーカークラスに参戦する『ル・マン・ハイパーカー(LMH)規定』の車両群と、『LMDh規定』の車両群において、その規則プラットフォームに属する全車が、シミュレーションに基づいて2レースごとに調整されるという選択肢が用意されている。

 LMH規定に基づき作られたトヨタGAZOO RacingのGR010ハイブリッドは今季ここまで無敗で、同じくLMH規定のフェラーリと合わせ、第2戦3位のポルシェ・ペンスキー・モータースポーツを除くすべての表彰台を独占している。

「総合優勝を狙えるようにしたいし、そのためにできることはすべてやるつもりだ」と、オガラは語った。

「我々はスパで、正しいタイヤで正しい戦略をとれば、彼ら(LMH)と一緒に走れるということを、あの事件が起きるまで3号車で証明してきたと思う。序盤は皆が異なるタイヤ戦略を採っていたがね」

「だが、トヨタ勢の前に出るのは難しい。彼らの前に立つには、彼らが問題を抱えることを期待する必要がある。それが少しでも助けになれば、と思う」

 オガラは、WECのBoPとウェザーテック選手権では、異なる「メンタリティ」を目にしているという。

「IMSAでは、人々はテーブルの上により多くのカード(選択肢)を持っていて、皆がただ走っているだけだと思う。このような小さな調整で、最初の3レースで3つの異なるチーム、3つの異なるマニュファクチャラーが優勝したのだから、それはすべて素晴らしいことだ」

「IMSAでは、BoPが導入される前のようなメンタリティだ。みんな、ただひたすらレースをして、走っている」

「WECでは、その計画がどのようなものか正確には誰も分からない。 我々が懸命に走っていないわけではないが、全体的なゲームプランがどうなっているのかは、誰も知らない」

「我々はル・マンのために全力を尽くしているだけだ。 すべてを正しく行い、ミスや問題を最小限に抑えれば、我々は先頭に立って最高のLMDhマシンに並び、おそらくLMHマシンの数台にも勝つことができると感じている」

「それが我々の目指すところだ。 そして、その間にプラットフォームBoPの調整があれば、すぐに優勝争いに加わることができるだろう」

WEC第3戦スパ、第4戦ル・マンに参戦する3号車キャデラックVシリーズ.R
WEC第3戦スパ、第4戦ル・マンに参戦する3号車キャデラックVシリーズ.R


この記事は国内独占契約により 提供の情報をもとに作成しています

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