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スーパーGT ニュース

投稿日: 2016.05.19 01:00
更新日: 2016.05.19 01:01

VivaC team TSUCHIYA スーパーGT第2戦富士 レースレポート

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スーパーGT | VivaC team TSUCHIYA スーパーGT第2戦富士 レースレポート

悔しい経験、自信につながる経験。
多くの経験がプロとしての覚醒につながる最高のスパイス

 そして決勝日の朝、幸運なことに雨は上がりドライ路面でのフリー走行になりました。ここでも最後の確認をし、万全の準備をして決勝を迎えることができました。スタートはタカミツ。私が戦略を考えているので、距離の長いレースはできるだけ私はピットにいてフレキシブルな対応ができるようにしておきます。だいたいスタンダードなプランとオプションを二つ、セーフティーカー(SC)が入った場合のプランを用意しておき、あとはその場で決めていきます。今回はいい位置からのスタートができたので、展開によっては優勝もあるのではないかと、密かに楽しみにしていました。

 が、スタートしてどんどん抜かれていく映像が……。この辺で終わるだろうなぁ〜と思っていた以上に抜かれていくという予想外の展開。なにかトラブルでもないとここまで抜かれないだろうなと思っていたら、春雄監督が「スタート前に大量のタイヤカスを拾っていた」と。それでスピードが出なくて抜かれまくっていることが分かりました……。「予選の頑張りを無にしやがって」と思いましたが、まだまだ序盤で戦略的にも這い上がれる状況でしたので、いろいろと考えを巡らせながら、ひとまず予定通りのプランで進めることにしました。

 今回のスタンダードプランは、第1スティントをギリギリまで引っ張り、タイヤ4本交換をして、第2スティントはタイヤ交換なしという戦略でした。詳細は話せませんが、まぁ、これが一番効率的な戦略だったので、これができるように予選日のフリー走行から準備を進めてきました。タカミツと無線でタイヤの状況をやり取りしながら、どうやら問題なさそうということで、スタンダードプランを決行することを決め、44周目に1回目のピットイン。私が乗り込み、トップ10以下(一時は15番手)だった順位はシングルポジション(8〜9番手)まで戻して走行を続けます。そしてこのスティントからはハード目のタイヤを履きましたが、約60周を走る計算だったので、労わりながら前とのマシンのタイム差を縮めつつ走っていました。うまくいけば4位くらいまで戻ることができる計算だったのですが、SCが入ればもっとチャンスが広がります。と、そう思っていた時にSCが入りました! こうなるとかなり戦略がはまります。2回目のピットストップはどこよりも短いことが分かっていたので、大きなチャンスの到来です。リスタート後はいつでも入れる状況でしたが、周回遅れの集団に追いつく前にピットに入ることを決断。理想的な展開で2回目のピットインをすることができました。

 私からタカミツへ交代し、タイヤは無交換、給油のみでピットアウトしてトップ#3GT-Rのすぐ後ろでコースイン。2番手に浮上です。タイヤはすでに33周を走行し、残り25周ほどを持たせなければならない状況。ハードタイヤのため、グリップはかなり薄く、私の脳裏には岡山のレースが蘇ります。状況的には非常に似たコンディションでタカミツは、トップグループに送り出されたのです。2輪をミディアムに交換することもオプションでは考えていたのですが、ここはタカミツにハードルを越えてもらおう、とハードタイヤを選択。それに第1スティントのダサさを埋め合わせるには、これくらいのことができないとダメでしょ?という気持ちも。

 本当のところを言うと不安もありましたが、タイムをみると私と同じような感じで並べているので、これなら大丈夫だなと思いました。岡山の時のタカミツのままだったら同じように抜かれてしまっていたと思います。

 こうなればターゲットは表彰台です。地力を考えれば#55 BMWは抑えることは無理でしたので、#18 MCが現実的なライバルでした。無線で#55 BMWは無理にブロックしてタイムを落とさないように、#18MCとのギャップを意識して走ることを伝えてあとはタカミツに任せます。意外と#55を抑えることができていましたが、やはり抜かれてしまい3番手に。しかしそこからは#18MCとのギャップをコントロールしながらタイヤをマネージメントすることができ、3位表彰台でチェッカーを受けることができました。

 振り返ってみると、今回のレースウィークは理想的な展開だったと思います。特にタカミツにとっては、いいところもあり悪いところもあり、そして最終的にはいい結果で終わることができたこと。これは巡りあわせに感謝するしかないですね。昨年も言いましたが、成長するには「自信になる経験」と「悔しい想いをする経験」、そして何より「失敗をたくさん経験すること」が肥やしになっていきます。この2戦でタカミツは濃厚な経験を積むことができたことは、本人にだけでなく、チームにとっても非常に有意義なものになったと思います。

 MCはFIA GT3に比べ、ドライビングは非常に難しくシビアです。正直、おじさんドライバーには暑いし、辛い! でもドライバーが成長する上では絶好のマシンと言えます。タイムだって数年前の500と同じなんですよね。これまでメカニックにとって素晴らしい教材という話はたくさんしてきたと思いますが、MCやJAFGTのマシンはドライバーにとっても非常に勉強になるマシンなんです。本音はFIA GT3のマシンで楽したいな〜と思いますが(笑)、若い人の成長ができる場を提供することも、私の役目だと思っていますので、もうちょっと頑張ってみようかと思います。


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