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スーパーGT ニュース

投稿日: 2016.05.19 01:00
更新日: 2016.05.19 01:01

VivaC team TSUCHIYA スーパーGT第2戦富士 レースレポート

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スーパーGT | VivaC team TSUCHIYA スーパーGT第2戦富士 レースレポート

VivaC 86 MC
VivaC 86 MC

相棒、タカミツの苦悩と成長
発破をかけ続けることも、土屋武士の役目

 昨年はいつでも数周で同じタイムを出してきていたのに、開幕戦では明らかに乗り切れていませんでした。原因としては「速いけど、狭い」というマシンセットが考えられますが、私が乗ってタイムが出ている以上、言い訳にはできません。正直、岡山の決勝中は非常に乗りにくい状況でしたが、私が500に乗っていた頃、同じような状況は多々ありました。もちろんチームとして勝つ為には、二人のドライバーが速く走れるセットアップということを優先すべき、という考えもあります。しかし、このチームは「次代の職人を育てること」という大きなテーマを軸として存在しています。タカミツをプロに育てることは、私のドライバーとしての最後の仕事と捉えていますし、そうなって欲しいとたくさんの人が願ってくれています。だから、ここから逃げることはできません。自分でこのハードルを乗り越えていかなければ、プロの世界で生きていくことなんてできない。この富士のレースは、タカミツにとって本当に大事なレースだと同じドライバーとして感じていました。だからこそあえてアドバイスは最小限に、難しいマシンの、グリップの薄いときのタイヤの扱い方だけを伝えて、サーキット入りしました。

 このレースウィーク、決勝は午前まで雨予報ということで、予選前のフリー走行でレースセットアップとタイヤライフの確認をすることが重要になります。実際走ってみると、最初からとにかく乗りやすく、狙ったセットアップはバッチリでした! こうなると予定通りにスケジュールを進めることができます。すぐにガスを重めにしてロングランをしながらレースのセットアップを進めました。最後にはタカミツが新品タイヤで予選シミュレーションをして、やりたいことは全てできた状態でフリー走行を終えました。

 そして予選Q1にタカミツが挑みます。台数が多く、クリアラップが取りにくいのが不安要素ですが、そこは祈るしかありません。富士ではBピットと言われる“2軍エリア”がピット出口に近い場所で、昨年度の成績や今シーズンのポイントで決まるAピットを獲得すべく各チームは努力します。ですが私たちのチームは戦略的に有利になるピット出口に近いBピットをあえて選択。取材されにくいとか、ピット内に部屋とトイレがないというBピットの環境ですが、一番先にコースインできることや、レース中のピット作業での優位性などを考えると、Aピットも魅力的なんですが、やはりレース屋としてはレース優先にしてしまいます。そんな細かいことも勝負に影響すると考えています。それにそういった準備をやった上でトラフィックに遭遇したら、これはもう仕方がないと思える……。

 そんな中でタカミツは無事に5番手のタイムを記録し、Q1を突破しました。タイムも#2 エボーラの加藤選手と同じタイムだったので、ポテンシャルはかなり引き出せたと思っていいでしょう。相当なプレッシャーがあったと思います。予選後の表情がめちゃくちゃ明るくなりました(笑)それこそ岡山のレース後からずっと引きずっていたものがやっと吹っ切れた感じで。同じ会社で働いていて、常に近くにいるので余計に伝わりますが、開幕戦後のインターバルはすごく辛かったと思います。でもこれが確実に肥やしになる。こういった経験をできるだけ繰り返し、本当のプロの勝負になった時に自分で乗り越えていける力がついていくと思っています。そして私にとってもすごくホッとした予選になりました。タカミツの成長が私たちチームのリザルトに直結するのは間違いないですからね。

 さてQ2です。スピード勝負ではかなり厳しいなと思っていたので、ちょっと昔を思い出してタイヤのピークを1周だけに使い切る走りをしようと思っていました。500を降りてからはリスクを減らしてアベレージで走ることを心掛けていたので、一発で決めにいくことはあまりしていませんでした。もちろん500に乗っていた時代はずっとやっていましたが、タイヤテストをガンガンやっていた時と比べて精度は落ちています。でも今年はTOYOTA GAZOO Racingのプロジェクトでニュルを走ったり、開発テストでマシンに乗る機会が増えていたことで、身体のセンサーが戻ってきてるのを感じていたのでやってみよう、と。

 そのトライは、とてもうまくいきました(笑)たぶんコンマ2秒くらいはいつもの自分より速く走れたと感じています。そう考えると3つポジションをゲインできた感じですね。大成功の2番手、フロントロー獲得です。こうやってタカミツに次から次へとハードルを設定していくのが私の役目ですから張り切らないと!


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