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スーパーGT ニュース

投稿日: 2021.07.20 19:10
更新日: 2021.07.21 12:12

『先輩、スゴイっす。』STANLEY牧野任祐が驚嘆する山本尚貴の知略。そして王者たるゆえん【第4戦GT500決勝あと読み】

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スーパーGT | 『先輩、スゴイっす。』STANLEY牧野任祐が驚嘆する山本尚貴の知略。そして王者たるゆえん【第4戦GT500決勝あと読み】

 レースの後半スティント、19号車WedsSport ADVAN GRスープラの猛追を抑えきって、見事今季初優勝をポール・トゥ・ウインで飾ったSTANLEY NSX-GTの山本尚貴。ファーストスティントを担当したチームメイトで後輩でもある牧野任祐はチェッカー直後のテレビのインタビューで「先輩、スゴいっス」と、2度繰り返した。間近で見ていたチームメイトも驚く、山本尚貴の後半スティント。そこには山本尚貴がチャンピオンのゆえんとなる高次元のパフォーマンスと、心は熱く、頭はクールなベテランならではのスキルと意地が詰め込まれていた。

 スタートを担当した牧野は1周目から2番手のWedsSportの国本雄資を引き離しにかかる。だが、2周目からはWedsSportのラップタイムの方が速くなる。そして7周目に入ったところで牧野がGT300のマシンに引っかかってしまう。

「3コーナーを曲がって4コーナーの一番嫌なタイミングでGT300に捕まって、19号車に後ろに付かれてしまった。スープラの方がストレートが速くて横に並ばれて、僕も5コーナーのブレーキングでできる限り粘ったんですけど、ただ、『あまりそこで無理をしすぎても』と思い直しました。路面温度が一番高かった時だと思いますけど、あの時間帯の19号車は特に速かったですね。スタート直後は少し離せましたけど、内圧が上がり切ってからは相手の方が速かった」と牧野。

 牧野が懸命に走りながらもWedsSportに抜かれてトップを奪われてしまった瞬間、ピット見ていた先輩、山本尚貴の心に火が付いた。

「あれを見た瞬間に『負けるわけにはいかねえ』と思いました。今週ここまでいい流れで来ていたのに、前半のスティントで任祐がやられて『絶対に取り返す』と思いました」

2021年スーパーGT第4戦もてぎ決勝
ドライバー交代の直前までモニターで戦況を見つめる山本

 牧野もWedsSport国本にトップを奪われ、一旦ギャップは開きつつあったが、スティントの終盤は盛り返し、牧野は4~5秒差でトップのWedsSportに付いていった。その牧野の懸命さにも山本は奮起し、牧野のプレッシャーが結果的にWedsSportのピットストップ作業にロスタイムを生じさせることにもなった。

 セーフティカーのリスクなどを考慮してSTANLEY NSX-GTは早めの25周目にピットインして牧野から山本へドライバーを交代。この時の制止時間はモニター上で40.1秒。その4周後の28周目にピットインしたWedsSport ADVAN GRスープラは右フロントの交換に若干手間取り、45.0秒の制止時間だった。

 WedsSportはGRスープラ陣営の中でもDENSO KOBELCO SARD GRスープラとともにもっともピット作業が早いチームとして知られているが、このトップ争いの高い緊張感のなかで痛恨のタイムロスをしてしまった。

 前半スティントで築いた4~5秒差は、ピットアウト後に逆転してSTANLEY山本がトップに。このピットでの逆転がSTANLEYの勝因のひとつになった。そして、心に火が付いた山本の頭の中では、極めてクールに後半スティントの戦略と分析が行われていた。

「牧野選手のファーストスティントを見て、路面温度が50度を越える今回のコンディションでは、ヨコハマタイヤがかなりスピードアップしてきたのは分かっていました。できれば路面温度が下がってほしいなとは思っていましたけど、今回のレース時間ではチェッカーが15時くらいなので路面温度はほとんど変わることはない。前回の富士500kmだとスタートとチェッカーのときで路面温度は10度近く下がるのですけど、これはもう普通に行ったら19号車とヨコハマタイヤが勝てるレースになってしまうなというのは牧野選手のスティントを見て分かりました」

「でも、牧野選手が厳しいなかでもトップに食らい付いていったことで、相手のピット作業でミスがあった。正直、ピットタイミングで19号車の前に出られるとは思っていなかったので、『あれっ!?』とは思いました」

2021年スーパーGT第4戦もてぎ決勝
前半スティントでトップを奪ったWedsSportだったがタイヤ交換で痛恨のロス。STANLEYが首位を奪い返す

 相手のミスもあってトップに躍り出たSTANLEY NSX-GTと山本尚貴。だが、山本にはふたつの懸念があった。63周のレースの25周目という早いタイミングでピットインしたため、タイヤのライフと燃費のマネジメントという制約が課せられていたのだ。

「トップに出てからタイヤのセーブ、マネジメントをずっとしていましたけど、どちらかというとタイヤよりも燃料をセーブすることの方が作業の割合は大きくて、燃費をセーブするような走り方をしていました」

 その状況で、追い上げてくる19号車WedsSportへの戦略と覚悟を決めた。

「セッション序盤もペースを上げようと思えば上げられたのですけど、序盤でフルプッシュしたとして、19号車を離せたかというと離せないと分かっていた。僕らが決して遅かったわけではなくて、ファーストスティントと同様に、やっぱりあのコンディション下ではヨコハマタイヤとGRスープラのパッケージがかなり有利だった」

「そこで序盤から無理をしたところで、相手に詰められて自分がタイヤを使ってしまって燃料もセーブできなくて、追い抜かれてしまうことになる。僕が頑張りすぎると逆に簡単にやられてしまうなと。だったら逆にその序盤のギャップはもう捨てて、1回ペースを落として彼を引きつけて、追いつかれるまで燃料とタイヤもセーブしようと。くっついて来たところで燃料は少し多めに使うことにはなったんですけど、もてぎのコースは抜きづらいですし、要所を押さえることができれば相手に前に出られることはないだろうと思っていました」

 真っ向勝負では相手に分があると判断した山本は、相手のパフォーマンスを削ってレース終盤に勝負を懸けるプランも発動させた。

「むしろ、近づいてくれた方が好都合でした。近づいたら後ろのマシンはダウンフォースがなくなるのでタイヤを酷使することになって温度も上がるし、ダウンフォースが少なくなる分、ブレーキも厳しくなる。後ろにくっつくことで、いろいろなことがマイナスになるだろうという希望がありました」

 実際、19号車WedsSportの宮田莉朋はすぐに山本に追いつくも、なかなか抜くチャンスは与えられず、1秒を切るギャップで周回を重ねていく。ここまでは山本の戦略どおり。だが、要所要所を押さえつつも、徐々に山本とSTANLEY NSX-GTはピンチを迎えつつあった。

「タイヤの内圧と温度が上がっていくとペースが上げられない状況で、余裕はなくなってしんどかった」

2021年スーパーGT第4戦もてぎ決勝
ピタリと後ろに付かれながらもトップを守りきった山本尚貴

■次のページへ:WedsSport宮田の追い上げを凌いだSTANLEY山本が最後のラストスパート


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