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スーパーGT ニュース

投稿日: 2022.11.28 19:22
更新日: 2022.11.28 19:23

「グッドスマイルの1勝は素晴らしい」メルセデスAMG首脳に聞く2022年総括と次期GT3車両、そしてル・マン参戦

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スーパーGT | 「グッドスマイルの1勝は素晴らしい」メルセデスAMG首脳に聞く2022年総括と次期GT3車両、そしてル・マン参戦

 11月19〜20日に行われたマカオGTカップでは予選レース、メインレースともにメルセデスAMG GT3が優勝するなど、世界のGT3レースシーンで常にトップを走り続け、数多くの勝利を挙げるメルセデスAMG。現行GT3車両であるメルセデスAMG GT3 Evoのホモロゲーション期限も迫るなか、2024年にはWEC世界耐久選手権/ル・マン24時間がGT3車両に対して門戸を開くタイミングを迎える。

 そんなメルセデスAMGを取り巻く環境のいまと将来について、カスタマーレーシングを率いるシュテファン・ヴェンデル代表に聞いた。

■日本人のワークスドライバー誕生も願う

──世界各国のレースでメルセデスAMGのカスタマーレーシングの活動は非常に精力的に行われており、特に今季はどのカテゴリーでもチャンピオン争いに絡み、良いシーズンになりましたね。

シュテファン・ヴェンデル(SW):大きなものでいうと、ニュルブルクリンク24時間では優勝は惜しくもアウディに譲ったがダブルポディウム、スパ24時間では1位、2位、4位、キャラミ9時間の優勝、ADAC GTマスターズでは前GT3モデルSLSから7年ぶりのシリーズ優勝、マカオGTカップでは2戦ともに優勝など、厳しくもあったが、非常に良いポテンシャルを示せたシーズンだったと思う。

──DTMドイツツーリングカー選手権ではあなたの古巣、シューベルト・モータースポーツが初タイトルを勝ち取りましたね。

SW:DTMでは去年の逆転優勝を経て、さまざまなレギュレーションン変更があり、今季のタイトルは厳しいだろうと予想をして開幕に臨んだ(※DTMでは今季からチームオーダーやメーカーオーダーを厳格に禁止)。

 私の古巣であるシューベルト・モータースポーツの長年の努力が実り、DTM初参戦にして優勝は非常に嬉しくもあり、素直に心から彼らの活躍を嬉しく思った。彼らの頑張りを見ていただけに、メルセデスAMGはシューベルトに次いでシーズン2位で終えたことに納得せざるを得ない(※ヴェンデル氏はメルセデスAMGのカスタマーレーシング代表就任前は、長年シューベルト・モータースポーツのチームマネージャーを務めた)。

2022年DTMのドライバーズタイトルを獲得したシューベルト・モータースポーツのシェルドン・ファン・デル・リンデ
2022年DTMのドライバーズタイトルを獲得したシューベルト・モータースポーツのシェルドン・ファン・デル・リンデ

──クラス1でのレース活動を終え、昨年からGT3時代となったDTMは、未知なる挑戦となることから非常に手探り状態ではじまりました。従って、様子を見ていたチームもドライバーも多く小さなフィールドでしたが、今季はぐっと参加台数も増え、トップドライバーの参加も増えました。

SW:とくにヨーロッパではGT3のレースの活動が非常にフォーカスされており、GTワールドチャレンジやDTMはGT3を代表するプロレースとなっている。

 今季のDTMは恐らくヨーロッパのスプリントGT3の中では最高レベルになるような激しい戦いになったと思う。それと並んでGTワールドチャレンジのエンデュランス・カップはさらに多くのトップドライバーを誇っている。この両シリーズはドライバーのレベルが特に高く、僅差の戦いとなっているだけに非常に激しく、観る者を魅了しているのは確かだ。

 しかし、私は数多くあるシリーズの甲乙を付けることを好ましいと思っていない。そこに出ているチームや選手や関係者は、プロアマ問わず非常に懸命な努力を重ねて1戦ずつを戦っており、それぞれのシリーズには応援するファンが付いてくれているからだ。だから、メルセデスAMG勢としては、カスタマーチームが全力でレースに挑む姿やパフォーマンスを、世界各地で応援してくれているファンの前で披露し、そしてファンと共にこれからも喜びを分かち合いたいと願っている。

──日本ではスーパーGTなどでメルセデスAMG GT3が活躍していますが、性能調整などで厳しい状況のようですね。

SW:その状況は把握している。厳しい状況でも、グッドスマイルレーシング&チーム右京はスーパーGTで強さを見せ、見事に1勝を挙げたことは非常に素晴らしい。弊社の世界中のカスタマーサポートで得た経験や情報を踏まえてデータの共有化など、パフォーマンスサポートを取り入れており、スーパーGTで活躍する3台にも、その中のデータベースから利用できるものは大いに活用して欲しい。

 ただ、スーパーGTではタイヤはフリー(自由競争)で、ヨーロッパのようなタイヤのワンメイク制度ではないので、ヨーロッパでうまくいったレースのデータベースが必ずしもスーパーGTのコンディションに合うわけではないが、その中のひとつでもスーパーGTのスタイルとマッチし、うまく活用できればと願っている。

──メルセデスAMGのトップドライバーの一員になりたいと願うドライバーは多く存在し、日本人のドライバーからもAMGのファクトリードライバーになりたいという声を聞きますが、AMGのファクトリードライバーになる基準というものはあるのでしょうか?

SW:いつかの日かAMGのブランドを背負い、世界中のレースでトップポテンシャルを発揮する日本人のAMGのパフォーマンスドライバーが誕生してくれると嬉しいと思っている(※『パフォーマンスドライバー』はメルセデスAMGにおけるファクトリードライバーの名称)。

 パフォーマンスドライバーになるための条件? 彼らをしのぐ速さとポテンシャルを発揮することだけだ。1~2戦のレースだけで速さやポテンシャルを見せるのではなく、コンスタントにパフォーマンスドライバーを充分に抑えられるような走りを見せることが重要で、たとえばもしも彼らと組んだ場合に同等の高いレベルを常に発揮できるポテンシャルが必要となる。

 従って世界でAMGを駆り活躍するカスタマーチームやドライバーのリザルトやデータは常にワークスでチェックしており、誰がAMGにとって必要とするドライバーなのか、と目を光らせていいるのは事実で、パフォーマンスドライバーになる条件に国籍は関係なく、日本人にも充分にチャンスはある。

 たとえば、11月にAMGのカスタマーレーシングでは1週間にわたってバルセロナのサーキットを貸切り、GT3やGT4などのトラックデーを行うと同時に、木曜日と金曜日にヤングドライバーテストを行い、次のシーズンにファクトリードライバーやパフォーマンスドライバーになる可能性のあるドライバーを招待して走りを見せてもらう機会を設けている。

 将来の成長が見込める若いドライバーがこのテストをパスした場合は、DTM、GTマスターズやGTワールドチャレンジといったカテゴリーに、AMGのブランドを背負って立つドライバーになれるチャンスがあるということだ。

 この試みは昨年からはじめ、弊社にとっても若手のドライバーにとっても非常に実りのある興味深いテストの機会となっている。日本人ドライバーも、このテストに招待されることを願っている(※メルセデスAMGではこのトラックデーで現役のパフォーマンスドライバーもテストを受け、契約内容や更新にも関わる重要な機会となっている)。

メルセデスAMGでカスタマーレーシングを統括するシュテファン・ヴェンデル
メルセデスAMGでカスタマーレーシングを統括するシュテファン・ヴェンデル

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