驚くべき速さと、目を見張る美しさ。スーパースポーツカーは、両者を兼ね備えた特別な存在だ。『autosport web 最新スーパースポーツカー試乗レポート』では、クルマ好きなら誰もが憧れる至高のマシンの数々の中から注目の1台をピックアップして、その走りの印象を伝えていきます。
ハンドルを握るのは、モータージャーナリストの吉田拓生さん。第3回目は、優雅さを極めた佇まいのなかに、アストンらしさ溢れるスポーツ性能が潜むコンバーチブル、『アストンマーティンDBSスーパーレッジェーラ ヴォランテ』を取り上げます。
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■創業以来ブレない“上質”を継承し続ける歴史的な背景
アストンマーティンDBSスーパーレッジェーラ ヴォランテ。車名は長いですが、すばらしいスポーツカーです。でも、このクルマについてお話しする前にローレンス・ストロールさん(F1ドライバー、ランス・ストロールの父)にヒトコト言いたい!
「お金持ちだからって、F1チームでも自動車メーカーでも、なんでも買っちゃえばいいってもんじゃないんだよ~」
あ、失礼しました。アストンマーティンはル・マン24時間での総合優勝などスポーツカーレースの世界でも実績があるし、1959年にはF1に出走した記録もあるので、レース屋目線でも魅力的なのでしょう。
1913年創業、ジェームズ・ボンド氏の愛車としても世界的に有名なアストンマーティン。その起源は、アストン・クリントンという丘で行われたヒルクライム・レースで、ライオネル・マーティンさんの作ったクルマが勝った! という史実に由来しています。
経営が立ち行かずに創業者が会社を離れてからも、この超高級ブランドは貴族やお金持ちにモテモテで、白旗をあげるとすぐに資金援助してくれる人が現れて復活! ということを繰り返し、昨今はまさに黄金時代と言える繁栄ぶりです。
DBSスーパーレッジェーラ ヴォランテという車名の内訳は、“DB”がトラクター会社の社主でアストン中興の祖といわれるデイビッド・ブラウン氏のイニシャル。
スーパーレッジェーラは、1960年代のアストンマーティンが採用していたイタリア由来の軽量シャシー構築法。つまりどちらも現在のアストンマーティンとは関係性が薄いのだけれど、そういった栄光の史実をヒョイッと利用できる点に、老舗の老舗たる余裕があるわけです。
末尾のヴォランテは“空飛ぶ円盤”みたいな意味合いで、アストンマーティンのオープンモデルに付く伝統的な名称であります。