レースを愛してやまないファンの方々へ
autosport web Premiumが登場。

詳細を見る

国内レース他 ニュース

投稿日: 2023.03.28 14:20

KTMS 2023スーパー耐久第1戦鈴鹿 レースレポート

レースを愛してやまないファンの方々へ
autosport web Premiumが登場。

詳細を見る


国内レース他 | KTMS 2023スーパー耐久第1戦鈴鹿 レースレポート

KTMS KOBE TOYOPET MOTOR SPORTS

ENEOSスーパー耐久シリーズ2023 Powered by Hankook
第1戦 SUZUKA S耐

2023年3月18日(土)〜3月19日(日)
鈴鹿サーキット(三重県)
入場者数:
3月18日 3,800人
3月19日 8,500人

新体制での4年目の開幕戦
まさかのトラブルが次々に襲う

FREE PRACTICE
 年間5勝と圧倒的なパフォーマンスをみせ、悲願のチャンピオンを獲得した2022年を経て、KTMSは2023年のスーパー耐久第1戦に臨んだ。今季、長年チームを支えた平良響を送り出し若返りを図ったチームは、荒川麟、奥住慈英のふたりを継続。新たに若き奥本隼士、そして2023年からの変更されたAドライバー規定に対応するため、長年ドライバーとして、スタッフとしてチームに貢献してきた一條拳吾を起用することになった。

 ただ、本来Aドライバーにはジェントルマンを起用すべきだが、一條は若く、開幕前にペナルティが課されることになってしまった。その内容は、レース中の90秒のピットストップ。2022年にタイトルを争った#13 GR YARISも同様のペナルティを受けてはいるが、非常に厳しい内容なのは間違いない。今季のチームのコンセプトが若手育成であることからやむを得ないところだが、そのハンデを跳ね返すべく、3月16日のスポーツ走行、そして3月17日に行われた2回の占有走行に臨んだ。

 初日は春らしい暖かな陽気となった鈴鹿で、今季から変更されたタイヤをトライ。走行2日目の18日は、曇り空でやや気温が低め。午前は4人が交代しながら走行し、全クラス混走となった午後は奥本に経験を積ませ、荒川、奥住と交代していくが、走行中の奥住から「異音がする」と報告が入った。デフのトラブルが予想されたが、解決を目指し作業を行った後、3月18日午前のフリー走行に臨もうと思ったところ、今度はエンジンから異音が。このため午前は走ることができなかったが、午後の予選までにトラブルを特定していった。

QUALIFY
 3月18日の予選までになんとかトラブルの原因を特定し臨んだ予選。午前に降っていた雨がほんのわずかに残っていたことから、先行して行われたBドライバー予選に臨んだ荒川だったが、なぜかアクセルに対し、クイックな反応がついてこない。続くAドライバー予選での一條のときも同様で、どちらもなんとかタイムは記録し、総合では5番手につけたものの、トラブルの原因がなかなか見つからない。Cドライバー予選では奥住がトラブルの症状を抱えたままブレーキの焼き入れなどレースに向けた作業をこなした。

 ただDドライバー予選の前に、ようやくトラブルの原因が見つかった。車輪速センサーをすべて交換したところ、KTMS GR YARISはようやく本来のパフォーマンスを取り戻し、奥本が初めての予選をこなした。レースまでにトラブルが解消したことは不幸中の幸いだった。

KTMS 2023スーパー耐久第1戦鈴鹿 レースレポート
KTMS 2023スーパー耐久第1戦鈴鹿 レースレポート

RACE
 金曜の午後、さらに土曜と悩まされてきたトラブルを乗り越え、迎えた3月19日の決勝レース。ST-2クラス5番手から戦うKTMS GR YARISは、荒川がステアリングを握りスタートすると、オープニングラップを終えてそのままピットに入る。トラブルではなく、90秒のペナルティストップをこなすためだ。混戦のなかでタイムを浪費するのではなく、すぐにペナルティを消化することでタイムロスをなくし、コースが空いているところで復帰することで、高いペースを保とうという狙いだ。

 狙いは良かったものの、コースに戻ると期待ほど空いているわけではなかった。とはいえ荒川のペースが悪いわけではなく、速いときには2分22秒台のラップも記録しながらの走行となり、ちょうどピットインをうかがっていたタイミングで、コース上に液体漏れがあったことからセーフティカーが導入され、好タイミングとばかりにチームは荒川をピットに呼んだ。

 代わってKTMS GR YARISのステアリングを握ったのは一條。チームにとって定番と言えるフロントのみのタイヤ交換を行うと、コンディションの変化にもうまく対応し、37周目には2分20秒916のベストタイムを記録するなど、さすがのスピードをみせていく。トップを走る#743 シビックとのタイム差はあるが、しっかりと2番手をキープ。さらに#743 シビックも射程圏内に入れる戦いをみせていった。90秒のペナルティストップを跳ね返す、貫禄のレース展開と言えた。

 一條は62周までしっかりと自らのスティントをこなしピットイン。チームでの初レースに臨んだ奥本にステアリングを託した。こちらもペースは悪くなく、ジワジワと#743 シビックを追っていった。この展開ならば、終盤にはトップ争いもできそうな勢いがあった。

 しかし76周目、日立Astemoシケイン立ち上がりで奥本は左フロントに異変を感じ取った。異変は1コーナーで本格化してしまい、KTMS GR YARISはスローダウンを強いられた。場内のモニターには、左フロントから白煙が上がり、タイヤがあらぬ方向を向いている様子が映し出される。奥本はなんとかピットに戻ろうとしたものの、ヘアピン立ち上がりで駆動を失い、コースサイドにKTMS GR YARISを止めざるを得なくなってしまった。2021年の鈴鹿以来のストップだ。

 実は奥本に交代する際に、左フロントのタイヤ交換でハブボルトが1本入らなかったのだ。残りの4本で耐えきれるとは思われたものの、結果的にすべてのハブボルトが折れてしまったことがトラブルの原因となった。今季、作業時間短縮を目指しインパクトレンチを変更したが、これが関係しているのかは分からない。

 最終的に、レースは大きなアクシデントが起き短縮されて終わったこともあり、KTMS GR YAISは完走扱いの4位となったのは不幸中の幸いだった。連覇を狙うチームにとって、今回の結果は新体制の初レースを飾れなかったという意味で、非常に悔しいものとなった。

 2020年、KTMSが初めてスーパー耐久に挑戦を開始したレースでも、クラッシュから決勝に出走できない悔しいレースとなった。しかしそこからチームは強さと速さを増してきた。今回のレースは、新たなコンセプトを掲げるチームが、さらに強くなるための試練ととらえたい。

KTMS 2023スーパー耐久第1戦鈴鹿 レースレポート
KTMS 2023スーパー耐久第1戦鈴鹿 レースレポート

DRIVER’S VOICE
一條 拳吾  KENGO ICHIJO

「3年前に挑戦をスタートさせ、当時は3人ともハコの経験がないなかで、金監督をはじめいろんな方から多くのことを学ぶことができました。今季はふたりの若手が加わり、僕が先輩の立場でチャンピオンという結果を残すことができたので、本当に嬉しいです。昨年の富士での火災からチームの結束が深まりましたし、最後に勝って決められたのはすごいことです。僕はKTMSを卒業することになりましたが、こうして勝利で終えられ最高の気分です。皆さんに支えられてこうしてドライバーとして成長することができました。KTMSのすべての皆さんに感謝の気持ちでいっぱいです」

荒川 麟  RIN ARAKAWA
「僕のスティントでは、ドライバー交代のタイミングでわずかにロスがあり5番手くらいにはなってしまったのですが、最終的に2番手まで戻すこともできましたし、しっかり仕事をこなすことができたと思っています。前回の岡山では決勝ペースが苦しかったので、こうして改善できたことは収穫ですね。今季は序盤戦で正直、タナボタで優勝できたこともありました。しかし今回はクルマも人も、メカニックの皆さん、エンジニアの作戦も素晴らしく、後続に大きなギャップをつけて優勝することができました。今年いちばんのレースでチャンピオンを決められすごく嬉しいですね」

奥住 慈英  JIEI OKUZUMI
「スタートでは少し順位を落としてしまいました。序盤は思ったよりライバルが速かったのですが、無線で聞いたところ、まわりは専有走行でも出ていないタイムで走っていたので、その後は自分のペースで走るように切り替えました。でもそこで焦らず走ることができたことで、ふたたび順位を上げることができたのだと思います。2スティントめもギャップを広げて平良選手に繋ぐことができたので、今回はしっかりと自分の仕事をできたと思っています。まだチャンピオンを獲った実感はあまりないのですが(笑)、こうしてチームに貢献できて嬉しく思っています」

奥本 隼士  Shunji Okumoto
初めてのレースとなりましたが、レースでは僕がドライブする前から荒川選手、一條選手からいただいたフィードバックを頭に入れて臨みました。そのとおりの印象で、走っているうちにバランスも良くなって好ペースで走ることができていたのですが、シケインの立ち上がりで急に異音があり、1コーナーでステアリングが効かなくなってしまいました。ピットに戻ろうと思いましたが……。レースウイーク始まってからいろんなことがありましたが、今回経験したことをしっかりと復習し直して、ドライバーとしてもチームに貢献できるようにしたいですね。


関連のニュース