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F1 ニュース

投稿日: 2019.08.26 18:43
更新日: 2019.12.27 19:53

【ホンダF1を語りつくす座談会(1)】今だから話せるレッドブル・ホンダ優勝の現場の舞台裏&フェルスタッペンのふてぶてしさ

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F1 | 【ホンダF1を語りつくす座談会(1)】今だから話せるレッドブル・ホンダ優勝の現場の舞台裏&フェルスタッペンのふてぶてしさ

 2019年シーズンより、ホンダF1がレッドブルとトロロッソの2チームへのパワーユニット(PU)供給を開始しました。第9戦オーストリアGPではマックス・フェルスタッペンが今シーズン初優勝を飾り、この勝利はホンダが2015年にF1へ復帰して以来4年ぶりの勝利となりました。また雨のなかで行われた第11戦ドイツGPではフェルスタッペンが2勝目を挙げ、第12戦ハンガリーGPでは、初のポールポジションを獲得しました。

 開幕から8連勝を飾ったメルセデスに歯止めをかける最有力候補であったフェラーリに代わって2勝を挙げたレッドブル・ホンダとフェルスタッペンを、現場のジャーナリストたちはどう捉えたのでしょうか。

 2018年のシーズンオフに行われた座談会に引き続き、今回もオートスポーツwebでお馴染みのF1ジャーナリストで、1987年よりF1の取材を行う柴田久仁夫氏と、16年以上にわたって毎年全レースを現場で取材している尾張正博氏というベテランおふたりの視点で、2019年シーズン前半戦を振り返りたいと思います。

※この座談会は8月上旬、ピエール・ガスリーとアレクサンダー・アルボンの交代報道直前に行われたものです。ご了承ください。

──────────

──(MC:オートスポーツweb)2019年シーズンは、開幕戦からメルセデスが8連勝を飾り、早くも『今年の選手権も決まりだな』という空気になりつつあったなか、ついにレッドブル・ホンダが初優勝を飾りましたね。あの日、優勝直後のおふたりはどのような状況だったのでしょうか。

尾張正博氏(以下、尾張):当たり前だけど、優勝の後は僕はすごく忙しくて、一睡もせずに帰りの飛行機に乗ったくらいだったね。(舞台となったレッドブル・リンクのある)ツェルトヴェグからウィーンまで移動しないといけないというものあったけれど、結局月曜日の朝6時にサーキットを出て、8時に空港近くのホテルに着いた。もちろんサーキットを出たのは僕が最後。

柴田久仁夫氏(以下、柴田):そうなの!? 僕は十分寝たけど……。

尾張:それでも夜中1時半くらいまではいましたよね? そういえば、あの日の忙しさを表す良い例だと思うエピソードがあるんだけど。ホンダでは第4期(2015年〜)の初めから日曜日の夜ご飯がカツカレーなんだけど、長谷川(祐介/前ホンダF1テクニカルディレクター)さん時代から僕たち日本人ジャーナリストもおすそ分けでもらえるようになった。それをずっといただいてきて、僕らもカツカレーの意味を記事にもしているんだけど、実は僕、オーストリアでレッドブルが勝った時にカツカレーを食べていないんだよね。

──えっ、そんな念願叶った大事な時に食べられなかったんですか? それは残念でしたね……。

尾張:そのくらい忙しかったし、忙しかっただけじゃなくて、審議があったでしょう(注:決勝レースでフェルスタッペンとシャルル・ルクレールと接触し、表彰式後に審議が行われた)。裁定が出るまで2時間くらいあったんだけど、それを待っている間に……みんなはカレーを食べていたよね(苦笑)。

 僕はレッドブルで会見が始まるのを待っていたんだけど、裁定が決まらないからクリスチャン・ホーナー(レッドブル・ホンダのチーム代表)の会見も始まらないし、いつ始まるのかもわからなかった。すべてのことが動かないし、審議が終わってから会見が始まるという感じだった。もちろん後味が悪いわけじゃないけれど、もう少しどうにかしてほしかったよね。

──たしかに、見ている側としてもスッキリしないままレースが終わった気がします。

尾張:フェルスタッペンの優勝が決まったのは田辺(豊治/ホンダF1テクニカルディレクター)さんの会見中だったからね。あの時はメディア側から「(どれくらい時間が押すのかわからないから)会見を始めませんか」とお願いして会見が始まったし、フェルスタッペンが2位だった場合のことも考えての発言だった。僕はあの雰囲気を出すために、あえてそのまま記事を書いたんだけどね。

2019年F1第9戦オーストリアGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)、ホンダF1田辺豊治テクニカルディレクター
2019年F1第9戦オーストリアGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)、ホンダF1田辺豊治テクニカルディレクター

柴田:尾張くんが熱く語るから、僕はあえてクールに語ろうか(笑)。この前も尾張くんとオーストリアGPの話をしていて『全然自分の考えと現実が違ったんだな』と思ったんだけど、僕も尾張くんもオーストリアでは表彰台に行っていなかったんだよね。表彰台がプレスルームから遠いというのもあるんだけど、僕は表彰台に行かなくてもいいかなと思っていた。

「行かなくていいよね」と尾張くんに言ったら、「いやいや、僕は行きたかったけれど、忙しかったから行けなかった」というから、随分自分とは温度差があるなって。

──『温度差』と言いますと?

柴田:みんな「ホンダが13年ぶりに優勝した」と言っていたけれど、僕としては「えぇ〜?」という感じで……。というのもふたつ理由があって、ひとつはレッドブル・ホンダが勝ったのであって、ホンダが勝ってわけではないという思いがあってね。

──もちろん、そう考えるには第2期、第3期を見ているからという理由もありますよね。

柴田:そうだね。今は(パワーユニットの)サプライヤーでしかなくて、レッドブルと組んで戦闘力が上がったから勝った影響が大きくて勝ったわけだから、というのがひとつ。もうひとつは、『日本人ドライバーじゃないからな』というのがあって、表彰台には行かなかった。でもなぜか、ハンガリーでフェルスタッペンが2位だった時は表彰台に行ったんだよね。

 ただオーストリアGPがいつもと違ったのは、レースとしてものすごく面白かったということ。ホンダがどうこうだけではなくて、ここ数年でも稀に見るおもしろいレースだったと思う。

──たしかに、あれだけスタートで出遅れて巻き返すという展開もなかなかないですよね。

柴田:あんなにおもしろいレースは年に1回あるかないかだなと思っていたら、そのあと(第10戦の)イギリス、ドイツ、ハンガリーとおもしろいレースが続いた。こんなことがあるんだなあって。オーストリアを含めたこの4レースは本当におもしろかったですね。

──先ほども話に上がりましたが、オーストリアでは決勝レースの終盤に、オーバーテイクを試みたフェルスタッペンと首位を走っていたルクレールの接触がありました。今年は第7戦カナダGPでセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)に科されたペナルティが大きな話題になり、この一件でもペナルティが出るかどうかに注目が集まりましたが、おふたりはあの接触をどう見ていましたか?

尾張:もしフェルスタッペンがペナルティを受けていたら、今後F1ではもうオーバーテイクはできないよね、と思った。僕がいつも思うのは、『イン側に主導権がある』ということ。アウト側にステアリングを切ってぶつけているというのなら話は違うけれど、イン側にいて、少しラインが膨らんでぶつかるのならいいんじゃないかな。

 2014年のベルギーGPでメルセデスのニコ・ロズベルグとルイス・ハミルトンが接触したのは、まさにそうだったでしょう。アウト側にロズベルグがいて、イン側のハミルトンはタイヤがパンクした。ロズベルグもフロントウイングを壊してしまったから、ふたりともピットインしたけれど、最終的にはロズベルグに非があることになる。アウト側のドライバーが引かないといけないから。

柴田:オーストリアの時はフェルスタッペンがイン側についていたしね。

尾張:あれでルクレールは押し出されたわけだけど、イン側を取られたのなら仕方ないのかなというのが僕の考えかな。

──そういえば、正式な審議結果が出る前に、偽物のFIAのリリースが出回りましたよね。

柴田:そう。尾張くんが忙しくしていた頃に、僕はカメラマンがレッドブルの記念撮影をしようとしていたところに行ったの。そうしたらみんなが帰り始めたからどうしたのかと聞いたら、「審議の結果が出て、フェルスタッペンの優勝は取り消されたみたいだ」と言っていた。

 そこでリリースを見せてもらったんだけど、そもそもFIAのリリースはメールで来るはずなのに、その偽物のリリースはSNSにアップされていた。それで何かおかしいなと思ったし、リリースに記載されている時間を見たら、審議の真っ最中の時間が書いてあった。その後で偽物とわかったんだけどね。

 結局誰がこのリリースを作ったのはわからない。本物そっくりにできていて、そのことを日本にいる川井(一仁/F1ジャーナリスト)さんに伝えたの。そうしたら1時間後くらいに返事が送られてきて、そのメールに添付されていたファイルを見たら、僕の名前が書かれたFIAの偽リリースが送られてきてね(笑)。要するに、FIAのフォントさえコピーできれば簡単に作れるので、誰が作ったのかはわからない。

──ということは現場の反応としても、フェルスタッペンはペナルティを受けてもおかしくないという雰囲気だったのでしょうか?

柴田:そうだね。カナダGPの件(ルイス・ハミルトンとセバスチャン・ベッテルのトップ争いの最中に、危険な方法でコースに復帰したとしてベッテルにペナルティが科された)を含めて物議があったから、あのぶつかり方だったら仕方ないかもねということで、集まったカメラマンも帰り始めた。だから、カメラマンが大勢集まっての記念撮影というのはなかったような気がする。

尾張:僕はレッドブルのモーターホーム(ホルツハウス)の2階で審議結果を待っていたな。すごく暑かった……。

柴田:それでもあの時、田辺さんは『エンジニアとしては、たとえもしペナルティを受けたとしても、あれだけ戦えたので悔いのないレースでした』と言っていたよね。

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