──シーズン前半に2勝を挙げたわけですが、この2勝はどちらもフェルスタッペンによるものでした。今のレッドブル・ホンダにとって、フェルスタッペンは欠かせない存在ですね。
柴田:オーストリアはもちろんフェルスタッペンが素晴らしかったけれど、レッドブルとホンダというパッケージ全体の勝利というところがある。でも、ドイツはフェルスタッペンじゃなければ勝てなかったと言っていいんじゃいないでしょうか。
──歴代ドライバーと比較して、おふたりから見たフェルスタッペンの強さはどういうところにありますか?
柴田:直近で比較すると、我々にとって、昨年のガスリーはすごい存在だった。それが突然レッドブルに行けと言われ、すでにフェルスタッペン体制ができているところに入って、そこでいいところを見せようとした。でもプレシースンテストでクラッシュして最初からつまづいてしまった。
そういうのがあったにしても、これほどドライバーで差がつくのかというのは、正直予想外だった。もうちょっと対抗できるのかなと思っていたけれど、あんなにコテンパンにやられるとは思っていなかった。昨年とは違う人が乗っているんじゃないかと思うくらい、ガスリーらしさがまったくないんだよね。
──改めてお聞きしたいのですが、フェルスタッペンのキャラクターを教えてください。
尾張:はっきり言えば、ふてぶてしいよね。
柴田:デビューした時からそうだったけれど(苦笑)。
尾張:昨年は第3戦中国GPでセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)に突っ込んで、第4戦アゼルバイジャンGPでは(当時のチームメイトであったダニエル・リカルドと)同士討ち、第6戦モナコGPではフリー走行3回目でクラッシュというのがあって、メディアに叩かれたでしょう。
その後第7戦カナダGPの木曜会見で、イギリスの『Dairy Mail』の有名な記者がフェルスタッペンを批判したんだけど、それに対してフェルスタッペンは「ヘッドロックしてやろうか?」と返したの! その記者が「なんでドライビングスタイルを改めないのか」と言えば、フェルスタッペンは「スタイルは変えないし、お前に言われる筋合いはない」と言い続けていた。普通は大御所のジャーナリストからそう言われたら、ドライバーは折れるけれど、フェルスタッペンはまったく折れなかったし、しかもそのあと彼はドライバーとして変わったよね。
座談会(2)に続く
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柴田久仁夫
静岡県出身。TVディレクターとして数々のテレビ番組を手がけた後、1987年よりF1ライターに転身。現在も各国のグランプリを飛びまわり、『autosport』をはじめ様々な媒体に寄稿している。趣味はトレイルランニングとワイン。
尾張正博
宮城県出身。1993年よりフリーランスのジャーナリストとしてF1の取材を開始。一度は現場からは離れたが、2002年から再びフリーランスの立場でF1を取材を行い、現在に至るまで毎年全レースを現地で取材している。