1980年代後半から1990年代初めにかけて、ホンダとアイルトン・セナはモナコGPで多くの栄冠を勝ち取ってきた。セナの死後、ミハエル・シューマッハーやルイス・ハミルトンが次々に記録を塗り替えていったなか、通算6勝というモナコGP最多勝記録は、今もセナが保持し続けている数少ないものだ。
そのほとんどの勝利をホンダF1第2期の現場エンジニアとして体験してきた田辺豊治テクニカルディレクターは、モナコGPを「全グランプリのなかでもひとつ特別なレース」と言う。なかでも1992年のナイジェル・マンセルとの死闘をベストレースに挙げていた。
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──昨年のモナコGPは新型コロナウイルスの影響で中止され、2年ぶりの開催です。
田辺豊治テクニカルディレクター(以下、田辺TD):モナコの最大の特徴はコース幅が狭く、タイトなコーナーが連続することです。抜きにくいコースということで、予選重視の週末になりますね。パワーユニット側では、ドライバビリティが大きな鍵を握ります。ドライバーの要求にきちんと応えられるか、ですね。
──ここまでメルセデスとレッドブル・ホンダの戦いは非常に拮抗しています。
田辺TD:なので、いっそう予選の重要度が増しますね。
──2年ぶりの開催ということで、事前データとしては2年前のものを参考にするしかないわけですが、その点でいつもより難しいところはありますか?
田辺TD:今季はパワーユニットが大きく進化したので、そこを加味した準備をしています。それと、今季初めての超低速コースですので、そこに向けての最適化の方が重要かもしれません。
──前戦のスペインGPでは、角田裕毅選手にエンジンシャットダウンと燃圧低下のトラブルが出ましたが、その後の対処はいかがでしょうか?
田辺TD:フリー走行中のシャットダウンは、そろそろ答えが出そうです。一方のレース中の燃圧低下は、パワーユニット側に明確なトラブルが発見されました。なので、ほかの3台にも再発防止の対策を取りました。
──パワーユニットを交換するほどのトラブルだったのですか?
田辺TD:そういう問題ではありません。
──ポンプ類の不具合など、そういうことではない?
田辺TD:違います。根本に関わるものではありません。