予選システム以外でも、2016年に新しく採り入れられたものがある。それは新しいコンパウンドとアロケーション(分配)システムである。

2016年、新たに導入された紫のウルトラソフトタイヤ
2016年、新たに導入された紫のウルトラソフトタイヤ

 ピレリが16年に投入した新しいコンパウンドはウルトラソフトで、これは全コンパウンドの中でもっとも軟らかい。そのため、モナコ、シンガポールの市街地コースのほかカナダ、オーストリア、アブダビに投入された。

 アロケーションはこれまで各グランプリにピレリが指定した2種類のコンパウンドが持ち込まれ、レースでは2種類のコンパウンドを最低でも1回は履くこと義務付けられていた。それが16年はピレリは3種類のコンパウンドを指定。

 さらにその3種類のタイヤからピレリが“強制コンパウンド”を指定。ドライバーはこの強制コンパウンドを含む2種類のタイヤをレースで最低でも1回ずつ履かなければならないというルールに変更された。

 このルール変更は大きな混乱もなく、シーズンを通して採用され続けた。しかし、この変更によって、予選やレースがエキサイティングになったかというと疑問は残る。なぜなら、予選でメルセデスAMG以外のドライバーがポールポジションを獲得したのは、モナコGPのダニエル・リカルドただひとりだからだ。

 レースでメルセデスAMG以外が制したのも、スペインGPとマレーシアGPのレッドブル勢だけ。しかも、この2勝はいずれもメルセデスAMGが同士討ちしたり、スタート直後に最後尾まで下がったり、エンジンブローでリタイアしたという結果だった。

 レースをエキサイティングにしたいというFIAの気持ちは理解できる。しかし、一流企業の社員も顔負けの才能を持つF1の優秀なエンジニアたちは、どんなルール変更にも対応する能力があるということが今回の一件でよくわかった。

 今後、FIAには小手先のルール変更ではなく、チームのエンジニアにも負けない優秀なスタッフを取り入れ、レースがより盛り上がるような画期的なアイディアを発案してもらいたい。

 次回掲載予定の【F1黒歴史】では、厳格にマニュアル化された無線規制や、トラックリミット規制など、ドライバーを悩ませたルールについてお届けする。

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