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F1 ニュース

投稿日: 2022.09.08 19:18
更新日: 2022.09.26 18:16

【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第11回前編】限られたデータ量で勝負。適切なタイヤ戦略で戦いきったケビン

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F1 | 【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第11回前編】限られたデータ量で勝負。適切なタイヤ戦略で戦いきったケビン

 2022年シーズンで7年目を迎えたハースF1チームと小松礼雄エンジニアリングディレクター。シーズン後半戦の初戦は恒例のベルギーGPで、このレースを皮切りにトリプルヘッダーを迎える。コース改修の行われたスパ・フランコルシャンでは金曜に雨が降ったこともあり、十分なデータがないまま望んだレースでは最適なタイヤ選択こそ行えたものの、ハードタイヤのグリップ不足に悩まされた。

 コラム第11回は前編・後編の2本立てでお届け。前編となる今回は、ベルギーGPの現場の事情を小松エンジニアが振り返ります。

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2022年F1第14戦ベルギーGP
#47 ミック・シューマッハー 予選15番手/決勝17位
#20 ケビン・マグヌッセン 予選18番手/決勝16位

 シーズン後半戦は3連戦の初戦、ベルギーGPからスタートです。スパ・フランコルシャンでは冬の間にコースの改修が行われました。以前に比べてかなりグラベルが多く使われていましたが、個人的にはなるべく「自然な」トラックリミットがある方がいいと思っている(もしコースオフすれば自然とタイムが遅くなる)ので、グラベルが増えたことは良いと思っています。実際にレースでも今までは多くのドライバーが1周目のターン1で縁石の外に大きく膨らんでいましたが、今回はグラベルがあるのでみんなきちんとコース内にとどまって走っていました。こちらの方が本来の姿だと思います。

 コースオフしてタイムがよくなるようなサーキット設計で、トラックリミットを常に監視して、違反がある度に該当ラップのラップタイム自体を抹消するというのはどうしても正しい選択だとは思えません。オーストリアGP予選でのセルジオ・ペレス(レッドブル)の件などはレースコントロールもちゃんと対応できておらず、予選の結果に大きな影響が出ました。これではファンにとってもわかりにくいですし、僕はなるべくシンプルにした方がいいと思います。ウチのドライバーふたりも基本的に変更点を歓迎しているようでした。コース上のところどころ再舗装されていた箇所もいいコンディションで、ウエットでも問題ありませんでした。

2022年F1第14戦ベルギーGP スパ・フランコルシャン
2022年F1第14戦ベルギーGP スパ・フランコルシャン

 今回はミックが4機目のパワーユニット(PU)を投入し、それに付随してターボなども新しく入れたため、グリッド降格ペナルティを受けることが決まっていました。ですので予選では、実際にミックが戦っている唯一の相手は周冠宇(アルファロメオ)でした。Q1は新タイヤを2セット使ってまずはQ2進出を目指しました。FP3でクルマの問題がありほとんど走れず厳しいかなと思っていたのですが、2回目のランにシケインでミスをしたもののなんとか15番手のタイムを出してQ2に進出してくれました。これは評価していいと思います。

 周もQ2に進出していたので、Q2ではまず中古タイヤで走った後に新タイヤでアタックをしました。残念ながらターン1進入でフロントをロックアップさせ、これでゲームオーバーとなりました。

 一方ケビンはFP3でいい手応えがあったので、Q2には問題なく進めると踏んでいました。実際、1ラン目は大きな問題もなく、ほぼ想定されたタイムを出しました。しかし残念ながら2ラン目でフロントタイヤの感触がよくなくて、ターン5や8などでタイムをロスし、最後はシケインでアンダーステアを出してさらにタイムロス。18番手という予想外の結果になってしまいました。

ミック・シューマッハー(ハース)
2022年F1第14戦ベルギーGP ミック・シューマッハー(ハース)

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