──まず実際に映画をご覧になってみて、いかがでしたか。

山内氏:素晴らしい映画になって良かったです。いい監督やいい脚本家、いいカメラマンにいいキャストと全てが揃わないと、いい映画はできないと思います。今回は、幸運に恵まれてそれが揃ったと思います。当時の雰囲気や景色、その場に居たいろいろな人たちの気持ちを思い出しました。

──「GTアカデミー」の成り立ちについて、教えていただけますでしょうか

山内氏:私は2004年に、ニュルブルクリンク24時間レースを観に行きませんかと日産から招待を受けました。その際、発売されたばかりのフェアレディZで北コースを走る機会がありました。その時、日産のマーケティングダイレクターのダレン・コックス氏に会ったんです。彼から「『グランツーリスモ』のドライバーは、レーシングドライバーになれるだろうか」と聞かれたのを覚えています。そこで私は「絶対になれる、全く問題ないよ」と答えました。そこから、「GTアカデミー」のプロジェクトは始まっていきました。

──当時山内さんは「GTアカデミー」について、どういったことを感じていらっしゃいましたか

山内氏:「GTアカデミー」は、親心として常に心配していました。やっぱりレースというものは危険が付きまとうものだし、次から次へと勝負に勝ち続けなければいけない。なので、何かあったらサポートしようとただただ心配していました。

 また、レースキャンプに集まったドライバーたちは、みんなそれぞれが素敵な人物なんです。それぞれの国や地域のトップなわけですからね。ただ、そのなかからひとりを選ばなければいけないという過程も、すごくヒリヒリしていました。本当にみんな才能があり魅力あふれる人達だったから…。だから、楽しんではいなかったなぁ(笑)。選ぶ事自体も苦しい面があるし、選んだからといってその次のキャリアやレースでトラブルが起こったらどうしようとか、いろんな心配がありましたね。

GTアカデミー発足当時の事を振り返る山内一典氏
GTアカデミー発足当時の事を振り返る山内一典氏

──当時のヤン選手については、どう感じていましたか。

山内氏:初めて会った時はあどけない若者でしたけれども、落ち着いていてオーラを持っていました。なので、特別な人物だなということは直感的にわかりましたね。走っているところとしては、彼のドライビングスタイルは最初からアグレッシブでした。

 あと、うち(ポリフォニー・デジタル)の東京スタジオにヤンが遊びに来ていた時、ちょうど居合わせた中谷明彦さんが「なんか、彼大物になるね。オーラがあるよ」とおっしゃっていました。それから、実際に彼がデビューしてみるといきなり速かった。そういったところを見ていて、ホッとしたのを覚えていますよ。

──「GTアカデミー」から得た新たな気づきは何かありましたか。

山内氏:この取り組みを通じて私は、リアルモータースポーツの世界を知ることができました。それまではあくまで観客の目線でレースを観ていたけれども、「GTアカデミー」は思いっきりレースをする側の立場でしたからね。

また、世界中のトップである素晴らしい人物たちが出会う場として、「GTアカデミー」は素晴らしいプロジェクトだったとも感じました。僕らは今、「グランツーリスモ」の公式世界大会である「グランツーリスモ ワールドシリーズ(GTWS)」という形で第二の時代をいわば作っています。これはeモータースポーツの大会なので直接リアルカーレースと直結はしていませんが、それでも「GTWS」でトップに上がってくる選手のなかには、eモータースポーツと並行して自力でスポンサーを見つけリアルカーレースに参戦を続ける選手も出現しています。何よりそれぞれ違った魅力を持った人物たちが国境や地域を超えて友達になっていく、その景色はやっぱり素晴らしいですから、これからも続けていけたらと思います。

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 この映画は、ヤンがプロレーサーになるという夢を追う姿はもちろん、これまであまり知られてこなかった来日以前の活躍にフォーカスしている作品となっている。また、「グランツーリスモ」シリーズにちなんだエフェクトや、大迫力の音響、ドローンを使用したダイナミックな走行シーンなど、バトルを繰り広げるレーシングカーの映像も見どころだ。

 モータースポーツ好きはもちろん、あまりレースを知らないという方でも気軽に自動車レースやレーシングカーの魅力を楽しむ事ができる映画『グランツーリスモ』(配給:ソニー・ピクチャーズ)は、いよいよ明日9月15日(金)に全国の映画館で公開だ。ぜひ、お近くの映画館に足を運んで、映画ならではの音響と映像、そしてレーサーになるために奮闘するヤンの魅力を楽しんでほしい。

映画『グランツーリスモ』9月15日から全国の映画館で公開開始
映画『グランツーリスモ』9月15日から全国の映画館で公開開始

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