往年のレーシングドライバーにして、1990年代はチームオーナーとしてスポーツカーレースやF1で活躍していたトム・ウォーキンショーがガンのため亡くなった。64歳だった。
ウォーキンショーはシングルシーターでレーシングドライバーとしてのキャリアを始め、1969年にスコティッシュ・フォーミュラ・フォードのタイトルを獲得。しかし、ウォーキンショーの名が轟いたのはツーリングカーレースに参戦してからで、チームオーナー兼ドライバーとして自身のチーム『トム・ウォーキンショー・レーシング(TWR)』を主宰。1984年にはジャガーでヨーロッパのマニュファクチャラータイトルを獲得した。
その後、ジャガーとともにグループC規定によるスポーツカーレースに挑戦したTWRは、1988年のXJR-9 LM、1990年のXJR-12でル・マン24時間を制覇。87年、88年、さらに91年とスポーツカー世界選手権を制し、チームオーナーとしてのウォーキンショーはモータースポーツ界でも確固たる地位を確保。その後もポルシェとの仕事や、90年代後半にはニッサンともスポーツカーレースでともに仕事をした。
ウォーキンショーはその後、ベネトンでエンジニアリングディレクターとしてF1にも参画。当時TWRに所属し、後にフェラーリで黄金期を築くロス・ブラウンをF1に引き入れたのもウォーキンショーで、ミハエル・シューマッハーのタイトル獲得に貢献した後はリジェ、さらにアロウズの経営を握り、F1に本格参戦したブリヂストンタイヤの初のチームとして、97年のハンガリーGPなど印象的な活躍をみせた。
2002年にアロウズがF1から撤退してからもウォーキンショーはモータースポーツ界に関わり続け、オーストラリアV8スーパーカーに参戦などを続けていた。しかし、今年のF1イギリスGPを最後にF1のパドックには姿をみせていなかった。
日本のモータースポーツ界が最も華やかだった頃、ヨーロッパの最強チームのひとつでありファンにとっても『TWR』のチーム名は馴染みが深かった。心から哀悼の意を表したい。