2015年5月23日と24日に、鈴鹿サーキットで「SUZUKA Sound of ENGINE 2015」が開催される。このイベントには国内外から数多くの名車が集結する。今回ご紹介するのは、ニッサンが生んだモンスターマシン、R91CPである。

 1992年の2月1日〜2日にかけて行われた、アメリカ最大規模の伝統ある耐久レース、デイトナ24時間レース。このレースで勝利を収めたのは、日本からやってきた“純・国産車”だった。

 1980年代から90年代にかけて、耐久レースの選手権もF1と並んで盛んに行われていた。その主役となったのは、“グループCカー”と呼ばれるマシンたち。ハコ車ではあるものの、巨大なウイングとディフューザーにより強大なダウンフォースを発生し、F1以上のパワーを発揮するエンジンを搭載。モンスターと呼ぶに相応しいレーシングカーだった。

 同時のグループCレースには、トヨタやニッサン、マツダといった日本車はもちろん、ジャガー、メルセデス、ポルシェという蒼々たるメーカーが顔をそろえ、F1とはまた違った形で盛り上がりを見せていた。そして、いずれのメーカーも、最大目標は“ル・マン24時間制覇”だった。

 1990年のル・マン24時間耐久レース。予選でポールポジションを獲得したのは、ニッサンR90CK。ドライバーのマーク・ブランデルは、2番手につけたポルシェ962Cのオスカー・ララウリになんと6秒もの差をつける圧倒的なタイムを記録。また、長谷見昌弘のニッサンR90CPが3番手、ゲイリー・ブラバムのニッサンR90CKが4番手、ケネス・アチソンのニッサンR90CKが5番手と、ニッサン勢が上位を占める。

 それまでル・マン24時間で日本車が勝利したことはなく、ついにその時が訪れるかと誰もが期待した。しかし、レースが終わってみれば、長谷見、星野一義、鈴木利男の3人が乗るR90CPの5位が最上位。ニッサン勢はことごとくアクシデントやトラブルに見舞われ、ジャガーのワン・ツーフィニッシュを許してしまう。日本車によるル・マン制覇は、またしてもお預けになってしまった。

 このR90CPは非常に速く、日本に帰国してからは連戦連勝。長谷見とアンデルス・オロフソン組が、同年のJSPCチャンピオンに輝くこととなる。そしてR90CPの後継として開発されたのが、R91CPだ。R90CPのモノコックはローラ製だったが、このR91CPは全てをニッサンが手がけた。まさに“純・国産車”と言えるマシンである。

 エンジンは、予選用の高過給では最高出力1200馬力を誇る、VRH35Z(ツインターボV8エンジン、3496cc)を搭載。レース中の最高出力も、900馬力に達していた。しかしこの年は、出力を850馬力に制限。これは、ドライバビリティの向上に重きを置いたためである。結果、コーナー立ち上がりでのスロットルオンを早めることに繋がり、最高速が伸びるということに繋がった。なんと富士スピードウェイの直線速度は、390km/hにも達したという。長谷見は今も「いやぁ、怖かったですよ」と当時を振り返る。

 ル・マン制覇を目指して生み出されたR91CPだが、レギュレーションの変更により、出走を断念せざるを得ない事態に陥ってしまう。ニッサン陣営は、ターボ車などが入るカテゴリー2というクラスに分類されていた。このマシンの最低重量は950kg。自然吸気3.5ℓエンジン車が分類されるカテゴリー1は750kgであり、200kgも重かったものの、「これならなんとか戦える」とニッサン陣営も考えていた。しかし、最終的にカテゴリー2はさらに50kg増やされた1トンを最低重量と決められてしまう。50kgとはいえ、ここまでの車重となってしまうと、安全性の問題も出てくる。ニッサンは抗議するも受け入れられず、結果91年のル・マンおよびSWCへの参戦を休止することになる。奇しくもこの年のル・マンで、カテゴリー2のマツダ787Bが日本車として初のル・マン制覇を成し遂げたというのも、皮肉な話だ。

 完成したR91CPは全日本SP耐久選手権に参戦。7戦中3勝を収め、その強さをいかんなく発揮した。そして1992年の2月に行われた、デイトナ24時間に挑戦することになる。

 耐久仕様として最高出力を680馬力に抑えたR91CPは、予選こそ3番手だったものの、決勝では1周目からトップに立ち、24時間を走り切った時には2位のジャガーに9周もの差をつけて先頭でチェッカーを受ける。バンクのあるコース、初めてのグッドイヤータイヤと不安要素は多かったが、それでもの圧勝。前年のル・マン24時間を制したマツダ787Bに次いで、日本車として2台目の24時間レースウイナーとなった。

 今回サウンド・オブ・エンジンに登場するニッサンR91CPは、ニスモが動態保存しているマシン。毎年行われるニスモフェスティバルなどで、デモランを実施している。20年以上前のマシンにも関わらず、長谷見いわく今も300km/h超で走ることができるという。「1年に1回、300km/hを味わえるのは良いよね」と長谷見。

 そのパフォーマンスは、鈴鹿でどこまで発揮されるのか? F1以上とも言えるモンスターマシンの走りを、ぜひ生でご覧いただきたい。

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